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映画「バトルシップ」レビュー「圧倒的確信」。

本作品の冒頭で主人公の青年アレックスが
バーで一目惚れした女がチキンブリトーを所望していることを聞くや
バーから飛び出して,たった今閉店したばかりのスーパーでチキンブリトーを盗むために店内に不法侵入する場面で何故か「ピンクパンサー」のテーマが流れ始め,たちまち現場に駆け付けた警官たちの制止命令を無視し彼女に
チキンブリトーを手渡したところでお縄となり身柄を確保され
米国海軍中佐である兄のストーンは弟の身元引受人となるも
不甲斐ない弟の不行跡に堪りかね
「お前も俺と同じく米国海軍に入れ,これは命令だ!」
と叫んだ直後に本作品のメインタイトルがバーンと出て
僕は,と言えば部屋の畳の上で笑い転げながら
本作品に魂を鷲掴みにされた次第です。

いや最高ですね,この映画!

まず米国海軍がアレックスの様な人間を受け入れてくれたことに驚きましたがよくよく思い返してみれば僕が学生の頃,池袋西口公園で
ブランコに座って「たい焼き」を食べていると
ひとりのオッサンが近づいてきて
「あんちゃん,いい体してるね,暇そうだね,だったら自衛隊に入らない?」
と勧誘されあゆの様に「うぐぅ」と答えたたので
米国海軍だけではなく本邦の自衛隊も人手不足で
単に「活きのよさそうな若者」であれば何ら問題はないのかもしれません。

アレックスは数年の間に米国海軍大尉にまで出世しており
「チキンブリトーを所望した女」ことサマンサは父親が米国海軍大将であり尚且つ彼女は彼と交際までしていて米国海軍に入るとどんなにロクデナシのボンクラでも立身出世は勿論素敵な恋人までできるのかと
驚きを隠せません。

本作品の粗筋は地球から地球とよく似た環境の惑星に向かって送信された
電波に反応したと思われる5隻の異星人の宇宙船が地球にやって来て
ハワイで合同軍事演習を行っていた参加各国と遭遇し
異星人の未知のテクノロジーによるバリアーが展開され
バリアーの内と外ではレーダー無線・携帯、ネット等による
一切の連絡手段,及び一切の物流が遮断されてしまいます。
更にこの異星人たちが地球を訪れた目的も分かりません。

バリアー内部に「取り残された」艦隊の中にはストーンとアレックス
そして本邦の自衛隊の艦隊がいて異星人の宇宙船と対峙する訳なのですが
異星人たちはこちら側から攻撃すると攻撃した相手に対し
激しい反撃はするものの何らかの「敵意」を示さなければ何もしないというまるでプレデターのような「独自の掟」が存在しバリアーを解除するには
バリアー内部のバリアー発生装置の破壊が絶対に必要なのですが
破壊工作を行おうとするとたちまち異星人たちの「独自の掟」が
作動してしまいうかつに手が出せません。
では一体どうすればいいのでしょうか…?

本作品は冒頭場面こそアレですが視聴を続けていると
だんだんアレックスに感情移入してゆくのだから不思議です。
またアレックスは余りにも偉大な兄に対して引け目を感じているのですが
その「偉大な兄」に関するある出来事を境に
次第に1人前の男へと変わってゆく模様が決して嫌味にならない程度に
ごく自然に描写されていて…グッときました…!

本作品の最大の「見せ場」は本作品のクライマックスなので
ここに書くわけには行きませんが
第二次大戦における歴戦の兵揃いの退役軍人の爺さんたちにも
「見せ場」が用意されておりただただ熱い涙が流れるばかりです。
(後にこの「退役軍人の爺さんたち」は俳優ではなく
本物の退役軍人の方々であることを知り大変驚きました。)

本作品は制作費2億ドル以上に対し興行収入が6千5百万ドルという惨憺たる結果に終わったばかりか第33回ゴールデンラズベリー賞(最低映画賞)で
実に6部門にノミネートされ批評家たちにも散々酷評されました。

でもそんなことはどうでもいいんです。

僕の父は生前海上自衛官でした。
母の話によると僕が母のお腹にいるとき当然性交渉出来ない訳ですが,
家に女を引っ張り込んで致していたのを目撃したと言っていたので
有体に言って父は「ロクデナシ」だと思います。
でもね。海上自衛官も米国海軍も「ロクデナシの集まり」なんです。
そのロクデナシの父が生きていて父子ふたりで本作品を視聴したなら
アレックスのロクデナシぶりに笑いながら彼の成長にふたりで泣きながら
本作品を視聴した感想を述べ合っていたでしょう。
この「圧倒的確信」こそが僕にとっての一大事でありその他の出来事は

「心底どうでもいいんです」。

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