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【超最短マスター知財検定3級】#03特許出願の手続き【2019年7月実施回】

完成発明について特許を受けるために特許庁に対して行う手続きを特許出願と呼びます。所定の書類を添付した願書を提出する必要があります。本稿では特許出願に係る手続きについて簡単に説明します。

特許を受ける権利

発明者は発明完成と同時に「特許を受ける権利」をもちます。特許庁へ特許出願する権利のことです。発明者は自然人、つまり人間でなければなりません。「特許を受ける権利」は他人に譲渡等することができるので、職務発明のように勤務規則等に基づき使用者等に移転することも可能です。特許出願する者を出願人と呼び、実体審査を経て特許権が設定登録されると特許権者となります。

出願書類

特許出願に必要な書類は大きく分けて5つあります。語呂合わせで「願・明・請・図・要」と覚えましょう。

書 ・・・ 発明者や出願人名,住所などを記載
細書 ・・・ 発明の詳細な説明などを記載
特許求の範囲 ・・・ 特許を受けようとする技術範囲の記載
面 ・・・ 技術内容を説明するために必要な図面(なくても良い)
約書 ・・・ 発明の概要を記載

明細書は「発明の名称」「図面の簡単な説明」「発明の詳細な説明」を記載しないといけません。「発明の詳細な説明」および「特許請求の範囲」の記載内容については過去に出題例もある重要な書類です。「発明の詳細な説明」は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載する必要があります。また、「特許請求の範囲」は、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項(発明特定事項)のすべてを記載しなければならないとされています。

出題例

【第31回3級学科試験】
問21 ア~ウを比較して,特許出願の際,必ずしも願書に添付しなくてもよい書類として,最も適切と考えられるものはどれか。
 ア 特許請求の範囲   イ 要約書   ウ 図面

解答 ウ
図面はなくても良い。化学式や数式のみで表現できる発明もあるから。

【第27回3級学科試験】
問3 ア~ウを比較して,特許出願に係る書類の記載要件に関する次の文章の空欄[ 1 ]に入る語句として,最も適切と考えられるものはどれか。

特許権は発明を公開したことへの代償として付与されるものであるから, [ 1 ]の記載要件として,その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないとされている。

ア 要約書   イ 図面   ウ 発明の詳細な説明

解答 ウ
発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならない(特36条4項1号)。

各法域別に必要な書類が異なるので整理しておきましょう。

国内優先権制度

改良発明などを行った場合、所定の要件を満たせば、先の出願に記載した発明を後の出願の中に含めてひとまとめの出願とすることができます。一連の技術開発の成果をバラバラでなく、包括的でかつ漏れのない形で権利取得することを可能とするためです。

国内優先権を主張すると、先の出願で記載した発明については、先の出願時点を基準に新規性や進歩性などが判断されます。なおかつ、国内優先権主張を伴う出願は、先の出願日から1年6月経過後に出願公開されます。
ただし、出願自体が先の出願時にしたものとみなされるわけではありません(優先権主張により出願日が遡及するわけではない)。そのため、出願審査の請求や特許権の存続期間は後の出願日を基準に計算されます。

出題例

【第32回3級学科試験】
問19 ア~ウを比較して,特許法に規定する手続の期間に関して,最も不適切と考えられるものはどれか。
ア 国内優先権の主張を伴う特許出願は,先の出願日から1年以内に出願しなければならない。
イ 国内優先権の主張を伴う特許出願は,後の出願日から1年6カ月経過後に出願公開される。
ウ 国内優先権の主張を伴う特許出願に係る特許権の存続期間は,後の出願日から20年をもって終了する。

解答 イ
国内優先権の主張を伴う特許出願は、先の出願日から1年6月経過後に出願公開される。

【第22回3級学科試験】
問5 ア~ウを比較して,特許法に規定する手続の期間に関して,最も不適切と考えられるものはどれか。
ア 国内優先権の主張を伴う特許出願に係る特許権の存続期間は,後の出願日から20年をもって終了する。
イ 国内優先権の主張を伴う特許出願は,後の出願日から3年以内に出願審査請求しなければならない。
ウ 国内優先権の主張を伴う特許出願は,後の出願日から1年6カ月経過後に出願公開される。

解答 ウ
国内優先権の主張を伴う特許出願は、先の出願日から1年6月経過後に出願公開される。

職務発明と職務著作

我が国で特許出願される発明の多くは、会社などで行われた研究から生まれています。従業者などのした発明が職務発明に該当すると、勤務規則等に基づき発明者から「特許を受ける権利」を会社に移転等させることができます。一方、よく似た例として職務著作もあります。発明ではなく著作物を職務として完成させた場合、使用者側が著作者になることもあります。知財管理技能検定3級では、職務発明に関する出題はあまりありませんが、職務著作に関する問題はよく出題されます。

職務著作の成立要件
1. 法人その他使用者の発意に基づく
2. 法人等の業務に従事する者が作成
3. 職務上作成する著作物
4. 法人等が自己の著作の名義の下に公表*1
5. 別段の定め無し
*1 プログラムの著作物の場合には公表要件が不要
∵社内プログラムなど公表を前提としないものもあるため。また、組み込みプログラムのように無名又は作成者以外の名義で公表されるものもあるため。

出題例

【第29回3級学科試験】
問3 ア~ウを比較して,職務著作に係る著作物(プログラムの著作物を除く)の著作者が法人等になる場合の要件として,最も不適切と考えられるものはどれか。
ア 法人等の発意に基づき,その法人等の業務に従事する者が職務上作成すること
イ 法人等が自社の名義のもとに公表すること
ウ 法人等が従業者に対価を支払うこと

解答 ウ
職務著作と職務発明との混同を狙った問題と思われる。職務発明の場合、「特許を受ける権利」を会社に承継した場合などは、従業者は「相当の利益」を受ける権利がある。一方、職務著作の場合、法人等が従業者に対価を支払う義務はない。

【第30回3級学科試験】
問4 ア~ウを比較して,職務著作に関して,最も不適切と考えられるものはどれか。
ア 法人の業務に従事する者により職務上作成されるものであれば,勤務時間外に自宅で作成してもその法人が著作者となることがある。
イ プログラムの著作物については,法人の著作者名義の下に公表しなくても職務著作となることがある。
ウ 法人の発意に基づき法人の業務に従事する者が職務上作成するものであれば,法人以外が著作者となることはない。

解答 ウ
ア 勤務時間外に自宅で作成したとしても、職務に該当すれば「職務上作成する著作物」の要件を満たすと考えられる。
イ プログラムの著作物の場合には、組み込みプログラムのように無名又は作成者以外の名義で公表されるものもあるため、法人名義の下で公表する要件は不要である。
ウ 契約で法人等が著作者とならない旨の取り決めがあれば法人以外の者が著作者となる場合がある。

まとめ

今回かなり長い投稿となってしまいましたが、よく出題される分野なので、法域同士の違いを比較しながら整理しておくのが良いでしょう。

次回は出願後の手続きの予定です。

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