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アニメ「響け!ユーフォニアム」第3期第6話「ゆらぎのディゾナンス」レビュー「黄前の黒江に対する不快感の根源は…黒江の発言が実力でトランペットのソロパートの座を勝ち取った高坂の努力を愚弄してる様に聞こえる所から発するのだ。」

あがた祭りが終わり季節が夏へと移り変わり
吹奏楽コンクール京都府大会選出メンバーを決める
府大会向けオーディションが間近に迫り,
全体練習,パート練習にも熱が入る中,パート練習中に
部長の黄前は黒江の次の発言に激しい違和感を覚える。

黒江:やっぱりワタシ…。
(オーディションを)辞退した方がいいんじゃないかな…。
もし…ワタシが選ばれて「誰か」が外れることになったら…。
申し訳ないと言うか…。
北宇治でずっと吹いてきた人を押しのけて…。
ワタシが吹くのは申し訳ない…。

黄前が黒江に激しい違和感と…言い様のない嫌悪感を覚えるのは
この黒江の…。
「北宇治でずっと吹いてきた人を押しのけてワタシが吹くのは申し訳ない」
と言う考え方なのだ。

黄前の脳裏に「2年前の事」が甦る…。
高坂麗奈は3年間ずっと北宇治でトランペットを吹いてきた
中世古香織を押しのけてトランペットのソロパートの地位に就いた。
そして黄前は
「香織先輩より麗奈の方がいいって言う…言ってやるッ!」
と先輩を押しのけようとする高坂の背中を押したのだ。

その結果,中世古香織の
「ソロパートを絶対吹く!」という夢をブチ壊しにして…。
「香織先輩のソロが聴きたい」という
吉川優子の夢をもブチ壊しにして号泣させ…。

そうやって「ふたりの夢」を木端微塵に粉砕してまで
トランペットのソロパートを勝ち取った高坂の苦悩を…。
高坂の背中を押した黄前の思いを…。
黒江は「申し訳なくてワタシにはそんな事出来ないな」と抜かしたのだ。

黄前の黒江に対する不快感の根源は…。
黒江の言動が実力でトランペットのソロパートを勝ち取った
高坂の努力を愚弄してる様に聞こえる所から発するのだ。

黄前の心中に黒江に対する言い様のない嫌悪感が広がって行く…。

何も知らないオマエが!
知った風なクチを利くんじゃない!

実際にオーディションが開始されると
黄前の脳裏に「1年前の事」が甦る…。

久石奏が片八百長してワザとヘタクソに演奏してオーディションに落ち
当時の3年の中川夏紀にレギュラーの座を譲ろうとした出来事を…。

黄前にとって黒江の馬鹿野郎の物言いはムカツクが,
だからと言ってオーディションで手を抜かれて
レギュラーの座を譲られるのも業腹なのだ。

幸いにも黒江は手を抜かず

「そう来なくてはな黒江クン!」
「死ぬ程気合いが入って来たぜ…」

と黄前が滅茶苦茶燃え上がり
ユーフォのパートには黄前,黒江,久石の3人が選ばれ
ソリパートには黄前が選ばれ事無きを得た。

実力でソリパートの座を勝ち取らねば
中世古香織や吉川優子に申し訳が立たないのだ。

黄前の黒江への嫌悪感は…。
黄前が田中あすかから受け継いだ
あすかの元の父親の作曲した
「響け!ユーフォニアム」を演奏しているのを
黒江に知られた際の黄前の態度に顕著に顕れる。

「何故か(黒江には田中あすかとの経緯を)言いたくなかった…」
「「自分の事」を知られる事に抵抗があった…」
「特に…(黒江には)…」

ちょっとココで話を整理したいのだけど
黒江は黄前にとって
非常に癇に障る物言い・癇に障る考え方をする人物であるが
同時に非常に優秀なユーフォ奏者であって
「アンタはワタシの癇に障るからオーディションを辞退して欲しい」
とは口が裂けても言えない。
実力のある黒江を切って捨てたら
「北宇治吹奏楽部は確実に今より弱くなる」
からで第5話で高坂が主張した
「北宇治は完全な実力主義!」
に反する行動となる。
寧ろ黒江を御し得ない黄前の部長としての能力に問題がある訳で
「黒江」という内憂を抱えながら走り続け全国金を目指さねばならない。
「黄前個人の感情」と「部長として何を成すべきか」は
完全に独立させて考える必要があるのだ。
「私情」に引き摺られつつも勝つために
ムカツク相手と手を組む必要があるなら
「私情」を捨てる必要があるが…。
そんなのオトナだってよう出来ないよ…。

ムカつくものはムカつくんじゃい!

ここで黄前に思い出して欲しいのは高坂と吉川優子の関係である。
確かに高坂と吉川は
中世古香織のトランペットのソロパートの件で激しく対立し
吉川は高坂に
「香織先輩がソロパートを吹くのが見たい」
って夢をブチ壊しにされ号泣させられた。

しかし…中世古香織の公開処刑となった再オーディションの後に
高坂は中世古と吉川の元に行き
「ナマイキ言ってスミマセンでした」
と頭を下げ中世古・吉川と和解している。

全国大会で金が取れなかったとき
次期部長が内定していた吉川は高坂に
「高坂。来年は金を獲りに行くよ。」
と1年の高坂に助力を依頼している。

確かに吉川は中世古が絡むと判断がアレする欠点はあるが
「勝つためには後輩に頭を下げられる」
「勝つためにはかつて敵対した相手と手を組める」
非常に稀有な人間なのだ。

いま黄前が手本にすべき相手は実は前部長の吉川優子なのだ。

「たとえどれだけ個人的にムカつこうが黒江を切るのは最悪手」

だと黄前が吉川前部長の事を思い出し自分を納得させられるか。
吉川に出来た事が黄前には出来るのかが今後の焦点となって行くだろう。

さて,話変わって
オーディションの結果,2年の鈴木さつきが落ち,
吹奏楽初心者の1年の釜屋すずめが選ばれた事に対して
2年の鈴木美玲から黄前に直(ちょく)に
オーディションの結果に不服が申し立てられる。

美玲「ハッキリ言って…さつきが落ちる理由が分かりません…」
黄前「すずめちゃん…今年入った1年で…しかも初心者だもんね…」
美玲「はい…確かに釜屋(妹)さんは初心者にしては
いい音を出しているとは思います…」
美玲「ですが…さつきの方がうまいことは…
流石に揺るがない気がするんです…」
黄前「滝先生は常に全体を見て…
どうすればいい演奏になるかを考えてると思う…」
黄前「ワタシは…その判断を信ずるべきだと思う…」
美玲「分かりました…ですが…滝先生の指導を3年間受けて来た
3年生とは違って…1・2年生はそこまで滝先生を神格化してません…」
美玲「それは…覚えておいて欲しいんです…」

黄前「あのさ。自分の意見を言ってくれる後輩は凄く貴重なんだよ」

黄前は鈴木美玲の「直訴」を咀嚼して
滝にオーディション選考理由を問い質しに行く。

滝「釜屋(妹)さんは確かに拙いですが音量は素晴らしい」
滝「全体のバランスを考えると彼女の音は魅力的だと考えました」
滝「限られた人数で演奏を行う場合,音量は相当に重要です」

黄前「あの…えっと…滝先生は…
ワタシ達を全国に連れて行ってくれるんですよね…?」
滝「ワタシが連れて行くんじゃありません…皆さんの力で行くんです…」

あのさ。

滝の選考方針に対する不満・ひいては滝に対する「不満」が
一切陰口にならず部長の黄前に直訴され
黄前が直訴内容を咀嚼して
滝に選考方針を問い質せるようになるまで
北宇治吹奏楽部の風通しが良くなって透明化してるんだよね。

2年前の様にレギュラーメンバーに選ばれなかったものが
選ばれたものの陰口を言う空気が一掃されている。

それは…滝が赴任した当時からでは到底考えられない程…。
北宇治吹奏楽部が「良くなってる」んだよ…。

あのさあ!

1期は…2年前は…この…府大会向けオーディションの
選考結果を巡ってしっぬっほっどっ程揉めて!
再オーディションを実施する事態にまでもつれ込んだんだよ!

その…2年前には北宇治吹奏楽部の存続を揺るがすほど揉めた事柄が
今は部長への「不満」の直訴,部長からの顧問への質疑応答,
恐らく部長から部員へのフィードバックで一切揉め事なく解決してるんだよ!

恐らく…「滝からの回答」は鈴木美玲にフィードバックされ
鈴木美玲を通して「音量」が
オーディション突破の「鍵」だって「攻略法」だって
周知されてる筈なんだ。
その「攻略法」は
関西大会向けオーディション,全国大会向けオーディションに向けての
練習の課題となる筈だと描いて

「次の曲が始まるのです」

次回は京都府大会!

「ディゾナンス」とは「不協和音」のコト。
黄前にとっては黒江が不協和音の発信源であり
部員の不満もまた不協和音であり
部長は不協和音を抱えながら
部員を引っ張って行く「辛さ」が今回の主題となっている。

でもさ。

「後ろ向きな意見」が出て来ないのが
今の北宇治吹奏楽部の「良さ」だと思う。





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