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ストラスブール美術館展

宮城県美術館「ストラスブール美術館展」にいってきました(2019年10月30日)。ポスターをみるかぎり、モネとかシスレーとかマリー・ローランサンなどの絵がでているので、フランス印象派など日本人に大人気の絵がならんでいる、よくあるタイプの美術展かとイメージしていたのですが、よくも悪くも事前の予想とはだいぶちがいました。期待していったのにがっかりしたひともなかにはいたかもしれません。

アンチアカデミーのバルビゾン派からはじまって、印象派、後期印象派、エコール・ド・パリ、ナビ派、そしてモダニズムの系譜、すなわちフォーヴ、キュビズム、ダダ、シュールレアリズム、抽象表現主義といった、19世紀末から戦前までのフランス絵画史のお勉強会でした。コロー、ミレー、セザンヌ、ピカソ、ゴーギャン、ローランサンといった有名どころも一点ずつならんでいますが、小品とかエッチングばかりでした。ほんとうにいいものはモネとシスレーのものくらいだったでしょうか。

それでも単なる美術史の教科書に堕していないのは、ストラスブールという地域性が濃厚に感じられるところでした。正直いって半数以上ははじめて聞く名前でした。というのもアルザス地方で活躍した画家が多かったからです。だからたとえば印象派といってもフランスのある地方で活躍した画家、そういったコレクションが中心といってもいいようです。

ストラスブールといえばドーデ「最後の授業」の舞台ですね。普仏戦争で敗れてアルザス・ロレーヌ地方がプロシアに割譲されることになり、小学校で最後のフランス語の授業がおこなわれるというお話でした。実際には、アルザスで使われていることばはフランス語ではなく、ドイツ語の一方言(アルザス語)であり、民族的にはドイツ人といってもいいらしいのです。このあたりは戦争のたびにドイツ領になったり、フランス領になったりしているところです。

ストラスブール美術館のコレクションも、画家の名前がドイツ人っぽかったり、20世紀の絵画のいくつかがまさにドイツ表現主義であったり、パリ中心のフランス絵画とは微妙な差異が感じられました。マルクーシという名前の画家の作品がいくつかありましたが、「マルクーシ」はドイツ語ではおそらく「マルクス」ですね。

宮城県美術館に地元ゆかりの作品があるように、ストラスブール美術館にもアルザス地方の画家のコレクションがある。そしてそれはフランスの美術のなかでもやや異彩の光を放っている。こういったことは美術展の公式目録にはあまりふれられていなかったけれど、わたしにはとてもおもしろい美術展だったです。


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