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切迫早産の国内のガイドライン

切迫早産にたいするベッド上安静や子宮収縮抑制剤の長期持続点滴にはエビデンス(科学的根拠)がありませんが,国内ではなぜかそれがふつうにおこなわれます.日本のガイドラインではそれを「推奨してないが禁止もしていない」.医療の現実となんとか折り合いをつけようと苦慮するあとがうかがわれます.

米国産婦人科学会は,母体死亡のリスクのおそれから長期持続点滴をすでに禁止しましたし,血栓や廃用症候群のため,いかなる理由でもベッド上安静にしてはいけないとの声明をだしています.日本のガイドラインも以前の推奨の記述はさすがになくなりましたが,禁止や禁忌とまでは踏み込めないでいます.

わたしもガイドライン作成委員の経験があるので,内部事情はある程度想像つきます.ガイドラインはエビデンスに即してつくられますが,医療の現状を無視してドラスティックに変革するまではしません.一方,現場の医師はガイドラインで禁止されないかぎり従来の方法でといいます.すなわち国内ではその段階で変革が頓挫しているのです.

"Why do doctors use treatment that do not work?"という2004年のBMJの論文に,世界中で無効だけでなく有害でさえある治療が医師によって行われており,その8つの理由があげられています.臨床的な経験,代替アウトカム,疾病の自然経過,病態生理モデルへの誤った愛着,儀式や秘儀,なにかをしなければならないという必要性,だれも疑義をはさまない,患者の希望,の8つです.

切迫早産においてはそのすべてが関係していますが,臨床的な経験,疾病の自然経過,病態モデルへの誤った愛着,なにかをしなければならないという必要性,だれも疑義をはさまない,あたりが関係していそうですね.

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