オタクが念願だった真風の“風”を浴びた話
みなさん。突然ですが、真風の“風”、浴びたことありますか?
この質問に「はい」と答えられる人が、一体どれだけこの世にいるのだろう。
ちなみに真風の“風”とは、南風でもなんでもなく、宝塚歌劇団宙組トップスター真風涼帆氏(スズホマカゼ)が起こす風のことである。
初めてアナスタシアを観劇したあの日、銀橋から舞台に戻る瞬間にその背負った大羽根をグワンッと回す姿を目の当たりにしてふと思った。
「あの大羽根が起こす風を浴びることができたらどれだけ幸せなのだろう」
あの大羽根の動き、アレは絶対に多少なりとも風が起きているはず。
宝塚にハマってからというもの、個性溢れる各トップスターの大羽根使いをたくさん見てきたが、やはりスズホマカゼの大羽根使いが一番風が起きている気がする。
それからというもの、自分はことあるごとにTwitterで「死ぬ前に一度でいいからスズホマカゼが大羽根で起こす風を浴びないと死んでも成仏できない」と繰り返し呟くようになった。
しかし、この真風の“風”、そう簡単に浴びられるものではない。
真風の“風”を浴びられるとしたらきっとこの赤丸で囲ったエリアに限られる。
しかも今は感染症対策によって1列目&花道沿いは潰されているから、実質最前列と呼ばれる2~3列目の本当に限られた座席に座る必要があるだろう。
いや、ムリ。
ムリムリムリムリムリムリムリムリ!!
そもそも激戦であるチケット争奪戦を勝ち取る必要があるというのに、そんなピンポイントエリアを狙うだなんてほぼ無理ゲーに決まっている。
というわけで「いつかスズホマカゼが大羽根で起こす風を浴びてぇ…」と願いつつも、心の中ではまあ無理だろうと諦めていた。
しかし、だがしかし。
真風の“風”を浴びることができるかもしれない公演が存在した。
そう、それは何を隠そう先日大千秋楽を迎えた「NEVER SAY GOODBYE」
我がご贔屓スズホマカゼを始めとする92期の初舞台公演でもあり、伝説として語り継がれるトップコンビの退団公演でもある作品の再演。
奇しくも公演関係者から陽性者が出てしまい大劇場初日が3週間遅れてしまったネバセイ。初めて自力で手にしたe+貸切公演のSS席や他にもたくさんのチケットを失ってしまった結果、絶望して失ったチケットで番町皿屋敷ごっこをするところだった。
「消えたチケットがいちまーい……にまーい……さんまーい……」じゃないんですよ。ええ。
そしてようやく迎えた大劇場初日。幸運にも手に入れたチケットを手に新幹線で宝塚へと向かった自分。
自らが初舞台で立った公演で、主役となって再演の舞台を踏むスズホマカゼが演じるジョルジュは本当に輝いていて眩しかったし、コーラスの宙組の名に恥じない力強いコーラスには感動で身震いした。
スペイン内戦をテーマにしているだけあって、民衆が銃を持って戦う姿はどうにもニュースで目にする戦争が過ってしまう。
戦争は悪である。そう強く考えさせられる作品だった。今この時代だからこそ、この作品を観ることができて本当に良かった。Twitterにも書き込もう、そう思った。
……のもつかの間、初観劇を終えた自分がすぐにTwitterに書き込んだのはフィナーレのことだった。
いや、、、ネバセイのフィナーレヤバいでしょ。。。
浄化される芹香斗亜氏(キキちゃん)の歌唱指導に始まり、下級生によるSo Cuteなロケット。スズホマカゼ率いる男役群舞……ここまではまだ良かった。
大階段の上からキキちゃんが激ツヨスパニッシュな娘役を引き連れて降りてきて、なんやかんやあってスズホマカゼが舞台上でお得意なお着替えしたと思ったら闘牛士のマント(ムレータ)を手にしてスポットライトを浴びたところからもう大変。
ムレータを手にものすごいスピードかつ一糸乱れぬ動きで大階段を降りてくる宙男たち。
手に持ったムレータをキキちゃんに投げ渡すスズホマカゼ。
ムレータを手に舞ったかと思ったら、黒服に身を包んだ娘役を牛に見立てて闘牛しだす宙男たち。
もう脳内はパニック。なんだこれ、なんだこれ、考えた人天才か????
そうこうしている内に、ムレータを手に一人銀橋を渡りだすスズホマカゼ。
このときの自分「おいおい嘘だろ……」いやいや、そんなまさかね。
とかそうこうしてたら、、、
「…ハッ!」という掛け声とともに銀橋のど真ん中でムレータを回し始めるスズホマカゼ。
そしてその後に続いてムレータを回す舞台上の宙男たち。
は……?
は~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?!
こんなんカッコいいに決まってんじゃんバカッ!!!!!!!
ムレータ回し終わって「…アァァァァァイ!!!!」って叫ぶスズホマカゼは本当に漢でした……ありがとうございました。
その後も潤花氏(かのちゃん)とのデュエットダンスは激ツヨで、ラストの銀橋での決めポーズは正直何が起こったのか分からず終始圧倒されて放心状態で終わったのであった。
銀橋で一人ムレータをぶん回すスズホマカゼの姿が残像として脳裏に残しながら帰路に着いているとき、ふと気が付いた。
「アレ?もしかして自分、大羽根が起こす風は無理でも真風の“風”を浴びることができるのでは??」
実は、この初日の少し前。宝塚友の会で東京公演のSS席を当てていた。
宝塚友の会に入会してから約1年、ようやく当選したSS席。金の力を使ったわけでもなく、自力で。それも贔屓組でのSS席。
もしかしたら、失ってしまったe+貸切公演のSS席が戻ってきてくれたのかもしれない。
すぐに座席を確認してみた。実質最前列ではないが、だいぶ前方だしそれもほぼセンター付近。
これは……もしかして……。思わずゴクリと喉を鳴らす。もしかしたらワンチャン浴びることができるかもしれない、真風の“風”を…!
というわけでだいぶ前置きが長くなってしまいましたが、多分きっとおそらく自分は念願だった真風の“風”を浴びることができたのでここに記録を残します。浴びれた人も浴びれなかった人も、この役に立たない記録を読んでなんとなく想像したり思い出してみてください。
真風の“風”を浴びた話
無事に予定通り東京公演の初日を迎え、以降週に3~4回東京宝塚劇場に通い続けて何週間か経ったころ。ついにSS席に座る日がやってきた。
正直、この日を無事に迎えるまで中止にならないかとても怖かった。なぜなら1年前のホテル・スヴィッツラ・ハウスでは最前ドセンのチケットが、ムラではe+貸切公演のSS席が消えた。
もしかしたら自分は良席を手に入れると公演が中止になる呪いを受けているのかもしれないと本気で考えてしまうこともあった。
でも、この日を無事に迎えられることができた。
しかも、なんとこの日は奇しくも宝塚友の会貸切公演の日。終演後のご挨拶まで付いているなんてウルトラハッピーセットである。
SS席に座るのは別にこれが初めてじゃない。前作大劇場公演のホームズでは金の力で夢組貸切SS席を手にしたりもしたし、月組公演ではタカホSSプランを使ったものである。
オペラなしの肉眼で見られるが、だいたいSS席の中でも後ろだったりだいぶ端の席だったのだ。
それがなんと今回はほぼ前方&センター付近。
当然だが銀橋が近い。いや、銀橋近……。
発売されたばかりのアクリルカードを使って「銀橋、近いね」と言ってくる贔屓を撮ってみがマジで近い。
これはやはりもしかしたらきっとワンチャンあるかもしれない。
公演が始まった。やはりSS席から見るスズホマカゼはカッコよくて美しくて足が長かった……。銀橋を渡ると本当にとんでもない近さ。
こんなに近いのに肌がツヤツヤ……目の前で立ち止まって歌われてしまったらもうもうもう……
ホントにホントにホントにご贔屓だ~♪近すぎちゃってどうしよ!?
とかココロの中でつい口ずさんでしまう。
宙組のコーラスも真正面から全身で浴びて気付いたら一幕目が終わっていた。
続いて始まる二幕目。オペラグラスを使わないで全体が見られるからこそ、初めての気付きもたくさんあったりした。
そして遂に、フィナーレが始まった。。。
ところで自分、ムレータを回すスズホマカゼの後ろ宙男たちがムレータを回す光景が本当に大好き。
後方の席だとだいたいいつもはスズホマカゼ一点集中!とばかりにオペラで見詰めているが、全体が見られる席のときはオペラを使わずに眺めていた。
SS席だし、後ろも見られるだろうな。そのときが来るまではそう思っていた。
しかし、いざその場面が訪れた瞬間、そんな考えは甘かったと思い知らされる。
スズホマカゼがムレータを手に銀橋を渡り始め、目の前で構えた。
いや、マジで近ぇ……もう目の前じゃん。え??爆イケなスズホマカゼが目の前にいるよ??
そして「ハッ!」という掛け声とともにスズホマカゼが全身を使ってムレータを回し始めた。
一人だけムレータの大きさが違うのは知っていたけど、ムレータでけぇ。
そして気が付いた。
いや、これ……スズホマカゼの後ろを見ることなんてできるわけがねえ。
「オレを見ろ!」とばかりの気迫で目の前で額に汗を滲ませながらムレータをぶん回すスズホマカゼ。後ろを眺める余裕なんて決して与えはしないその気迫。思わず圧倒されてマスクの下でお口全開。
わ、わ、わぁ~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!
……って感じでアホ丸出しになってしまう。
そうして気が付く。なんとなく前方から来る風を感じた。
も……もしかしてこれが、真風の“風”……!?
もしかしたら気のせいかもしれない。けれども、確かに言えることが一つだけある。
あの瞬間、あの銀橋のど真ん中でスズホマカゼはあの場の空気を動かしていた。
空気の流れがごごごごと渦巻くような感覚。それを感じた瞬間圧倒されてしまい、その後の漢スズホマカゼの姿をあまり覚えていない。
多分、いつものように男らしくて手に持っていたムレータをどこかに投げ飛ばすんじゃないかという勢いだったと思う。多分。
パレードでは大羽根を背負って目の前に。目の前で見ると本当に神々しい存在なのだなと改めて実感させられる。大羽根が起こす風を感じることはできなかったが、大羽根の圧は十分感じられた。
というわけで、SS席で浴びた真風の“風”は本当に一瞬だった。
はぁ……いや、すごかったな真風の“風”。あれが真風の“風”かぁ……とか放心してたら一度下りた幕が再び上がった。
そういえばそうでした。この公演は友の会貸切だった。
舞台の中心には貸切公演のご挨拶恒例、スズホマカゼが大羽根を背負ってちょこんと立っていた。
「みなさま、本日は宝塚友の会貸切公演をご観劇いただきありがとうございました!宙組の真風涼帆でございます!」
そしてご挨拶を終えて幕が再び下り始めるとお手振りをしてくれるのだが、幕で顔が隠れる寸前で急に両手お手振り&お顔をコテンと傾けてきたスズホマカゼを目にした自分はここで遂に壊れた。
「イヒヒ……イヒヒ……イヒヒ……イヒヒ……イヒヒ……イヒヒ……」
贔屓が起こす風を浴びた直後に素の姿を目にしてしまうと人は壊れるんだということを知った。
それまで爆イケスズホマカゼだったのがあの瞬間だけ急にゆりかちゃんになったせいなのだが、これはさすがに自分で自分に引いた。
無事、真風の“風”を浴びることができたので死んでも無事に成仏できそうです。
でもこの次はLDHプロデュースのリサイタルにHIGH&LOWが待ち構えているのでこれからも全力で追いかけて、あわよくばスズホマカゼの大羽根が起こす風も浴びたいです。がんばります。
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