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「ベルサイユのばら」の主役

「ベルサイユのばら」の主役って一体誰なんだろう。
アニメ版の「ベルサイユのばら」(1979年から1980年まで)ファンの方や,
もっと広く一般大衆の意見は

それは男装の麗人・オスカルであって,
オスカルと彼女を影から支え続けたアンドレとの話である。

と答える方が多いだろう。
少なくとも「ベルサイユのばら」のアニメスタッフは,そう考えていて,
オスカルが「アンドレの妻」となった後に,アンドレが退場し,
間もなくオスカルがバスティーユで散った場面を本作の「終わり」と考え,
「その後の事共」は最終話でダイジェスト的に流されるのみだ。

だが原作の「ベルサイユのばら」は…池田理代子先生はそう考えてない。
元々「ベルサイユのばら」の底本となってるのは伝記作家シュテファン・ツヴァイクの「マリー・アントワネット」であって,アントワネットがオーストリアからフランスに輿入れしてからフランス革命が勃発し,断頭台の露と消えるまでが描かれ,
原作の「ベルサイユのばら」もそこまで描いてる。
つまり原作の「ベルサイユのばら」に於ける主役とは
「オスカルとアントワネット」であって,
ふたりの人生に大きく関与するアンドレとフェルゼンを加えた4人の話なのだ。
原作の設計思想に従って主役の一方のオスカル(とアンドレ)が命を落としても,話が続き,
アントワネットが断頭台の露と消えフェルゼンが退場するまでが描かれてるのだ。

車田正美先生によって描かれたボクシング漫画「リングにかけろ」(1977年から1981年まで)の世界大会・団体戦で日本チームはフランスチームと準々決勝で対決するがフランスチームの内訳はオスカル顔の5つ子の長男の名が「ナポレオン」という車田先生の「フランスを代表する5人」観に驚かされると共に先生の「フランス」観にアニメ版「ベルサイユのばら」のオスカルが大きく関与した事を伺わせ,当時の「ベルばら」ブームの空前絶後ぶりを垣間見る事が出来るのである。
つまり「ベルばら」が無かったら
「リンかけ」のフランスチームは登場しなかった筈なのだ。

ずっと後年…21世紀になって水島勉監督によるアニメ「ガールズ&パンツァー」という戦車アニメでフランスをモデルとしたBC自由学園という高校が戦車道の大会に出場するのだが参加する5人の面子は以下の通り。
マリー(マリー・アントワネット)
押田(おしだ・オスカル)
安藤(あんどう・アンドレ)
祖父江(そふえ・女優ソフィー・マルソー)
砂部(いざべ・女優イザベル・アジャーニ)

「リングにかけろ」から40余年,
「オスカル顔の5つ子の長男の名がナポレオン」という
「フランスを代表する5人」観が,ここまで更新されたのだ。
まあソフィー・マルソーとイザベル・アジャーニは監督の趣味としても,
「ベルサイユのばら」の主役は「オスカルとアントワネット」であるという「原作の意向」がようやく汲まれて,遥々長い旅を続けて来て,報われた思いがするのである。

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