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ウルトラマンブレーザー「朝と夜の間に」レビュー「「ガヴァドンの事」は親友同士の秘密であって,たとえ親であっても明かせないのだ。」

今回の主役はゲント隊長の息子ジュン・小学1年生。
ジュンは親や級友に気を遣い親には意思表示した事がなく
,級友に試験の結果を聞かれても「イマイチ」と答える。
「100点取った」と正直に言って
「出る杭は打たれる」事を恐れているのだ。
努めて「可もなく不可もなく」を演じる小学1年生。
母親は「ジュンは子供らしくない」と父親ゲントに悩みを漏らす。

そんなジュンにアラタという友達が出来て彼の秘密基地に招待され,
「怪獣を描いてみろ」
「何だって自由に描いていいんだ」
と促される。
「何だって自由に描いていい」…多分ジュンは「自由に生きた」事が
一度もなく初めて「何描いたって自由」って言われたんだよね。

そんなジュンが描いた怪獣は
アラタが描いた怪獣「ラジガリベリビンバ」の様に
全てを破壊する光線を出さず,
日がな一日寝てるだけでフカフカで晴れた日に干した布団のにおいがする。
ジュンの「一日中布団の中で寝ていたい」という「子供らしくない」願望に
ゲントが休日に一日寝てるのをジュンが黙って見詰める絵が浮かび上がる。

「いいんだよ無理しなくて」
「ゆっくり寝てれば?」
「サービス残業して家でもサービスじゃ疲れるでしょ?」

こんなコト…6歳の子供に言わせちゃイカンよ…ゲント…。

アラタはジュンが描いた
「日がな一日寝てるだけの怪獣」にガヴァドンと名付ける。
その夜降り注いだ宇宙線によりガヴァドンは実体化する。
ジュンとアラタと妹のツムギは3人でコッソリ
ガヴァドンを育てる事を決意する…。

僕はウルトラマンブレーザーにガヴァドンを登場させる事は
「過去の遺産」に頼る様で否定的だったが
実際に観ると「良かったなあ」って感想しかない。

巨大化したガヴァドンはただ寝てるだけで
市民生活を脅かし,ライフラインを切断する害獣と判断され
防衛隊は害獣を駆除にかかる。
これ迄のブレーザーでは怪獣に「名前」を付けるのだが
今回は「それ」が無い。
大人にとっては「名無しの怪獣」でも
子供達にとっては「ガヴァドン」なのだ。
子供達はガヴァドンに逃げる様促す。
ブレーザーもガヴァドンを駆除しにかかるが…。

「ひどいぞ!ガヴァドンは,ただ寝ていただけじゃないか」

ブレーザーに向かって…大人に向かって…初めて意思表示する
ジュンだったが,その声はブレーザーに届かない。

夕陽の中,戦意ゼロのガヴァドンを一方的に攻撃する
ブレーザーがゾッとする程美しい。

描き様によっては
子供に一生消えないトラウマが残る描写にも出来ただろうが
本作は「ウルトラマン」なのでガヴァドンが星座になる本来のオチを引用。

星になったガヴァドンを見詰めるジュンを迎えに来た両親に
「どうしたの?」と聞かれた彼は「何でもない」と答える。
「ガヴァドンの事」は今や親友となった
アラタとツムギとジュンの間の秘密であって両親にだって話せないのだ。
幾ら「友達の様な両親」であろうと
両親は決して友達ではないと示唆して話は閉じる。



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