見出し画像

パタン・ランゲージ#253 自分を語る小物


画像1

パタン・ランゲージは、253のパターン(=パタン)でできています。

#1~#94のパターン(94個)は、町やコミュニティを定義するもの。
#95~#204のパターン(110個)は、個々の建物の空間を定義するもの。
#204~#253のパターン(49個)は、実際の建物や細部をつくる方法。

~#94までの町やコミュニティに関しては、個人でどうこうできる範疇ではないけれど、個々の空間や建物を考えるときにも、その先には「町・コミュニティ」があり、個々の質の向上が、質の良いコミュニティつながるといえます。

#95 ~#204の個々の建築空間を定義するものは、個人でもその質の向上にダイレクトに関わることができるものとなり、間取りを考えたり建築形態を考えたりする際の大きなヒントが詰まっています。

#205 ~#253は、最後の仕上げの部分で、より具体的な作り方や、材料、寸法、家具、装飾、色彩などの具体的なモノについてが書かれています。

つまり、パタン・ランゲージの順番は、広範囲な視点から少しずつ具体的な細かな視点を考えるような順番で構成されているわけです。

*****

設計者でしたら、大きくとらえるところから、徐々により具体的にというプロセスで、考えをまとめていくことが多いと思いますが…

今回初回のタイトルは、オーラス253番目の「自分を語る小物」です(笑)

#253  自分を語る小物

装飾とかインテリアデザインの思想とかが、あまりに広く普及しすぎて、身の周りに本当は何を飾り付けたいか忘れてしまっている人が多い

という指摘から始まるこのテーマ。「飾る」ということだけだはなく、「モノとの関係性」を問うテーマでもあります。

先の引用文で「何を飾りたいか忘れてしまっている」というのは、「空間の所有者」の視点と、「そこを訪れる人の視点」とが入り混じってしまうからだといいます。

空間の所有者の視点であれば、「自分の人生で重要な役割を演ずるもの」を置くべきなのは、言わずもがなです。

逆に、訪れる人の視点というのはどういうことか。「現代人は外に目を向け、他人を意識し、自分を訪ねてくる人間の芽を気にするようになった」とあるように、自分の気持ちよりも他人からの見え方が優位になってしまっているということです。

これは、「映える」という言葉が生まれたように出版から35年経った今のほうがより顕著かもしれません。その一方で、2000年から続く「捨てるブーム」により、自分にとって大切なものを選びとる姿勢が必要とされ、その考え方も多くの人に受け入れられています。モノと上手にお付き合いされている人は、増えているように思います。

画像2


私は、建築士として住宅設計を仕事にしていますが、家事セラピストとして暮らしづくりのお手伝いをしています。「家事セラピスト」は、『捨てる!技術』の著者・辰巳渚さん(故人)が立ち上げた「一般社団法人 家事塾」による認定資格ですが、「片づけ」や「家事」を通して、一人一人の生活者が、自分なりの生活哲学をもち、自分らしく生きることを実践し、自分らしくありたい人をサポートするための考え方とスキルを学ぶ資格です。

家事セラピスト養成講座のカリキュラムはこんな問いから始まりました。

自分にとって大切な物、家の中で気に入っている場所などで、
「これを使っているのが/ここにいるのが私です」
と言える自分に所属しているものを紹介する。

ある方は、「家が好き」で、自分が整えているLDK全体の写真を
ある方は、おばあさまや父上が持ち帰ったお土産や写真が並ぶ棚の写真を
ある方は、家族が寝た後にゆっくりと楽しむお香を 

持参されました。その背景にあるお話から、その方の大切に思う気持ちに共感でき、その方の個性がよくわかります。「モノは語る」のです。


パタン・ランゲージの終わりから始める家づくり。

家をつくる・間取りをつくるのに、何から始めていいかわからない。あるいは、自分の要望がよくわからない。そんな方は、はじめの一歩として、その空間に飾りたいと思う「自分を語る小物」を見つけてみてはいかがでしょう。

一脚の椅子から、ひとつのオブジェから、ひとつの家族との思い出から。具体的な物から始まる、逆アプローチで、住みたい家のイメージを膨らませるというのも、楽しいと思いますよ。

最後に、アレグザンダーの心強い言葉をご紹介します。

近代装飾はしゃれていないとだめだとか、サイケ調にすべきだとか「ナチュラル」な感じがよいとか、「モダンアート」風が好ましいとか、「プラント」を置くべきだとかいった、今どきの流行仕掛たちの言にごまかれないこと。自分の生活がそのままにじみ出ているもの ―自分が大切にしている物や自分を物語るもの―が、いちばん美しい。

-------------------------------
村上有紀(ムラカミユキ) 

楽しい住宅設計を仕事にしています。
もちろん、設計依頼をお受けしていますが(大歓迎!)、お施主さん(住む人)にとっても、間取りをつくるプロセスと学びは楽しいぞ!ということで、間取り好きで、自分で間取りをつくるエネルギーのある人へのサポートをはじめました。オンライン(時々リアル)でのスクール形式です。
やってみたい!面白そう!という方は、まずは無料勉強会にどうぞ。

次回は、8月22日(土)20:00~21:00
下記リンクよりお申し込みください。


家事セラピストについてはこちら
http://kajijuku.com/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?