見出し画像

テレビ番組「江戸川乱歩の美女シリーズ 黒水仙の美女&黄金仮面」レビュー「奇怪な仮面の殺人魔に入浴中の美女が鋭利な刃物で滅多刺しにされ一面血だら真っ赤となる場面で僕の性癖は大いに歪められたのだ。」

毎日放送(関東ではTBS)で,
1977年4月2日から10月1日迄(第1期),
1978年4月8日から10月28日迄(第2期),
の2期に渡って放送され好評を博した
「横溝正史シリーズ」の成功をテレビ朝日は黙って放っては置かず,
そっちが横溝正史・金田一耕助なら,
こっちは江戸川乱歩・明智小五郎だと言わんばかりに,
同局の「非情のライセンス」で
会田刑事役を演じる天知茂に白羽の矢を立てた。
彼を明智小五郎役に据え,乱歩の猟奇とエロスで対抗したのだ。
放送は「土曜ワイド劇場」枠。

本円盤には「黒水仙の美女」と「黄金仮面」が収録されている。

これは私見だが江戸川乱歩は本格推理より奇想天外さを愛し,
猟奇を誰よりも指向した様に思う。
真犯人は以外であればある程よく,
読者が論理的について行こうとするのを拒絶し
謎解きは例えば子供の頃から酢を飲んで柔軟になり
壺の中に身を隠した等の唖然とするものが多いのだ。

「江戸川乱歩の美女シリーズ」の売りは入浴中の美女(当然裸)は
奇怪な仮面を装着した殺人魔に鋭利な刃物で滅多刺しにされる場面。
ニクイ事に21:00-23:00の2時間の放送枠で必ず22:01頃,凶行が行われるのだ。
と言うのも22:00は他のチャンネルに変えられる危険が大きく
「意地でも変えさせない」
工夫が必要とされ,本作に於いては
「美女の裸」と「猟奇殺人」で
チャンネルを変えられるのを阻止してるのだ。

イタリアに「ジャッロ」あらば日本には乱歩の「猟奇」あり。
血だら真っ赤の浴槽に沈む裸の美女の姿に
僕は大いに性癖を歪められたのだ。

黒水仙の美女(原作・暗黒星 1978年10月14日放送)
著名な彫刻家伊志田鉄造(岡田英次)の先妻の子待子(ジュディ・オング)から
伊志田家に夜な夜な跳梁跋扈する黒い影の話を聞いた明智(天知茂)は
屋敷に住み込んで調査を開始する。
だが明智は一切光を放たない暗黒星の様な黒い影の凶弾に倒れ入院。
邪魔者の居なくなった伊志田家で次々と凶行が繰り広げられる。
黒い影は軽業師の様に身軽で,その身から黒水仙の香水の匂いがする。
その香水は待子が好んで使う香りだった…。

キチガイ婆さん担当の原泉,ドラ息子担当の北公次,
入浴中に奇怪な仮面の殺人鬼に刺殺・惨殺され担当の泉じゅんも
素晴らしいが,江波杏子の存在感が取り分け素晴らしい。
それまで一切光を放たなかった暗黒星が初めて脚光を浴びるオチが最高。
原作を読み返したくなる出色の出来。

黄金仮面(1978年12月30日放送)
フランスで国宝級の美術品ばかり盗み"ルパンの再来"と呼ばれた怪盗が
日本にも現れる。
犯行予告を受けた石油王で古美術品収集家の大島喜三郎は警察に,
警察は明智(天知茂)に相談する。
だが予告された日に喜三郎の三女が惨殺される。
怪盗は殺人には手を染めぬ筈…明智は何者かの企みを感じる…。

明智小五郎vsルパンの夢の対決が堪能出来る一篇。
本シリーズのノルマとして入浴中の女性が
奇怪な仮面の殺人魔に刺殺・惨殺される場面を盛り込みつつ
神出鬼没の怪盗に翻弄される明智の苦戦を描く。
怪盗の情婦不二子役が由美かおるって設定より
「ルパンの情婦が不二子」って設定に悶絶するアニメファン!
大掛かりな箱根ロケを敢行しカーアクションに次ぐカーアクション,
ロープウェイでのヘリスタントと
猟奇趣味は最初にサクッとノルマをこなして
後は完璧娯楽に振り切った作り。
インチキ外人役にジェリー伊藤・山本リンダ,
やっぱり仕置きされる役に森次晃嗣!
今回から「美女シリーズ」のテーマ曲が流れます!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?