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ラグビー神社を釜石に

ラグビーに5万人、平日の昼間に。

ラグビーに……。
「世界で勝つ」威力はすごいなあ。
トップリーグやトップチャレンジリーグの試合にも行って欲しいな。

ラグビーは盛り上がった。
これ以上ないぐらい、注目を集め、
熱狂を呼び起こし、歓喜の涙を絞り、
ニワカであることを誇りに思い、
相手国のナショナルアンセムを歌い上げ、
相手国のファンと抱き合い、好戦を称え合い、
ゴミを拾って、家路についた。

奇跡だった。
もしかすると、ラグビー神社のおかげかもしれない。
東京・丸の内に突然現れたラグビー神社。
実は、京都の下鴨神社から移した由緒正しい神社で、
下鴨神社は、日本で最初にラグビーボールを蹴った場所。
いわば、日本でのキックオフを見守った神様だった。

ワールドカップが終わり、神社も解体されたが、
せっかくつくったんだから壊してなくすんじゃなくて、
うちにちょうだい、
といったのが岩手県釜石市。
ワールドカップの試合をした鵜住居復興スタジアム、
通称「ウノスタ」に移設する予定。

しかし、由緒正しさがために「政教分離」にひっかかり、
自治体も国もお金が出せず、
それでクラファンに、ということになった。

ラグビーの神様がウノスタに。
これは、宝来館のおかみさん(岩崎昭子さん)が、
「スタジアムの後ろの山には、ラグビー神社をつくりたいなあ」
といっていたことが実現することになる。
おかみさん、「鵜住居にスタジアムをつくるといいなあ」
といっていたことが実現したし、その前は
「釜石でもワールドカップの試合をしたいなあ」
といっていたことが実現している。

おかみさんは、女神である。

もうひとり、ワールドカップを成功させた神様がいる。
意外なことに、森喜朗さんだ。

今年5月。ワールドカップまで半年をきった。
日本ラグビーフットボール協会の理事会が開かれた。

森喜朗さんは当時、ラグビー協会の会長。
理事会でこう切り出した。
「ワールドカップのあと、どうする?」

4年前のワールドカップで、
日本代表は南アフリカを逆転で破った。
スポーツ史上最大の番狂わせ、と世界から評された。
「ブライトンの奇跡」と讃えられ、
五郎丸歩というヒーローを生み、
日本中がラグビーに注目した。

日本代表は南アフリカそれも合わせて、予選リーグで3勝した。
しかし、ボーナスポイントが足らず、ベスト8入りを逃した。
これも、ラグビー史上初のことだった。

ラグビー熱は高くなった。
しかし、やがて冷めた。
五郎丸個人の人気にのっかっただけで、
ラグビー協会はなにもしかけなかった。

このことがあって、
森会長は「このあとどうする?」」
と理事全員に対して問いを発した。

発言する理事もいたが、
森さんは、

日本にワールドカップが来ることになって、10年がたつ。
10年あったのに、君たちはなにも考えてないのか。
みんな辞任したらどうだ。
わたしは辞める。

ワールドカップ直前の、
クーデターだった。

そしてラグビー協会は、
新しい会長に森重隆さんを、
副会長に清宮克幸さんを迎え、
ラグビーのプロ化に踏み切った。

丸の内に5万人が集まり、
その丸の内にあったラグビー神社を、
釜石の鵜住居に移したい。
あの日、坂道を駆け上がった子どもたち、
その後ばらばらになった子どもたちが、
いつかふたたび集まろうねと約束した、
ウノスタに。