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あなた『LOVE SONG』


LOVE SONG

「人生観変わるくらいの恋愛なんて
もう二度と したくはないッス。」
とか言ってるそばから
テレビをつけて
雑誌を読んでも
微笑みかけてくる輪のない天使

「もっと知りたい。」
「それとなく聞きたい。」
「卒業アルバム黙って見てみたい。」
そんな事ぐらい考えたって仕方ない
想い想われ振り振られニキビの
跡すら気にしてるよ

君はよそ行きの格好で歌ってる
僕のお気に入りのTシャツの柄を笑い

理屈じゃない
理屈じゃない
理屈じゃないから僕は恋をする
理屈じゃないから君に恋をする
恋は理屈じゃない

君がよそ行きの格好で歌ってる
僕は一人きり
ふいに恋の終わりを悟った
変わった髪型と
その似合わないシャツの理由は?

理屈じゃない
理屈じゃない
理屈じゃないから僕は恋をする
理屈じゃないから君に恋をする
理屈じゃないから君も恋をする
恋は理屈じゃない
理屈じゃ分かんない


【解説】
この曲を作り始めた時、
ちょうどAKBの全盛期で
アイドルが盛り上がってきてて、
頻繁にニュースやバラエティでも
オタクが取り上げられているみたいなタイミングだった。
僕もテレビ越しに
その光景をぼんやりと見ていると
女の子のキラキラした姿と
それを応援する男たちの健気さに心が動き、
胸が熱くなった。
「この若さはある意味、
無限ではなく有限だからこそ、
彼女たちのこの姿は
今しかないからこそより美しいんだ。
だから彼らは今、無性の愛を捧げている。」
そんな気持ちを曲を作ろうと思い立ったので、
元々はアイドルに恋をする青年のような曲が作りたかったのが始まりだったが、
自分にそこまでの熱量がなかったのか、
そのテーマで書ききれなくなり、
「好きな女の子のファッションが
全然今までと変わって、
その子が自分ではない
誰かに恋をしている事に気がついた」
という曲に変わっていった。
多分そんな経験をしている頃だったんだろう。
そんな感じで歌詞を書いていて、
出だしと途中で
テーマ自体が変わることもある。
ただ最初のテーマの名残はあるので、
「テレビを付けても雑誌を読んでも」
「君はよそ行きの格好で歌ってる」
という言葉はそのまま残っている。
今では死語かもしれないし、
母が京都の人間なので、
関西の表現かもしれないが、
「あんた、
そんなよそ行きの格好してどこ行くのー?」
おしゃれ=よそ行きの格好
(どこかいつもと違うところに出掛ける格好)
という言葉はよく小さい頃から耳にしていたし、
なんかちょうどいい小馬鹿にしてる感じが
好きな言葉ではあった。
「輪のない天使」はi GO/まほろばローリング楽団の茜谷さんの口癖。
一緒に遊びに行って、
街で可愛い女子を見かけると
四六時中、
「ありゃ、輪のない天使やでー。」
と言っていた。

この曲はとにかくバカっぽい曲にしたかった。
そう思った時、
例えば10代で
ニキビを気にし始めたくらいの男の子が
自分の部屋で学習机に頬杖をついて、
その意中の女の子を思って上を見上げてる
みたいな姿を想像してみた。
男はバカだけど、
これくらいが男として
一番脂が乗ってるバカな年頃だと思う。
「あー、あの子のこと、もっと知りたいなあ。
何が好きなのかなあ。」
「彼氏がいるのか、
それとなく聞いてみたいなあ」
そうなった時に最後、
その好きな人へ
何が今したいかのランキングを考え、
この子なら
「卒業アルバムが見てみたいだろうな」
と思った。
ここの「黙って」というのは、
「本人には黙って」という意味で、
他校でその子と一緒だった子の家とかに遊びに行って
「お前の卒アル見たいわー。」
とか言って、
こっそりその子を探すだろうなと。
それがこの「黙って」に含まれてる。
そうなると彼には
もっとバカっぽさが欲しくなってきて、
顔のニキビができた位置で、
恋の相手に好かれているか、
振られるかが分かるという
何の信憑性もない
日本ティーンズ古来の伝統的占い
『思い思われ振り振られ』
の彼女の顔に残る跡すら気にしてるだろうなと思った。
サビの「恋は理屈じゃない」は
映画『男はつらいよ』で寅さんがよく
「恋は理屈じゃないんだ、理屈だ」
と言っていて、
そこからフレーズを拝借してサビにした。
でもお相手の女の子は僕には興味がない。
僕のお気に入りのTシャツの柄を笑えるくらい何とも思われてはない。
あの子が恋してるあの人のTシャツが
僕と同じものだったら、
絶対こんな風に笑わなかっただろうな。
そんなちょっと切ない報われない恋の曲。

元々の曲のタイトルは『恋愛論』
だったが、
ばんより
「曲名が論としているに
仮説もなく、結論がない。
これでは論として認められない。」
と言われ、
それを論破することもできず、
ばんから小言を言われなさそうな
『LOVE SONG』という当たり障りのないタイトルになった。



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