見出し画像

2023年の阪神タイガースを組織論で語ってみた

いつもと趣向を変えて、身近な話題を話そうと思います。

2023年9月11日現在、阪神タイガースが18年振りの優勝にひた走っています。恐らく皆さんがこの文章を読んでいただいている頃には、既に優勝が決まっているのではないかと思います。

さて今年の阪神タイガースの強さを、プロ野球解説者の方が色々と語っておられるので、専門的なところはそちらに譲り、ここでは企業組織を普段見ている私から解説をします。

2023年の阪神タイガースの強さは、「しぶとい」「一点差に強い」「競り勝つ」と言ったイメージがありました。

投手では、「安定した先発投手陣」「誰が出てきても抑えるセットアッパー」「絶対的な守護神の存在」。攻撃面では、「足が速い選手が多い」「打線のつながりが良い」「個々の選手が役割に応じた素晴らしい活躍をしている」などがあります。これらも全て快進撃の要因ではあります。

ただ、データ面で見てみると、少し様相が変わります。※2023年は125試合経過した、9月11日現在の数字です
以下データは全て2022年→2023年です。括弧内はセ・リーグ6球団での順位です。

・防御率: 2.67(1位) →2.65(1位)

・打率: .243(5位) →.248(3位)

・本塁打数: 83(5位) →69(5位)

・失策数: 86(6位) →73(6位)

攻撃も守備もそこまで昨年と変わらないですね。
ここでは四球に注目したいと思います。(相手投手の球を見極めて、ヒット一本に値する四球を選んだ数を表します)

・四球獲得数: 358(3位) →450(1位)

約100個、昨年より圧倒的に増えていますね。今の段階で昨年のセ・リーグの1位の数を上回っています。これはつまり、明らかにチームとして意志を持って四球を狙いにいっているように見受けられます。

新聞記事等によると、シーズンが始まる前、岡田監督が経営陣に依頼して「四球の査定を昨年より上げてください」とお願いしたとのこと。査定に直結するならば、選手はそれを意識して狙いにいきますよね。

その結果、意図的に四球が増え、打撃力がアップしなくても塁に出てチャンスが増えたことがあります。副次的に相手投手に球数を余分に投げさせる意図もあったと思います。
岡田監督は恐らく「昨年より急に攻撃力は上がらない。でも投手力はある」と考え、どうやったらシーズン全143試合を見渡して白星を積み上げられるか、算盤を弾いたはずです。
その時に、少ない点数を取って、投手力で守り勝つプランを描いたんだと思います。(ここでは触れませんが、守り勝つ時に足を引っ張る、失策数についても別の手が打たれています)

どの球を狙うと、どの球がどう跳ね返ってどの球に当たる?

さて、ここから我々の学べることは、ビジネスの勝ち筋を見極め、そこに効くKPI(重要業績指標=最も業績にヒットする指標)をセットするということです。
ビリヤードのようにどの球をどのように突いたら、球が跳ね返り、狙った球が落とせるか。それがKPIですね。

裏返すと、気合だけで売上を上げるといった前時代的なスタイルだと社員は疲弊します。いかに効果的に売上を上げられるか。10年前、リンクアンドモチベーションにまだモチベーションクラウドが無かった頃(営業を頑張らないといけなかった頃)、ベンチャー企業向けの部門の若手社員が売上を上げる際、彼らにセットしたKPIは「1週間に10人の社長と会う」でした。1日に2人の社長と会うということですね。

売上が達成するかしないかは水物ですが、社長に10人会うのは頑張ったら自分の力でできることです。ここに集中して評価指標を置くことで、若手社員のやるべきことがシンプルになり、結果もついてきてモチベーションは向上し、組織業績も達成していきました。
ここでのポイントは「KPIはコントローラブルな指標をセットする」ことです。自分の行動が無関係ならばその行動は引き出されませんが、自分が行動することによって数値が動くなら人は動きます。

人事評価というとどうしても、人事から評価依頼がきてから直前になってバタバタし、「あれって今期だっけ?」などと始まり、上司も本人も適当に「まあこんなもんか」となりがちです。
そうではなく、上司・部下でビジネスを成功させるために、日頃から必要な指標や適切なマイルストーンをセットし、それを共通認識として追いかけることが必要です。
 
私自身『人事評価は業績を高める効果的なツール』と理解しており、やり方次第でメチャクチャ使えます。そのポイントは目標設定にあるのですが、そのお話はまた別の回でお話できればと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?