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液体日記 12月10日 コンビニ家族

iPadを充電し忘れて、目覚めた朝というか昼、慌てて充電するも充電されない。
電気止まってるかも…と寝ぼけながら思い、確認するのはWi-Fiのランプ。点滅せず。コンビニにすぐに支払いに行くと外は芯から冷える寒さだった。
帽子を被っているし、ユニクロのヒートテック上下のこの身体でも冷えわたる寒さ。この間、お店に来た男の子が着ていたふわふわした素材のパジャマみたいな白の上下でジェラートピケかな?と思って触らせてもらったんだけどGUで2500円くらいと言うから欲しくなって次の日見に行くと隣にいた若い男の子たちがその服を見て「これKpopの人が着てそうだね〜」と言ってたのを聞いたらなんか恥ずかしくなって買うのをやめた。別に関係ないのに、アホくさい。ふわふわしたかったな〜。やっぱり買おう。ここ最近寒くても、暖房をつけずにいたけど電気が回復したら今日は暖房をつけようと思う。

いつも行く一番近くのコンビニはランチタイムとぶつかってすごい混雑していた。
真向かいにある違うコンビニはそこまで混んでいなくて、そこで支払いを済ませた。毎日のように行く近くのコンビニは、店員さんと顔をあわせるのがなんか恥ずかしくなっている。なんなんだろう、この感じ、ただのお客なのに。
よく考えたら誰よりも毎日会う人たちかも知れない。あれ、家族だったっけ?随分他人行儀な家族だった。

あのコンビニのオーナーはちょっと年上なのかな。奥さんみたいな彼女がそのコンビニにいる。結婚してるのかはわからない。彼女の仕事ができる感は半端なくて、言葉を何でも略す。彼は彼女にだけ信頼をしているように見えた。
二人が仕事を終わって街でブラブラしてるのをよく見る。
制服を脱いだ彼らは、まるで違う人間に見えた。気まずくなって見つからないようにいつも慌てて隠れてしまう。別に堂々としていればいいのに、なんで逃げちゃうんだろう。一度、彼がばったり私と街で会ったとき「あっ!」という顔をした時があった。そのとき私は誰だったかすぐに思い出せなくて会釈だけしたんだけど、彼は気まずそうな顔をしていた。何を買ったかいつも見られてて私の生活が丸見えな感じなのも恥ずかしい気がしてる。
土曜日の夜のバイトの人が実はゲイなんだよね。アルバイトの人とまさか交流があるなんて知ったら驚くだろう。コンビニの店員さんは何故か人間的な様子を出さないことに気がついたのはその子がすごく人間的な感じで私に接してきたからだった。
私が朝方二丁目から帰ってきてそのコンビニに寄ると、いつもその彼はいてなぜか私によく話しかけてきた。店員さんに話しかけられる経験があまりなかったから、始めは不思議な感じがした。こんな時間にお疲れ様ですーとか言うから、そっちの方が仕事中でお疲れ様じゃん〜とか、そんな会話をするようになっていった。
笑顔が爽やかで、感じのいい子だった。たまに何も話しかけてこない時もあったけど、他のアルバイトの子と笑いあったりふざけてるのを見て、そういえばこういう光景も初めて見るなぁと思った。髪の毛を伸ばし始めた時も「その髪型似合いますね」とか言ってくれたりして。
ある時、いつものようにレジに行くと「あなたはゲイですか?」っていきなり彼に聞かれた。「うん、そうだけど、あなたもですか?」と聞き返したんだけどあまりの自分の回答の切り返しの速さに慄いたね。オリンピックで見た中国の卓球選手の様だった。すると恥ずかしそうに「はい、そうです」と彼は答えた。自分が先に聞いてるくせに照れている。
その可愛さに気持ちを持ってかれちゃったからそのあとどう答えるか全然思いつかず、自分も俯いちゃったりしてた。何だよこの初恋的な感じは……と自分突っ込みも勿論忘れなかったけど「内緒!」と言いながら口に一本指をさしていて、名札見ると中国人のような名前だったから日本に来て間もないのかも知れない。日本語の勉強をしているみたいで言葉もちょっと辿々しく、とにかく可愛く思っちゃったよね。オーナーに言うと思ったのかな。「勿論!」と答えて、その日は帰った。

1週間くらい経ってその日はすごく酔っ払ってたんだけどなんとなく彼に会いたいと思ってまたコンビニに行くと、彼がカップラーメンのコーナーで商品を補充していた。何を思ったのか、私はいきなり彼に近づいて、「連絡先教えて」と詰め寄ってしまった。ほんと、アホだよね。なんかつい昂ぶっちゃって。
驚いた彼はダメと答えてそのままレジの方に行ってしまった。
そりゃ彼もいきなり詰め寄られたらビックリするわ。
やらかした感満載のまま適当なものをレジに持っていき、彼は何事もなかったようにレジを打った。酔っ払っている私は、その場で落ち込まないように夢のように家に帰り、その日のことは考えないことにするように努めた。結構無理だったけど。

それから土曜日にそのコンビニに行きづらくなって、何ヶ月か経ってしまっていた。別に恋に落ちた感じではなかったんだけど、あまりの自分のがっつきに自己嫌悪だったから。日曜日の夜中、ふとコンビニに行きたくなって寄るといつもいないはずの彼がいた。お酒も入っていなかったし結構動揺したんだけど、逃げるのも変だしそのまま冷静さを装ってレジに行くと彼は私を見て「今仕事終わったの?お疲れ様」とこの間のことは何もなかったかのように笑顔で言ってくれた。私はちょっと照れくさくなって「はい」とだけ答えてコンビニを出た。

外はやっぱり寒くて、上着に着込んでいたダウンジャケットでもまだ寒さを感じた。あの子は私よりよっぽど大人な対応だった。もう話しかけてこないのかと思ってたからちょっと嬉しかった。今度会うときは普通に話してみよう。友達になったりするのもいいかもしれない。ウキウキした気分になり颯爽と家路に向かいながら風が入らないように首元までしっかり着込もうとふとジャケットを見ると裏表を逆に着ていたのだった……。

また朝というか昼が来て、私はそのコンビニにいた。
いつもよく見るスタッフが忙しなく働いていた。ランチタイムとぶつかってすごい混雑だ。毎日のように行くコンビニは、店員さんと顔をあわせるのがなんか恥ずかしい、なんなんだろう、この感じ。いつも会う人は自然と繋がりを感じてしまうのかも知れない。よく考えたら誰よりも毎日会う人だし、今度は笑顔で挨拶してみようと思った。


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