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祝!「帰ってくれタローマン」円盤化決定記念レビュー「ありとあらゆる創作物は終わるべき時に終わるべきなんだ…だから「帰ってくれタローマン」」。

昨年(2022年7月)何も無い空間から突如出現し
悪魔の様な奇獣達と何の為かは皆目分からんが
ともかく戦って来た
岡本太郎の思想を体現する
芸術の巨人タローマンにも最期の時が近付いていた。
もう二度と再び立ち上がる事は出来ないのだろうか。
死んではいかん!
特撮ファンは未だ君を必要としているのだ。
頑張れ芸術の巨人!
タローマン生きるんだ!

全宇宙が待望していた「帰ってくれタローマン」が
遂に来年1月25日(僕の誕生日である!)に円盤化される事が決定致しました!

収録内容に関して分かる範囲で書きたいと思います。
この円盤には
1.タローマンヒストリア 10分(2022/12/3初放送)
2.おやすみタローマン 40分(2023/7/18初放送)
3.帰ってくれタローマン 29分(2023/8/15初放送)
計79分がメインコンテンツとして収録されている。

1.タローマンヒストリア
「タローマンヒストリア」は井浦新氏が
1972年に放送された特撮番組「タローマン」を語る番組である。
当時を語る証言者の名前が加古捏三(かこねつぞう)だったりと
ふざけているのは確かなのだが,
かいけつゾロリの様に真面目に不真面目を貫き通していて好感が持てる。
奇獣設定表などは「本物」が使われてるので
噓と本当の見分けが付かなくなるのがミソ。
「タローマン」に至る数々のパイロット版
「太陽仮面サンタワー」(1971年・等身大特撮・「仮面ライダー」と同期,
変身者の容貌は「アイアンキング」に影響を与える。),
「太郎侍」(1971年・時代劇・「桃太郎侍」に影響を与える。),
「重工業T」
(1971年・ロボットアニメ・「アストロガンガー」に影響を与える。)
の紹介は圧巻だ。
人気不振で打ち切られた「タローマン」の
前番組「大権威ガ・ダーン」(1971年・等身大特撮)の紹介もある。
海外への影響もさることながら映画監督の樋口真嗣氏の
「タローマンと奇獣・重工業がビルでチャンバラする場面を確かに見た」
との証言が重要で
「タローマンヒストリア」放送時にはスチル写真しか残っていないとされた「タローマンと奇獣・重工業がビルでチャンバラする」
第18話「捨てる主義のすすめ」のフィルムが奇跡的に発見され,
後述する「帰ってくれタローマン」の中で放送されている。
樋口少年の記憶は確かだったのだ。

なお「タローマンヒストリア」に於ける樋口監督のインタビューは
「抜粋」であり本商品には「完全版」が収録されている。

2.おやすみタローマン
深夜に放送された…何と言いますか…穏やかな音楽が流れる中,
タローマンが様々なセットの中,伸びやかにでたらめに
パフォーマンスを続ける無言劇である。
「話」はありません。
タローマンの「中の人」の身体能力と柔軟さと表現力を愛でる内容です。
微睡ながら観た悪夢として堪能出来ます。

3.帰ってくれタローマン
「タローマン」の秘蔵映像集である。
メインコンテンツは樋口監督の証言で
俄かに世間の関心を集めフィルムの発見に繋がった
「タローマン」第18話「捨てる主義のすすめ」と
映画「タローマン大統領」(シネマスコープサイズ)の2本。
「捨てる主義のすすめ」は
ロボット奇獣・重工業とタローマンの戦いを描いている。
重工業と一体化する五里博士は宇宙猿人だわ
ビルでチャンバラするわ見所満載だが,
「タローマン」が最も好調だった頃の作品らしく
普段に比べて「特撮に金がかかってる」のが目に見えて分かり
例えば飛行戦闘機パッションイーグル号の窓からタローマンと重工業が
取っ組み合ってる模様が合成されたり,
高津博士と風来坊が重工業に乗り移り,ハシゴを上る模様が
「上から」映され重工業に取り付く
ふたりと遥か下界の模様が巧みに合成されたりと,
非常に凝ったカメラアングルもそうだが
「予算」が特撮の出来と正の相関関係があるとは
必ずしも言えないもののノリにノッているスタッフにとって「予算」が
干天の慈雨である事は疑い様も無い。

この回で特筆すべきは
タローマンの行動と奇獣・重工業と一体化した五里博士の台詞
及び高津博士の解説だろう。
タローマンは奇獣・重工業(五里博士)との戦闘を放棄してしまうのだ。

五里博士「待てタローマン。もっと街を破壊しよう。未だ途中だろう。」
五里博士「おいタローマンこっちを向くんだ」

タローマンは「返事」の代わりに彼にビルを投げつける。
堪らず転倒する五里博士。

高津博士「(五里君)諦めるんだ。
ビルのぶつけ合いにタローマンは飽きてしまったのだよ。」
高津博士の解説に納得出来ない五里博士。

五里博士「んんん~待ってくれタローマン!」
「もっと気軽なお遊びでいいから続けよう!」
タローマンの腕に縋りついて哀願を始める五里博士。
タローマンにとって遊びは真剣に取り組むべきもの。

「飽きてしまった遊び」に真剣に取り組めない事は勿論
「気軽に」遊ぶ事など元より論外。

五里博士はタローマンの逆鱗に無造作に触れたのだ。
五里博士を爆殺して絵の具に変えるタローマン。

もうね。
「タローマン」をこれ以上続ける事に藤井亮監督は飽きてしまったのだよ。
「もっと続けようよ。
ちょっとくらい作品のクオリティが下がってもいいからさあ。」
と必死に縋る五里博士はタローマンファンそのものなのだ。
藤井監督はタローマンファンを爆殺してクオリティの低下を阻止したのだ。

ありとあらゆる創作物は語るべき事を語り終えたら終わるべきなんだ。
僕達特撮ファンはさあ
終わるべきときに終われなかった
「可哀想な作品」を掃いて捨てる程見て来たじゃないか。
無理矢理生命維持装置を装着させれらて
「死なせて貰えない作品」を数限りなく見て来たじゃないか。
「タローマン」は「今」が終わるべき時なんだ。
ファンから惜しまれつつ見送って貰えるのは「今」しかないんだよ。

映画「タローマン大統領」は
タローマンファンの皆に向けた心を込めた別れの言葉である。
今まで出て来た奇獣・未見の奇獣が島で暮らしている
「南海の大決闘」であり
奇獣達がフキダシで喋るところは「ゴジラ対ガイガン」。
「タローマン」が意図的に子供向けになって
「こんなのタローマンじゃない」って作りにしてる。
それは「こんなのゴジラじゃない」って
当時の怪獣少年達の心の叫びのパロディになってるんだ。
つまり子供は大人が考える「子供向け怪獣映画」を
どう思ってるのかを映画化してるんだよ。

それでもね。
テレビ放送時には実現出来なかった
タローマンと奇獣・こどもの樹との
ドリームマッチが実現したのは嬉しかった。
それも第25話「なま身の自分に賭ける」で
奇獣・午後の日が立体ホログラム映像で提示した
「こどもの樹」はカッコ良かったのに
実際の「こどもの樹」は着ぐるみで二足歩行になってて
子供心に「コレジャナイ感」を味わった
特撮少年の落胆まで再現してるのである。

最期に奇獣達と島と共に海中に没して行くタローマン。

これでいいのである。

アレやコレみたく
♪我らでたらめ8兄弟♪
とか歌う展開にしなくていい。
ソレはキャラブレだから。
オリジナリティを尊ぶタローマンは
7人の兄弟を爆殺してこそタローマンなんだから。

特典映像の中に歌謡番組に登場したタローマンが無いのは残念だけど,
実在する歌手を出す訳にはイカンからね。

特典映像の「お知らせの窓辺(約20分)」は
CBG(地球防衛軍)メンバーによるNHKプラスの宣伝ですね。
「タローマン」は1972年って設定なのに
スマホとかアプリとかダウンロードとか
「現代の言葉」が頻出して興醒めですね。

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