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人生の長さは変えられないけど、人生の幅は変えられる

白い杖をついたおじいさんが、
点字ブロックの上を歩いていた。
新宿駅西口の地下道。

通り過ぎてからハッとした。
もしかして、おじいさんは電車に乗りたかったのかもしれない。
だとしたら、反対方向に歩いてる!
教えてあげないと!

と思って、通り過ぎた方向に振り返ってみると、
もうそのおじいさんはいなかった。

わたしの思いすごしか、
誰かが正しく導いてくれたか。

いずれにせよ、おじいさんのそばを通りがかったときに、
声をかければよかった。
躊躇して、通り過ぎた。
通り過ぎたら、声かけないことを正当化していた自分。

『自分の強みの見つけた』の著者垣内俊哉さんは、
「ミライロ」という会社を経営している。
ユニバーサルサービスを提供する会社だ。

垣内さんは生まれつき骨が弱い。
骨形成不全症、という2万人に1人の難病で、
何度も何度も骨折していて、
小学校4年生のときに、車いすの生活になった。

大学生になって、コンビニ、ファミレス、新聞配達、
車いすでもできそうなアルバイトを探したが、
お断りされるケースが続いた。
やっと採用されたのが、ウェブ制作会社。

そこで垣内さんは、営業部門に配属されることになる。
ウェブページをつくる部署かと思ったら、
外周りの営業。
ドアを叩いて、開けてもらい、
「御社でも、ホームページをつくりませんか?」

車いすで入っていける会社はそう多くはない。
電車に乗り降りするのも、時間がかかる。
ほかの営業メンバーに比べて、圧倒的に不利だ。
メンバーが40件回るのに、自分は10件しかできない。

どうすればいいか。
ハンディキャップがあるから、成績が悪くても大目に見てもらうか。

垣内さんは、同じ訪問先に通い続けることにした。
通っているうちに、「またあの人か」と。
「また垣内さんが来た」
と思われる一方で、営業成績は上がり、部門でトップになり続けた。

バイト先の会社の社長はいった。
「垣内、歩けないことに胸を張れ」

垣内さんにとって、歩けないという「弱み」は、
実は「強み」となっていた。

垣内さんは、街なかや企業や学校の中のバリアをフリーにする仕事をしている。
同時に、いろんな人たちに「バリアはバリューになる」と説いている。
障害ということだけではなく、
なにか弱みやコンプレックスは誰もが持っているだろう。
ネガティブに考えず、それをポジティブにとらえて「強み」にする。

垣内さんがよくいう言葉に、

「人生の長さは変えられないが、人生の幅は変えられる」

というのがあって、わたしはこの言葉がとても励みになっている。
仕事や暮らしのなかで、
イタいことや悲しいがあっても受け入れて、
いろんなことにチャレンジして、
それらを乗り越えて、さらにバリューにしていく。

そうすれば、仕事でも暮らしでも、これまでより幅が広がっていく。

ちなみに、交通インフラにおけるバリアフリーは、日本はかなりの先進国。
ハードは整っているけれども、人々のハートがついていけてない。

冒頭、白い杖をついたおじいさんいは、
「なにかお手伝いしましょうか?」
と声をかけて対応するのがユニバーサルマナー。
ハートをつけて、自分のバリューを上げていくためにも。


『自分の強みの見つけかた』 垣内俊哉 KADOKAWA 2022年