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ドラマ「東京怪奇酒」を襲った怪奇現象と、浮かび上がる”死生観"/杉野遥亮・チャンス大城・清野とおる

怪奇現象が目撃された場所に赴き、現場の空気を肴に酒をのむ……。そんな異色の怪奇エッセイコミック『東京怪奇酒』が実写化され、2021年2月よりドラマ放映される。放送に先だって、本人役としてドラマの主演をつとめる杉野遥亮氏、おなじく本人役でのゲスト出演となるお笑い芸人・チャンス大城氏、そして原作者の漫画家・清野とおる氏による怪談ならぬ会談がおこなわれた。

構成=高野勝久
取材協力=テレビ東京 #東京怪奇酒

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主演の杉野遥亮(中央)、メイン出演者のチャンス大城(左)、原作者の清野とおる(右)。©「東京怪奇酒」製作委員会

「絶対にマネしないで」

 緊急事態宣言下という情勢に鑑み、会談は「リモート合同取材」というニューノーマルな方法により開催。怪談と新技術の融合に感動しつつ弊誌もこの取材に参加し、各氏のドラマへの意気込みと、「怪奇」なものに対する心情に迫る貴重な機会を得た。

 実は杉野氏は当初、『東京怪奇酒』のオファーを躊躇したそうだ。最終的にはもう一本のドラマ『直ちゃんは小学三年生』主演とのセットであることから引き受けたというが、撮影中にはゲスト出演者に「心霊スポット巡りなんていかがなものか」と苦言を呈すこともあったという。
 怪談の現場で酒を飲む「怪奇酒」というコンセプトについても「絶対にマネしないでください!」と強調する杉野氏。まさか生粋のアンチオカルト派……と思いきや、対談が進むうちにその発言に込められた真の意味が明らかになっていった。
 主演、ゲスト、原作者という異なる3つの視点から語られた『怪奇酒』の魅力とは?

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ドラマ「東京怪奇酒」より。心霊スポットで酒を飲む、というノンフィクション漫画を原作としたドラマである。©「東京怪奇酒」製作委員会

怪奇+酒という着想

 対談はまず、司会者のこんな質問で口火がきられた。

——はじめに、清野さんはなぜ原作の『東京怪奇酒』を描こうとしたのですか?

清野 これまでの作品では居酒屋やスナックの話を多く描いていましたが、飽きたのとは違うんですが、年齢のせいもあるのかそういう場所になかなか刺激を感じられなくなってしまった。また人との関わりに疲れてしまったというのがあって……。幽霊相手なら気をつかわなくてもいいし、昔から怪奇的なものは好きだったので、ならばというところで、それほど深い意味はないんです。
実写化は一切想像したこともありませんでしたが、実際のところ怪奇スポット以上にパワースポットにも行っていたので、こんな豪華メンバーでのドラマ化が実現して、図らずもそっち方面の力を証明しちゃったかなとも思います。
パワスポの漫画はもう多くあるんですが、怪奇スポットを肴に飲酒行為は誰もやっていなかった。まあ別にやる必要もないんですけど、作品づくりに限らず、あえて人がやらないことをすることで脳をびっくりさせて新たな視野を広げるという意図もあります。つまり『怪奇酒』は脳トレの一種です(笑)。おかげで普通だと思いつかないようなアイディアを得られたんじゃないかなとは思いますね。
杉野 脳トレですか、なるほど。でも、同じびっくりさせるならジェットコースターじゃだめだったんですか?(笑)。
チャンス 『怪奇酒』は壮大ですね。飲みとお化けを見ることをぶつけるという、天才的な発想だなと。

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実写化を想像もしていなかったーー清野とおる ©「東京怪奇酒」製作委員会

——ゲスト出演される「怪談オールスターズ」いかがでしたか? ポスタービジュアル撮影ではメンバーが一堂に会されましたが。

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杉野 すごいメンバーでしたね。最初現場に入ったときは「ここ清々しいスタジオだな」と思ったのに、オールスターズの皆さんがいらっしゃって……出るときには時空が歪んでるんじゃないかと。なんなのこれって。
清野 なかなか集まらないメンバーですもんね。僕は初対面の方も仕事でご一緒したことのある方もいましたが、「ムー」の三上編集長は感動でした。もう小学校の頃から読み漁ってましたから。でも当初サングラスをされていなかったため気付かず、声を聞いて「三上編集長だ!」と気づいた次第です(笑)
チャンス 僕はみなさんほぼ初対面でした。大島てるさんのサイトには引越しのたびにお世話になってましたが。サイトをみていながらも「霊穴アパート」に住んでしまったわけですが……。

チャンス大城の「霊穴アパート」

「霊穴アパート」とは、作中でもとりあげられている、霊が出入りする「霊穴」の真下に建てられていたアパートのこと。チャンス氏は都内某所のこの物件に数年間実際に暮らしていたのである。また対談のさなか、霊を見ることも多いというチャンス氏からド級の体験談が飛び出す一幕もあった。

チャンス 高校生の頃に悪魔をみたことがあるんですよ。学校にお母さんが霊媒師をやっているという同級生がいたんですが、そのお母さんは霊を自分に取り込んで帰ってきて、家で供養するというタイプの方で。だから家にいろんな霊がうわーっといるんだ、と。もうポルターガイストがすごいんです。
で、その方の家に遊びにいったとき、冬なのに窓が開いていて、寒いから閉めようとしたらだいだい色のものがすーっと通っていくんですよ。えっ?と思ったら同級生が「お前にも見えるんやな、あれは妖精や」って。
妖精といってもかわいいもんじゃなくて、人間のいい気を吸いに来るんですって。
それからまた別の日にその家でちょっと留守番することになったんですが、ふと冷蔵庫の上に気配を感じてパッとみたら、えらいのがいるんです。全身緑色でツノが生えて、先の尖った鉄棒を持ってものすごい形相であぐらをかいている。
「おまえ……誰やねん?」と聞くと、「……ピーターや」って。
ご当地悪魔のピーターだったんですよ。
杉野 ……ね、現場でも、こんな風にチャンスさんが話してくださったおかげでムードが明るく楽しくなりました。

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悪魔のピーターと会った!--チャンス大城 ©「東京怪奇酒」製作委員会

ドラマを通じて浮かび上がる死生観

合同取材とあわせて、ムー編集部からもいくつか個別に質問をする機会を得た。

——ムー編集長、三上の演技の仕上がりはどうだったでしょう?

杉野 三上編集長はあまりセリフのない……うなずくというお芝居だったので、威厳があって「闇の帝王」みたいでした。役柄も「謎の男」ですし。

——ドラマと関連して、みなさんの「死生観」を教えていただけますか?これまでの人生でいちばん「死を身近に感じた瞬間」はどんな時だったでしょうか。

チャンス 若い頃、拳銃をつきつけられたことがあるんですよ。大阪のちょっとガラの悪い場所で、肉体的な死が迫ったことが。まあ……そんなことでそのあと、普通のことがこんなに幸せなんやなって思えました。
清野 僕はけっこう周りで人が亡くなっているんですね。年相応の方もいますが、小中学校の頃に仲のよかった友達ふたりが、ひとりは病死、ひとりは自死で、もうこの世にいません。人ってあっけなく死んでしまうものなんだなという覚悟があるので、そういう部分では強くなりましたね。
杉野 死生観については、死=お役目の終わりなのかなと。死という事実は覆せないし、そうなるようになっていたんだなと思うんです。死をそこまで悲しみすぎるのも違うのかなと。もちろん生きていれば情だとかがありますが、死体をみて「ゲッ」というのも違うだろうと。「お疲れさまでした」と思うタイプです。
もちろん死ぬのは怖いし、まだまだいろんな人たちとやりたいことはたくさんありますが、死ぬことになったら、それはその時が来たのかなと。
チャンス そう、人生って宿題なのかなと思いますよね。亡くなると誰でも悲しみますが、本当は「卒業」なんじゃないか。天に昇ったんだなと。まだ生きているということは、宿題が残っているということ。

——最近気になっている怪奇スポットや、開運法などあれば教えてください。

チャンス いま禁酒しています。霊媒師に絶対に酒を飲むなと言われたんです。飲んだときに操られるんだと。その助言のあとに本当に酒でしくじったことがあって、断酒して3年になりました。
あとゴミ拾いですね。変なことをいうようですが、ゴミ拾いをしていると空から見られている感じがするんです。確実に何かに見られている、間違いじゃないという感覚です。だから「ゴミ拾いするので、見ていてもらえますか?」とお願いする。見て仕事増やしてもらえますか?ってお願いしたら、実際に仕事が増えるんです。
杉野 見られている感覚わかります! 僕は小さい頃、願うと叶うというか、クラス替えで望んだ通りになるとか、自分が思い描いた通りになることがすごく多かった。なぜだろうと思っていたんですが、欲として念じるのではなく、こうなったらいいなと「想う」。「そうなることを知っている」と表現したほうが近いかもしれません。そうすると叶うってことがありました。その逆によくないことをしたらバチがあたるぞっていう感覚。いいことしたら1ポイント、みたいな。
チャンス そう、なにかよくないことをしてしまったら、タバコの吸い殻を拾って相殺するんですよ。テレビの収録や大きな仕事の前には100本くらい拾いにいきますね。それで収録でホームランとはいわないけどヒットくらい打たせてください、とお願いする。
杉野 そういう感覚ですね。そのあたりの、見えない世界を信じる人と信じない人の価値観の違いをどう擦り合わせていくのかという部分は、このドラマでも難しいところだと感じたのですが、どうでしたか?
清野 僕自身はそういう世界を90%くらい信じていてるから、それを100%に確信したくてやっているという感じです。一度チャンスさんのようなレベルの体験をしてみたい、見てみたい。
チャンス それこそお酒ですけど、霊媒師に言われたことですがお酒は「自分を下げる」から、飲んだときには霊的なものが入り込みやすいそうですよ。
清野 諸説あるんですが、逆にお酒は神様に捧げる神聖なものでもあるから、心霊スポットで飲むという『怪奇酒』の行為自体が除霊になっているんじゃないかといわれたこともあります。
杉野 あと、僕はドラマ撮影の初日に量販店で赤いパンツを大量購入して、撮影中はずっとその赤パンツ着用で臨みました。赤い色は魔除けになるということで。ドラマがきっかけで塩風呂に入ったりもしましたね。

関連のラジオ番組に怪音が……のお約束

清野 怪奇といえば、先日杉野さんのラジオ番組で収録したんですが(*この収録が『東京怪奇酒』のドラマ作中作にもなっているという構成)、その音源に変な声が入りこんでるという書き込みがSNSにいくつか上がっていたんです。僕も聞きなおしてみたんですが、確かにはっきり叫び声と、赤ちゃんの声のような音が計3カ所確認できました。ひょっとしたらドラマの演出なんじゃないかと思って監督に確認をしたんですが、そんなことはしていないと。
ホラー系の映画やドラマでそういう「奇妙な音が……」みたいな話がよくあるじゃないですか。今までその手の話は全部疑っていたんですが、いざ自分の関わった番組で起こると、やっぱりあるんだなと。その声が霊だとは断言できませんが、明らかにおかしな声が入っていたのは間違いない。
杉野 やっぱりそういう話をしていると来るんですよ。みなさんもお気をつけください! 小さいおじさんをみたっていう人はいますね。だからきっといるんですよね。霊的なもの、スピリチュアルな現象なども含めて、目に見えないものをインチキだ、まがい物だって言うこともできないなと思っています。

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見えないものの存在は否定しないーー杉野遥亮。©「東京怪奇酒」製作委員会

「見えない世界」との向き合い方を誠実に模索する杉野氏、霊がみたい清野氏、霊がみえまくるチャンス氏、そして、その筋の専門家ぞろいの「怪談オールスターズ」。さまざまな個性と信念がどんな『怪奇酒』を生み出したのか、放送が待ち遠しくなるばかりである。
 そして、ラジオに怪音がまぎれこんだ件を考えれば、そのほかにもまだ気づかれていない怪現象がドラマに映り込んでいる可能性も考えられる。ドラマを楽しみつつ、一話一話怪談アンテナをとぎすませて視聴しなければ!

話題にあがったラジオ番組はAuDee『杉野遥亮の「今度は長ズボン」』にて配信中。ご自身の耳で「怪音」を確認されてはいかがだろうか。
https://audee.jp/voice/show/27187

 また、放送とあわせて”生配信”でも怪奇酒を楽しめる。ここでも何かが起こる予感しかしない……。

<ドラマ概要>「東京怪奇酒」
2021年2月19日スタート(全6話) 毎週金曜深夜0時52分~1時23分
放送局:テレビ東京 テレビ大阪 テレビ北海道 TVQ九州放送 ほか
出演:杉野遥亮 清野とおる チャンス大城 松原タニシ OKAMOTO’S オカモトショウ R-指定(Creepy Nuts) 大島てる 三上丈晴(「ムー」編集長) 吉田悠軌 ありがとうぁみ シークエンスはやとも ヤースー(スマイルシーサー) ボルサリーノ関 岡山天音

<特報>2月20日(土)、3月20日(土)、3月27日(土)に“怪談オールスターズ”によるオンラインイベント開催決定!詳しくは公式サイトにて。


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