心不全患者の至適HRを左房の効率性から考えてみる:ESC Heart Fail. 2020 Oct;7 (5):3231-3234.

How to consider target heart rate in patients with systolic heart failure

Toshihide Izumida, et al.

ESC Heart Fail. 2020 Oct;7 (5):3231-3234.


要旨

要約
この研究論文は収縮期心不全患者における心拍数を減少させる薬であるアイバブラジンの使用について検討したものである。この研究の目的は、脈波透過流ドップラー心エコーにおけるE波とA波の重なりを調べることにより、個人の理想的な目標心拍数を決定することである。研究者らは368人の患者を対象に経胸壁心エコー検査を行い、E波とA波の重なりがゼロとなる点を理想的な心拍数と仮定し、減速時間から理想的な心拍数を推定する式を開発した。まず、推定オーバーラップ長(ms)=-589+6.2×心拍数(bpm)+0.81×減速時間(ms)という式で算出できることを確認した。この計算式を用いるおと、E波とA波の重なりがゼロとなる理想的な心拍数は、理想心拍数(bpm)=93-0.13×減速時間(ms)という式で算出できる。この論文は、この式が収縮期心不全患者の心拍数最適化の指針となることを示唆している。

既存の研究との関連性
本研究は、心不全患者における理想的な心拍数を算出するための具体的な方法を提供することにより、既存の研究に追加するものであり、個別化された治療計画を強化する可能性がある。
心拍数の減少が心機能や心拍出量に及ぼす影響、収縮期血圧や左室充満との関連については、これまでの知見(J-SHIFT試験など)を基盤としている。
心拍数の最適化に心エコーパラメータを用いるというこの研究のアプローチは、心不全管理、特にivabradine治療の文脈における重要な進歩になりうる。そして、心拍数と左室充満との関係を考慮したものであり,血行動態を維持するためにも極めて重要である。


Abstract

目的
洞房結節の電流を選択的に阻害するイバブラジンを用いた心拍数減少療法は収縮期心不全(EF<40%, HR<75/min)で広く用いられている。しかし,心拍数の最適な目標値についてはまだ議論の余地がある。心拍数とpulse waveドップラー心エコーにおけるE波とA波の "オーバーラップ "との関連は、各個人における理想的な心拍数を見つける鍵となるかもしれない。

方法と結果
収縮期心不全患者を対象に経胸壁心エコーを行い、心拍数、減速時間、E波とA波のオーバーラップ長との関連を評価した。合計368人の収縮期心不全患者(中央値76歳、男性190人、駆出率中央値40%)が対象となった。測定されたオーバーラップ長は35(-72, 115)msであった。重回帰分析の結果、推定オーバーラップ長(ms)=-589+6.2×心拍数(bpm)+0.81×減速時間(ms)という式が成り立ち、実測値とよく一致した(r=0.62)。オーバーラップ長が "ゼロ "となり、おそらく心拍出量が最大となる理想的な心拍数は、以下のように計算される:理想心拍数(bpm)=93-0.13×減速時間(ms)。

結論
収縮期心不全患者において、E波とA波の重なりをゼロにする理想心拍数を、減速時間を用いて推定する新しい式を提案した。この式による心拍数の最適化が予後に及ぼす影響について検討する必要がある。


主要関連論文

  1. "Effect of Ivabradine on Cardiovascular Outcomes in Patients with Stable Coronary Artery Disease and Left Ventricular Systolic Dysfunction: Rationale and Design of the SIGNIFY Study" by Tardif JC et al. (2014) - This study laid the foundation for investigating the use of ivabradine in patients with heart disease.

  2. "Heart Rate as a Therapeutic Target in Heart Failure: A Scientific Statement from the American Heart Association, the American College of Cardiology, and the Heart Rhythm Society" by Yancy CW et al. (2011) - This paper discusses the significance of heart rate management in heart failure.

  3. "The Effect of Heart Rate Reduction with Ivabradine on Renal Function in Patients with Chronic Heart Failure: A Subanalysis of SHIFT" by Rossignol P et al. (2015) - This paper explores the impact of ivabradine-induced heart rate reduction on renal function, a relevant aspect of heart failure management.

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