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【超頻出】著作隣接権の出題パターン別に分かりやすく解説【知的財産管理技能検定】

 村井🅿️が著作権のことを勉強し始めたのは、ざっと20年前にさかのぼります。「これって著作権的にどうなん?」がキッカケで、「実務家のための著作権ハンドブック」「著作権Q&A」のようなトラブルを未然に避けるノウハウ集を貪るように読み倒してました。そんな時に目に入ってきたのが「著作隣接権」と言う、見るだけで嫌になるレベルの総画数60画の言葉です。「何それ、著作権と何が違うの?」って素朴なギモンから、「我が国の著作権法は著作物を創作する者だけでなく、著作物を公に伝達する者にも保護を与えてるんだ、スゲェ!」って感動したもんです。何にせよ、今ならTikTokとかやってたら、他人の演奏した音源をBGMに使わせてもらう場面が多いです。お気に入りのアーティストをBGMに使ったら、テンションも上がりますよね。著作隣接権は、作曲家ではなく、演奏したアーティストの利益を保護する権利です。著作権と共に重要と言えます。そんな訳で、今回は知的財産管理技能検定にメチャクチャ出題されやすい「著作隣接権」について、過去の出題パターンから「ココだけ抑えれば1問ゲットできる」という重要ポイントを解説します。

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「著作隣接権」とは?

 著作物の公衆への伝達に重要な役割を果たしている者(実演家、レコード製作者、放送事業者及び有線放送事業者)に与えられる権利です。音楽の著作物などのように、演奏する者によって創作イメージの変わる場合があります。このような場合、演奏者、すなわち「実演家」も創作活動に関わっていると考えられるため、保護の対象となっています。

著作隣接権の出題傾向

 著作隣接権は2級、3級問わず、ほぼ毎回出題されています。例えば、直近10回分の3級の過去問を調査したところ..

表1. 「著作隣接権」に関する出題傾向

表1に示される通り、ほぼ毎回3級学科試験で問われていて、出題数は1・2問となってました。一般公開されている直近3回分の過去問を解いておくと、おおよその傾向が掴めます。ある程度の出題パターンがあるので、ぜひとも得点源にしてちゃいましょう。
(ちなみに、第35回は新型コロナウィルスの感染防止のために検定そのものが中止でした。)

著作隣接権の出題パターン

  1. 著作権との比較を問うパターン「著作隣接権に含まれるか?」

    1. 実演家人格権に公表権は「含まれない」∵公表を前提としているから

    2. レコード製作者の権利に同一性保持権は「含まれない」∵人格権が認められているのは実演家のみ

    3. 肖像権は「含まれない」

  2. 権利の発生・存続期間を問うパターン

    1. 権利の発生は実演等を行った時(無方式主義

    2. 存続期間は2種類

      1. 実演、レコード発行が行われたときから70年間

      2. 放送又は有線放送が行われたときから50年間

  3. その他

    1. 著作者が、その著作物を演じても著作隣接権を有する

    2. 固定した音が著作物でない場合であっても、著作隣接権が発生する

    3. 私的使用目的で複製を行った場合には、著作権と同様に著作隣接権も制限される

 あくまでも過去問ベースですが、出題パターンは大きく分けて3種類に分かれます。まず、著作者の権利と比較して、「著作隣接権には含まれない」権利などを問うパターンです。このパターンは、他のテーマでもよく使われます。例えば、公表権は著作者に認められているのに、実演家には認められていません。実演というものは、人前で実際に演じること(公表)を前提にするものと考えられているからです。また、実演家のみ人格権が規定されている理由は、例えば、楽曲を演奏したり、歌ったりするなど、実演家としての表現部分に創作的な要素が加わるため、実演家の人格的利益を保護する必要があると考えられているからです。

 次に、著作者の権利と同様に、著作隣接権も無方式主義を採用しています(著89条5項)。著作者が著作物を創作した時点から著作者の権利が発生するのと同様、著作隣接権も実演等の行為をおこなった時から権利が発生します。平成30年の改正において、著作者の権利の存続期間が著作者の死後70年まで延長された際、実演家およびレコード製作者の著作隣接権も実演等を行った時から70年に延長されました(放送・有線放送事業者は50年のまま)。

 他に、受検生が勘違いしやすい点を問うパターンがあります。例えば、実演家等に認められる権利は、著作者に認められる権利とは全く別個のものです(著90条)。なので、シンガーソングライターのように、自身で作詞・作曲したものを演奏して聞かせる場合は、著作者の権利と著作隣接権者の権利が働きます。したがって、著作者自身が著作隣接権を有することはあり得ます。さらに、レコード製作者とは、レコードに固定されている音を最初に固定した者をいいます(著2条1項6号)。固定されている音に著作物性は必要ありません。虫の鳴き声やサイレンの音などでも良い訳です。また、著作隣接権も著作権の制限規定を(全てではないですが)準用しています(著102条)。私的使用目的の複製(著30条1項)に関する規定は、著作隣接権の目的となっている実演、レコード、放送又は有線放送の利用について準用されています(著102条1項)。

2級では難問も出題される

 2級になると、著作隣接権の譲渡や、映画の著作物における実演家のワンチャンス主義など、ライセンス契約の場面で生じる問題について問われます。著作隣接権は、著作権と同様に、全部又は一部の譲渡が可能です(著103条)。財産的な権利だからです。また、実演家の許諾を得て録音・録画された「映画の著作物」における実演について、サントラ盤などは除いて、改めてその映画に出演した俳優等実演家の許諾を得る必要はありません(著91条1項、2項)。これをワンチャンス主義と呼びます。

著作隣接権の出題例

ア~ウを比較して、レコード製作者の権利として、最も不適切と考えられるものはどれか。

ア 複製権
イ 送信可能化権
ウ 同一性保持権

2022年7月10日 3級学科 問22

正解 ウ
レコード製作者には人格権が認められていない。

ア~ウを比較して、著作隣接権に関して、最も不適切と考えられるものはどれか。

ア レコード製作者の著作隣接権は、レコードに固定されている音を最初に固定した者に発生する。
イ 実演家は、実演家人格権として、公表権と同一性保持権を有する。
ウ 放送事業者及び有線放送事業者の著作隣接権の存続期間は、その放送又は有線放送が行われた日の属する年の翌年から起算する。

2022年3月13日 3級学科 問5

正解 イ
実演家には、公表権が認められていない。実演とは、公表を前提とするものと考えられているからである。

まとめ

 以下の記事で、著作権法について簡単に説明しています。実際の出題例も解説しているので、著作権法の全体をザックリと知りたいって人は、ぜひ見て下さい。

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