見出し画像

キボウノチカラ オトナプリキュア'23第1話「ミライノカタチ」レビュー「「30歳になっても夢や希望を捨てないでいい」「アニメを観るのを止めないでいい」と国営放送が布教する前代未聞のアニメです。」

2007年にテレ朝系で放送された「Yes!プリキュア5」から16年。
同作の「続編」がNHKで制作される事が発表されたとき,
エヴァがNHKで放送された事を根に持つ方が
「NHKにプリキュアが盗られた」
とSNSで大騒ぎしていましたが,僕はそう思いません。
その方は恐らく東京か大阪の周辺にお住まいなのでしょう。
だから
「テレ朝(民放)でプリキュアが放送される事は当たり前」
と思い込まれてる。
ちっとも「当たり前」じゃありません。
地方ではNHKと民放1局なんて事はザラで,
そのたったひとつの民放で「プリキュア」が放送されるか否かは
熾烈な競争があって,競争に負けたなら,
そもそもその地域では「プリキュア」は放送すらされない。

しかし如何なる地域であってもNHKなら映る。
つまりこの「オトナプリキュア」は
初めて全国で放送される「プリキュア」なんです。
「プリキュア」の全国区進出を素直に喜べない人を気の毒に思います。

2023年10月7日にEテレで「オトナプリキュア」の第1話が放送されました。
「Yes!プリキュア5」から16年が経過して,当時中学2年生(14歳)だった
夢原のぞみも今や30歳となり,夢を叶えて私立の小学校の教師になってます。
のぞみは生徒達に環境問題の授業をしてるのが
今日的であり「プリキュア」的でもあります。
しかし生徒の
「ダンスで全国大会に出場して優勝したい」
って夢が潰えようとしています。
生徒の父親の仕事が行き詰まり,両親は離婚,
生徒が九州に引っ越す事となり引っ越し先にはダンス部がない。
例えのぞみにプリキュアへの変身能力があったとしても,
生徒の父親の仕事の行き詰まりは打開出来ないし,
両親の離婚も止められない。
上長からは
「ひとりの生徒に入れ込み贔屓するのは止めろ」
と注意される有様。
「プリキュア」で
シングルファーザー,シングルマザーの話は度々ありましたが,
ここまで「家庭の危機」を描写した事は無かった。
オトナになってもプリキュアになっても
「どうしようもない」事の方が多い。
のぞみに出来る事は「生徒の為に泣いてあげる事」「励ます事」位。
挙句逆に生徒の方から励まされる有様。
のぞみが居酒屋で夏木りんと酒を飲んで愚痴を零していると
かつての仲間と偶然再会する…第1話はここまで。

「オトナプリキュア」は公式の「プリキュア」がやりたくてもやれない事,
言いたくても言えない事に切り込んで行く作風と受け取りました。

先ず「玩具や菓子の販促のCMが一切無い」のが有難いですね。
本当にね。CMは大きなお友達にはノイズでしかないのよ。
次は作画。本家「プリキュア」は録画データを一時停止すると
画面がギザギザになるのですが
「オトナプリキュア」は「それ」が一切ない。
そもそも当時より作画技術が向上してます。
声優さんは当時のキャストが引き継がれてます。
本家プリキュアはCMで販促しないといけない,
毎回変身バンクを入れないといけない,夢と希望を壊してはいけない等々,
「縛り」が多いのですが,
「オトナプリキュア」はそうした「縛り」から自由なのがいいですね。
今の所「オトナプリキュア」でプリキュアに変身するのかは不明ですが
「変身バンク」のノルマから解放されてるといいですね。
コドモの方がノルマが多く,オトナの方がノルマから自由なのは皮肉ですね。
現実は「逆」なのにね。

隠しテーマとして
「30歳になっても夢や希望を捨てなくていい」
「30歳になってもトキメいていい」
があると思います。

近藤るるる先生の「アリョーシャ!」って漫画で
飛び級でFBIの捜査官になったケイティというキャラが
日本にやって来るのですが
彼女が日本に来た表向きの理由はアリョーシャの内偵なのですが
真の理由を彼女自身が次の様に語る場面があります。

「日本人のキャラクターに対する愛情は世界一だわっ」
「街の至る所に可愛いキャラがいっぱい!」
「街行く大人が普通に漫画を読んでゲームをして!」
「テレビでは週に70本新作アニメ放送して!」
「こんなCOOLな国,世界の何処にも存在しないわっ!」
「私ずっと日本に来たくて,ようやく来ることが出来たの!」
「チョー幸せっ!」

「オトナプリキュア」が国営放送が作った
30歳以上向けのアニメで
「幾つになってもアニメを観る」
「アニメを観る事を国営放送が推奨する」
日本人でなければ考えられん事態なのです。
YouTubeを観ると日本で暮らす事を希望する外国の方の多くが
日本のアニメを観て日本の事を勉強された方が多いのです。

30歳以上向けの「プリキュア」が作られ
全国津々浦々で放送された事を僕は誇りたい気持ちなのです。

第2話のレビューが掲載されました。
良かったら読んでみて下さい。


この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?