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【超最短マスター知財検定3級】#05権利の管理・活用【2019年7月実施回】

いよいよ特許が付与されました!特許権は特許発明の内容を業として独占実施できる強い権利です。自分の発明を堂々と権利化することができるし、万一、他人が業として特許発明の実施をしていたら、排除することもできます。他に、自分で特許発明の実施ができないときは、他の人に実施権の設定や許諾もできます。特許を活用して得た利益を次の研究開発に回すのが知的創造サイクルと呼びます。

権利の存続期間

これまで説明してきた主な知的財産権の存続期間および登録に必要な料金などについて次の表にまとめました。

特許は実体審査を経て、登録に必要な料金を期限までに納付しないと特許権が発生しません。そのため存続期間の始期は登録日になります。実用新案、意匠、商標などの産業財産権も同じです。これに対し、著作権法は無方式主義(出願不要で権利発生)を採用しているため、著作物の完成時に原始的に著作権が発生し、登録を必要としないので料金も不要です。

権利期間の終期は権利によって起算方法が異なります。特許や実用新案は出願日が起算点となり、それぞれ20年、10年になります。なお、医薬品等の特許発明の場合は、安全性等を確保するための試験の実施や当局の審査等により、特許権存続期間の侵食があるため、最長で5年まで存続期間の延長が認められる制度があります。

出題例

【第26回3級学科試験】
問26 ア~ウを比較して,特許権の設定登録,存続期間に関して,最も不適切と考えられるものはどれか。
ア 特許権は,原則として設定登録の日から20年間存続する。
イ 特許権の設定登録を受けるためには,第1年から第3年までの特許料の納付が必要である。
ウ 特許権の存続期間は,延長される場合がある。

解答 ア
特許権の存続期間の終期は、設定登録の日ではなく出願日から起算する。

一方、意匠や商標は登録日から起算されます。特許と比べて審査にかかる期間が短いためです。さらに、商標は自他商品等の識別機能が最重要な機能です。商標は使い続けることにより、商標に化体した業務上の信用が増すことになるので、半永久的に使用し続けられるよう10年ごとの更新制度が規定されています。

なお、令和元年の法改正により、意匠権の存続期間が変更になりました。本稿が対象とする2019年7月実施回の検定では、令和元年の法改正は適用されないので出題のあった場合は「登録日から20年」で判断してください。

出題例

【第32回3級学科試験】
問17 ア~ウを比較して,著作権の存続期間に関して,最も不適切と考えられるものはどれか。
ア 著作権の存続期間は,著作物の創作の時に始まる。
イ 個人の著作物の著作権の存続期間が満了しているかどうかを判断するためには,その著作者の死亡年だけでなくその月日も調査しなければならない。
ウ 映画の著作物の著作権は,創作後70年以内に公表されないときは,創作後70年を経過するまでの間存続する。

解答 イ
イ 著作権の存続期間は、著作者の死後70年までである。死亡した翌年1月1日よりカウントを開始する。したがって、死亡した月日を調査する必要はない。
ウ 映画の著作物の著作権は、その著作物の公表後70年(その著作物がその創作後70年以内に公表されなかったときは、その創作後70年)を経過するまでの間、存続する(著54条1項)。

【第31回3級学科試験】
問9 ア~ウを比較して,著作隣接権の存続期間に関して,最も適切と考えられるものはどれか。
ア レコード製作者が有する著作隣接権は,そのレコード製作者が死亡した日の属する年の翌年から50年を経過したときに消滅する。
イ 実演家が有する著作隣接権は,その実演家が死亡した日の属する年の翌年から50年を経過したときに消滅する。
ウ 放送事業者が有する著作隣接権は,その放送が行われた日の属する年の翌年から50年を経過したときに消滅する。

解答 ウ
ア レコード製作者が有する著作隣接権は、そのレコードの発行が行われた日の属する年の翌年から70年を経過したときに消滅する(著101条2項2号)。
イ 実演家が有する著作隣接権は、その実演が行われた日の属する年の翌年から70年を経過したときに消滅する(著101条2項1号)。

【第31回3級学科試験】
問1 ア~ウを比較して,実用新案法に関する次の文章の空欄[ 1 ]に入る語句として,最も適切と考えられるものはどれか。

 実用新案登録出願は,新規性や進歩性などの登録要件について実体審査がされないので早期に実用新案権が設定登録される。また,その存続期間は,[ 1 ]をもって終了する。

 ア 1 =出願日から10年
 イ 1 =設定登録の日から10年
 ウ 1 =出願日から15年

解答 ア

実施権

特許権は財産権的な性格をもちます。独占実施のみならず、他人への譲渡や実施許諾することが可能です。また、他の人に実施権を設定・許諾することも可能です。特許法における実施権は大きく分けて、専用実施権と通常実施権の2種類あります。

専用実施権は、特許権者との間で設定した範囲内で業として特許発明の実施を専有できる権利です。独占実施が可能なので、設定した範囲内なら特許権者であっても、業としての実施ができません。複数人に同一範囲内で専用実施権を設定することもできません。とても強力な権利なので、特許原簿に登録しないと効力が発生しないことになっています。

通常実施権は、例えば契約などによって発生します。他人の実施を排除できないので、専用実施権に比べると弱い権利といえます。その代わり専用実施権のように登録は必要ありません。

出題例

【第31回3級学科試験】
問25 ア~ウを比較して,特許権に基づくライセンス契約に関して,最も適切と考えられるものはどれか。
ア 特許権が共有に係るときは,各共有者は,他の共有者の同意を得なくとも,その特許権について通常実施権を許諾することができる。
イ 通常実施権では,内容,地域,期間を限定して許諾することはできない。
ウ 特許権者は,自己の特許権の全範囲について,専用実施権を設定したときには,特許発明を実施できない。

解答 ウ
ア 特許権が共有に係るときは、他の共有者の同意が必要(特73条3項)。
イ そのような規定はない。
ウ 特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない(特68条1項)。

まとめ

知的財産権の存続期間や活用法など、権利化後のポイントについて説明しました。法域ごとの違いを整理しておくと良いでしょう。

次回は、著作権や著作権の例外規定などについて説明します。

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