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隠者の竈(かまど) ロケットストーブ製作記(製作編) 【週末隠者】

 前回は「ロケットストーブ」とはどのようなものか、その原理について説明しました。それを踏まえて、いよいよ実際の制作にかかります。以下、自分でもやってみたい読者の方の参考もかねて手順を説明します。

※前回はこちら

 まず設計です。どうせならロケットストーブだけではなくいろいろな用途に使えるものをと思い、【図1】のようなかまどを考えてみました。まずAの部分がロケットストーブの本体で、通常の煮炊きに使います。次にBの部分に少し広いスペースを設けて、ロケットストーブから出た熾火おきびや消し炭、もちろん通常の薪や市販の木炭なども使って直火焼きができるバーベキュー炉のような部分を作ります。この部分はロケットストーブ使用時に熾火を周囲に飛散させないための防火の意味もあります。最後にCの部分ですが、ここは周囲をレンガで覆った箱形のスペースとし、中で炭火を焚いてピザやパンを焼くかまとして使うことを考えてみました。

【図1】竈の模式図

 続いて材料です。ネット上でロケットストーブ制作の体験談を見ると市販の赤レンガやコンクリート製のU字溝、ステンレス製の煙突などを使って作っている例が多いようです。ただ、ロケットストーブの燃焼温度は最大で700~1000℃程度に達するため、通常の赤レンガの耐熱温度を超えてしまいます。ステンレス製煙突も高熱により短期間で穴が開いてしまうらしく、コンクリートも最も重要な成分である炭酸カルシウムが800℃を超えたあたりで熱により分解してしまうので長期の使用には不適でしょう。結局、多少高くはつくものの、ホームセンターで安い耐火レンガを買って作ることにしました。とは言ったものの、例えば1段4個×6段のロケットストーブ部分だけを作るとして、それだけで24個+火床部分6個+αで、合計30個以上のレンガが必要になります。今回の場合、それに加えてバーベキュー炉やパン窯の部分も作るわけで、さらに土台用のコンクリートブロックと赤レンガも併せて買う必要があり、最終的に合わせて100個以上のレンガとブロックを買い込んで車に乗せ、家に運び込むことになりました。けっこうの出費と手間です。
 作るに当たっては、後から分解・改造・移設が可能なように、セメントは使わずレンガを積むだけにします。(なお、以下の写真は後から順不同で撮ったもので、必ずしも制作順に並んでいるわけではありません。)

①まず、地面を掘り、コンクリートブロックを並べて基礎を作ります【写真1】。前述の通りセメントで固めることはしないので、その分、多少面倒でも水準器を使って水平はしっかり取り、上に積み重ねたレンガが傾いて崩れないようにします。

【写真1】コンクリートブロックを並べて基礎にする

②基礎の上に赤レンガ(正確には赤レンガ型のコンクリートブロック)を並べて土台にします。【写真2】

【写真2】基礎の上にレンガを並べて土台を作る

③その上に耐火レンガで竈本体を組み立てていきます。【写真3】

【写真3】土台の上に耐火レンガで炉を作る

 ロケットストーブでヒートライザーの上部、鍋釜を置く部分には、ちょうど自宅のガスコンロが壊れて買い換えることになったので、その五徳を流用することにしました。【写真4】

【写真4】五徳(左)とそれをヒートライザー上部に置いたところ(右)

 平行して、火を使う時に必要な道具類も買ったり自作したりして揃えていきます。

※耐熱手袋
 熱いものを持つのに耐熱手袋は必須です。軍手で用が足りる場合も多いのですが、軍手は可燃性の上、少しでも濡れていると熱いものを持った瞬間に熱が水分を通してダイレクトに手に伝わるので注意が必要です。ホームセンターで売っている溶接用の革手袋は比較的安価で難燃性、かつ断熱性も高いので重宝します。その内側に乾いた軍手を着用すればさらに確実でしょう。【写真5】

【写真5】軍手(左)と溶接用革手袋(右)

※火吹き竹(以下【写真6】)
 薪の火は焚き付けに点火しただけで簡単に大きくなってはくれません。確実に燃焼させるためには風を送って火を熾す必要があります。お店でキャンプ用品のコーナーをのぞけば電池式の送風機や手動式のふいごなど様々なアイテムが売られていますが、ここはシンプルに火吹き竹を使うことにします。

【写真6】火を使うのに必要な道具類。上:火消し壺。下:左からピザピール、
火吹き竹、十能、火ばさみ、火かき棒代わりのO型アンカー。

 とはいえその火吹き竹も、本州であれば周囲にいくらでもある竹藪から簡単に調達できるのでしょうが、北海道ではごく一部の地域を除いて竹は自生していません(注1)。D市は道内としては例外的にホテイチク(布袋竹)が生えており、私の庵の敷地内にも小さな竹藪があるものの、それも火吹き竹として使うには細すぎます。結局、ホームセンターで買ってきた支柱用の竹を適当な長さに切り、手元にあった一番長くて太い釘をポンチ替わりにして節をぶち抜いたあとその穴を丸ヤスリで削って広げ、息が通る程度の竹筒を自作しました。もちろん、身の回りにある適当な竹筒や金属の筒で代用しても構いません。ただし火に近づけて使うのでプラスチック製の筒は避けた方が無難です。

注1:俗に「根曲がり竹」と呼ばれるチシマザサは分類上は竹ではなくササの一種になります。こちらは北海道にも自生しているものの分布は日本海側中心で、D市周辺では目にしません。

※火ばさみ
 薪や炭をひっくり返したり移動させたりするのに使います。物置の中に家の前の持ち主の方が残したものがありました。安いゴミばさみだと強度に問題があり、火の付いた薪を取り落としたりしますので、購入する場合はケチらず大型で肉厚の頑丈なものを選ぶようにしましょう。

※火かき棒
 熾火を掻き立てて火を大きくしたり、薪の位置を変えたりするのに使います。専用の火かき棒は高い上にロケットストーブの小さな焚き口に入らないため、手元にあった鉄製のO型アンカーで代用します。

※十能
 先が平らになった片手持ちのスコップのような道具です。熾火を掬って火消し壺に移すときなどに使います。ホームセンターで売っている小型の安いものがちょうどロケットストーブの焚き口の幅に合います。

※火消し壺
 ロケットストーブを使い終わった後に残った熾火は、放置してしまうと風で飛ばされたりして山火事の原因になりかねないので、火消し壺に入れて消します。これは自作できないので市販品を買いました。吸い殻入れなどに使われる蓋付きの金属バケツでも代用は可能ですが、容器が熱くなるので気をつけてください。こうしてできた消し炭は炭火を熾すときの着火剤やもちろん燃料としても使え、出た灰は畑の肥料になります。実に無駄がありません。

※ピザピール
 ピザやパンをオーブンから出し入れするのに使うシャベルかヘラのような道具です。調べたところ市販品はけっこう高く、それならばと自分で作ることにしました。まずホームセンターでA4サイズのアルミ板(ピザやパンの重さを支えられる程度に厚手のもの)を買います。柄は、敷地の中に生えているホテイチクを切ってきてその根元の部分を使うことにしました。適当な長さに切った柄にノコギリで切れ目を入れてアルミ板を挟み、ドリルでネジ穴を空けてアルミ板をネジで柄に留めます。角が尖ったままだと危ないので最後にヤスリでアルミ板の角を丸めて完成。材料費数百円、制作時間1時間少々で安直にできてしまいましたが、ホテイチクの節くれ立った根元の部分がグリップとしてちょうど良い上に見た目も風情があり、個人的に気に入っています。

 実際の竈や道具類の制作については私以外にもネットにいろいろと情報を提供してくれている方がいますので、自分でもやってみたい方はそちらも参考にしてください。私の場合、以下のようなDIY関係の書籍が(ここまで本格的にやっていないとはいえ)材料を選んだり道具を揃えたりするのに大いに参考になりました。

 こうして竈も完成し、道具も準備しました。次回は、いよいよそれを使っての料理に挑みます。

※次回はこちら

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