インスタントカメラ〈チェキ〉を買った

 最近、コロナ禍で旅行にも気軽に行けない中、自分の中で「何かを始めなければ…」という気持ちが強くなり、以前から気になっていた「チェキ instax SQUARE SQ6」を購入した。

 もともとミラーレス一眼の「eos M2」を持っていたが、ここ数年ろくに触っておらず、去年に兄が「新しく買った車の写真撮りたいからカメラを貸してほしい」と言うので貸してそのままになっている。

 「eos M2」を買ったのは、大学卒業前だった。十数万のカメラを買う踏ん切りが、この時にやっと着いたのだ。そして、どこへ行くにもこのカメラを持っていろいろなところへ出かけた。だが、地元に帰ったり転職したりしているうちに触らなくなった。転職した先がそれなりの激務部署だったからというのも一因だが、身も蓋もないことを言うと、面倒くさくなったのだ。買った当時から数年は京都に住んでいたから、特に自分が構図を考えなくても神社仏閣やレトロな路地、不思議な建物など、撮った写真が美しく見える被写体がたくさんあった。それを撮って、「わあいい感じに撮れた」と自己満足するだけだったし、加えて自分はとてつもなく不精なのでそれらをプリントするのが面倒でSDカードに写真データが溜まる一方だったし、そしてなにより、旅行に行くにしても、重たい一眼レフを持っていくより、スマホを一つ持って行ってカメラのアプリで撮れば十分じゃないか?と考えが変わっていった。本当に身も蓋もない話である。ほったらかしにされていた中で兄が「貸してほしい」と言ったのは、私にとっても、この「eos M2」にとっても僥倖だっただろう。

 そして、そんな私がなぜインスタントカメラ「チェキ instax SQUARE SQ6」を買ったのかというと、冒頭に書いた「何かを始めなければ」という気持ちに加え、私くらいの年代だと微妙に掠ってるけど自分自身ではあまり触ったことのない「フィルムカメラ」というものへの憧れがあったからだ。加えて撮ったらすぐ写真が現像されるというところがとても良い。プリントする作業をしなくても済む。

 チェキの歴史は意外と古く、初代機は1998年に出ている。それから現在に至るまで、スマホに対応した機種や、デジカメのように撮った写真を一回大きな画面で確認してから印刷する機能がついた機種など、様々なニーズに応じたチェキが出ている。撮ってすぐ写真が現像される写真機と言えば「ポロライド」が思い浮かぶが、この「ポラロイド」の会社は2000年初めの頃に倒産しているらしい。あまり詳しくは調べてないが、カメラケータイなどが生まれたこの時期は、インスタントカメラ業界の過渡期だったのだろうか。実を言うと、「撮ったらすぐに写真が現像されるカメラ」で最初に思い描いたのはポラロイドだった。映画か何かで見たのだと思うが、かっこいい!と思っていた。だが、いろんなサイトを見てみると、「もう生産されてないし、故障したら直せるところがない」「フィルムが高い」と書かれていたので、おとなしく今もなお新機種が出され続けている「チェキ」を買うことにした。チェキのフィルムは決して安いというわけではないが、ポラロイドのフィルムよりはだいぶんお手頃価格だ。

そして今、近所のそこらへんを散歩するのにも「チェキ」を持って行っているわけだが、なかなか楽しい。スマートフォンのカメラの画面やミラーレス一眼の液晶モニターのようなものはついていないので、ファインダーを覗いて、撮りたい物を直接自分の目で確認する。シャッターを押すと、白いフィルムが一枚、ゆっくりと上部から出てくる。フィルムが現像されるのに30秒ほどかかるので、フィルムを鞄に入れて、散歩の続きをする。そして少し経ってから「さっきの写真どういう風に撮れたかな」と鞄からフィルムを取り出すと、さっきファインダーから覗いた風景が現像されている。そして、それが綺麗に撮れているとは限らない。逆光で真っ暗になってしまっていたり、ピントが合っていなかったり、ぶれていたり、傾いていたり・・・などなど、素人特有の失敗がたくさん出てくる。「さっきの風景いい感じだったのに撮れてなかったなあ」などとがっかりすることもあるし、たまに、とても綺麗に自分が思ったように写真が現像されていたりするとうれしくなる。そして、失敗した写真たちも自分の手元に「写真」という物体として残っているので、どこか愛らしく感じる。

スマートフォンのカメラも日常的に使っているし、兄からミラーレス一眼を返してもらったら、「撮りたい」と思うときに使うと思う。その中にチェキというカメラを使う選択肢が増えたのはとても楽しいことだ。いい買い物をしたな、と思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?