台本供養

供養します

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死ねばいいってもんじゃない!

田代→女、男勝り

若林→女、真面目

常磐→女、とてもモテる


佐藤→男、ロッカーの地縛霊


茶道部の部室を用意する。


た「なぁなぁ、演劇で全国行こうぜ」


わ「何言ってんのいきなり」


た「いやわかる!キレそうなワカの気持ちはよーく!わかる!でもな、俺は見たんだ」


わ「なにを?」


た「宝塚」


若林、ため息をつく


た「あれはすごいぞ!なんかもう、バァーーーっ!ってなって、ドカーーーッてなって、ああ!もう!なんで俺たちは茶道部なんだ!」


わ「ちゃんとわかってるみたいで安心した。そうよ、ちゃんと考えて。私たちは、茶道部よ、黙ってお茶たててれば(先生のふりで)まぁすごい!真面目ね!って喜んでくれる部かt」


と「(扉をあけて)それにしても唐突ね!まあいつものことだけど楽しそうなことを!」


わ「トキはいつもシロに対して甘すぎ。もうこの学校で演劇部が潰れて何年になると思ってるの」


と「んー、看護棟がなくなった年だから、5年くらい?」(常磐、生徒手帳をみる)


わ「そしてこの茶道部ができたのは!」


た「ちょうど一年前!!!俺達が入学した年だー!!!」


わ「そう。だから演劇部はもうないの。看護棟がなくて、演劇部がないんだから演劇はもうできない。いい?」


た「へーい...........」


と「論破されるとすぐにしょげちゃうシロちゃん好きだよ〜♥♥」


た「励ましになってない・・・」


わ「確かに合同茶会もそろそろ飽きてきたのはわかる。だからって3人で演劇はないし多分文化部の中では正反対の存在よ」


た「でもさでもさ!友達の高校では放送部で演劇やってるとこもあるって聞くし!春のなんかよくわかんない大会?みたいなやつ?なんて結構毎年出てるって!」


わ「そこはコンクールでドラマ作ってる部活だったの。先生の協力もあって創部せずとも班を作って生徒が活動できるし、ドラマのノウハウは演劇と似てるから他校に引けを取らない。でもあくまで似てるだけね。実際は合宿したりして相当練習してるみたい。更に、男が元々多い高校だから大道具もほいほい作れるし運び手がいるから作っても持ち込みに困らない。あと、春の大会じゃなくて、総文ね」(早口)


と「ひとつ聞いてもよろしい?」


わ「どうぞ」


と「なんでそんなに知ってるの?」


わ「えっ」


と「なんで演劇部でもないワカちゃんが、そんなに詳しく知ってるの?ましてや、シロちゃんが唐突に言い出したことじゃない?なんで?」


沈黙


わ「それは・・・ちょっと・・・」


た「もしかして?ワカも?」


わ「違う!違うから!ずっとやりたかったとかそんなんじゃなくて!」


と「じゃあなに?」


わ「えっと・・・」


た「えっと?」


わ「中学が一緒でね、ちょーっと気になる先輩が、演劇部だっただけで・・・」


と「その先輩が好きなのね?」


わ「・・・」


た「好きなんだな!」


わ「・・・違うし」


た「はい図星〜!」


と「ワカちゃんは都合が悪くなると黙るもの!わかりやすすぎる!」


た「おー耳がみるみる真っ赤に」


と「で!その先輩に影響されてー?」


た「演劇部のことを勉強してー?」


急にドラマチックに指パッチン


た「お前、よく知ってるな、俺の部活のこと」


と「そんなことないです!ただ、」


た「ただ?」


と「ただ、先輩に近づきたくて・・・」


た「えっ?」


と「先輩が好き・・・だから」


た「キュン!」


と「私と、恋の即興劇、しませんか?先輩・・・」


た「若林・・・」


と「先輩・・・!」


た「若林!」


と「先輩!」


た「ワカ!!」


と「先輩!!」


わ「もういい!茶番はやめて!そうよ!好きなの!悪い!?近付くためなら何だってする!地区大会に県大会、近所の劇場全部に足を運んで勉強したし、ネットでたくさん台本も読んだ!なにがいけないの!?」


と「違うの、私たちはいけないとか、悪いとか言ってるんじゃなくて、あくまで私はいままで男っ気のなかったワカちゃんが、恋を知っててくれたことが嬉しいの」


た「俺は演劇のこと『今』教えてもらったしな!オタクの一人語りだったけど!」


と「だからさ、ワカちゃん。演劇やってみない?きっと大会に出たら、先輩とまた会えるよ」


わ「別にもう好きじゃないし、会わなくていいし。あと私たち茶道部だし」


た「茶道部だからとかもういいじゃん!やりたいことやろうぜ!3人だけだよ?部活くらい、自由に楽しまなきゃ」


わ「・・・」


と「1年生の時、ワカちゃん言ってたよね。3人で楽しいこといっぱいしようって」


た「だから俺も楽しいこといっぱい考えられるし、こうやって3人でやろうって提案するんだし」


と「結局シロちゃんが持ってきた企画、ちゃんと全部実行してるじゃない?なんだかんだワカちゃんが反対しても、楽しそうだからやろうって。ちゃんと計画立ててくれるし。あのー、ほら、夏の時の、なんだっけ....あぁそう!『チキチキ!ビーチでサンオイル背中に塗りましょうかと何人から声かけられるか選手権』とか」


た「違う違う!あれは正確に言うと『逆 真夏のサウンズナンチャラ選手権』だから!あれはトキの圧勝だったけどな」


と「『ピザのみみでドミノをする世界記録更新合宿』とかさ」


た「倒した時に1個足りないのに気づいたんだよなぁ、悔しかった!」


と「ほら、できないことなにもないよ!今回だってできるよ!先輩と会えるし、茶道部の部員だって増えるかも!」


た「やろうぜ!演劇!」


わ「・・・わかった。やるからには、本気でやるんだから。いい?茶道部の活動もちゃんと続ける。それだったら、やらなくもない」


た「ワカだったらワカってくれると思ってた!ワカチコワカチコ〜!」


と「もうそのダジャレ聞き飽きちゃった」


わ「私も」


た「ひどいな!この田代様渾身のギャグを飽きただと!?」


と・わ「うん」


た「オーノー.....」


わ「(空気を変えるように)そうと決まれば台本を作らなくちゃね。まずは基本から。いい?大会でウケる台本には条件がある!まず命をかけた恋愛もの!これは鉄板でウケる!戦争や学校に絡めるとなおリアリティが増すから勝ち進みやすい!あと古典演劇をオマージュしたもの!これは古株の審査員にウケがいいから、県大会突破は堅い!これを踏まえて台本を創作すること!いい!?」(黒板に書きながら)


た「わかった!」


と「創作するのはなんで?作られたものをやっちゃいけないの?」


わ「勝ちたいんでしょ?全国行きたいんでしょ?もうめんどくさいの?じゃあやめてもいいのよ?」(すごく怖く)


た「すごい気迫だ!こうなったらワカはもう止められない!」


と「とにかく作ればいいのね・・・?」


わ「そうよ」


た「よっしゃ!こんなのはどうだ!悪の帝国ジュライが地球を侵略されそうになったその時!あの伝説のヒーローが助けに来る!その名も!ディセンバークリスマ・スマン・・・あれ?」(周りを見る)


と「まったく話を聞いてなかったのね」


わ「それは誰かが死んだりする?生きてる?最後に自殺したりマスクをつけたり階段を上ったり幕が上がらなかったりする?」


た「・・・なにもないけど・・・」


わ「じゃあ全国いけないわね。ムリよ、甘いわ。いい?全国に行くには、誰かが死んだり、辛い思いをしたりしなきゃいけないの。話聞いてた?」


た「スミマセンデシタ・・・」


わ「わかればよろしい」


と「・・・題材決め、再開しましょうか!」


全員動く、マーチのような音楽


た「こうして俺達の春はあっという間に過ぎ、夏がやってきた。作ってた台本はなんと3人用だったんだけど、俺は気づいちゃったんだ。この茶道部、いや演劇部には三谷幸喜がいない!....ようするに劇を見て直してくれる人がいなかったんだなぁ。そこで!やっぱり1番分かってそうなワカが、えんしゅつ?になりました!」


3人「イェーイ!」


わ「早速私たちは演劇に必要な体力作りをすることになりました。はい!吸って〜!1!2!3!4!吐いて〜!1!2!3!4!5!6!7!8!」


セミの声


と「あっつーい!この茶道部の部屋クーラーないの?」


わ「あるわ。でもつけないよ」


た「なんでだよ!」


わ「舞台は暑いの。灼熱!もはや紅の豚よ」


と「それは飛行機の色の話だと思うけど」


わ「舞台で役者が汗をダラダラ流して、ゼーハーいってたら集中出来る!?『大丈夫かな』って観客は心配するでしょ!1番劇をわかってるのは客であって私たちじゃないの!」


た「へーい」


わ「舞台上でそんな返事してたら危ないでしょ!ちゃんと大きな声で!」


た「はいはい!!」


わ「返事は1回!」


と「はひ!!」


と「こうしてめくるめく日々は過ぎていき、私たちのような台本が遂に出来上がりました!でも、3人用の台本を無理に2人用にするのは、ちょっと骨の折れる作業で(テヘッという可愛い仕草)」


BGMフェードアウトしていく。


わ「よし、台本はできた、役も決まった!稽古するわよ!」


た「おっ、ワカ張り切るねえ!でもこれで本当に大丈夫かな」


と「というか、どうなっても、私は死ななきゃいけないのね」


た「勝つためだろ?仕方ないって!」


わ「とりあえず、ここを稽古場にするためにこのコンロとかいろいろしまっちゃお。トキ、そのロッカー開けてくれる?」


若林、見るからに怪しげなお札の着いたロッカーを指さす


と「これ収納用っていって看護棟が潰れる前に勝手に持ってきたヤツでしょ?なんかこわーい」


わ「なにいってるの。ただの古びたロッカーじゃない」


た「札付きだけどね...........」


わ「とにかく、うちには部費がないの。使えるものは使わなきゃ。はい!さっさと開ける!」


二人を急かして、札を剥がさせる


不気味な雰囲気。あおっぽい照明。


と「なんか、寒く・・・ない?」


わ「いえ、気のせいよ」


た「早く開けろよ」


と「....うん」


常磐、ロッカーを開ける


なにかおどろおどろしい雰囲気がロッカーから出てくる


3人驚いて後ずさりをする


しかし田代はすぐ落ち着く。彼女にだけ見えていない。、


ロッカーから佐藤が手を出す


順番に体を出してトキに近づいていく


わ「・・・ねえ!なに!これ!」


と「ねえなに、なんなの、こないで!!!」


た「おいトキ!なんか見えんのか!」


と「男の人・・・!こないで!!!やめて!!!!さわらないで!!!いや!!!!」


さ「(おぞましい声で)カワイイネ....」


わ「シロ!とりあえずロッカーしめて!!!」


た「わかった」


田代ロッカーを閉める


不気味な雰囲気が消える


佐藤立ちすくむ


た「寒く・・・なくなった?」


と「やだ!まだいる!!!ねえ!!!もういやあ!!!!」


常磐はける


佐藤かなしそうに出ていった先を見る


た「ちょっと!!!トキ!!!」


わ「もう、大げさなんだから、驚かせたかったんでしょ」


た「でも心配だから!ちょっとトキ追いかける!」


わ「ちょっとシロ!」


田代はける


わ「まったく、シロまで大げさなんだから!あんなの開けたってなんにもなかったじゃない」


そう言いながらロッカーを開ける


わ「ほら!なんにも....」


後ろから佐藤に肩を叩かれる若林


ここまで若林と田代は佐藤に気付かない


さ「ラジオ体操第1用意!」


若林沈黙。何故か見つめている。佐藤が体操の歌を歌いながら体操をしている。やたら激しい。いい感じにやったあとでわざとらしく気付いて会釈。


わ「いやぁぁぁぁぁああああ!!誰ええええええええ!!!!!」


さ「おはようございますうううううううう佐藤ですううううううう!!!!」


若林おちつく


わ「いやだから誰よ」


さ「佐藤」


わ「さっき聞いたわよだから」


さ「あっ気付いてなかったとかそういうこと?あっ、ああ!ごめんね!驚かせたよね。うん、ごめんね」


わ「そうよまったく脅かさないでよね・・・幽霊?」


さ「さあ、どうだろ、そうなんじゃない?」


若林沈黙


わ「やっぱりぃぃぃぃぃいいいぁぁぁぁぁああああああああ!!!」


さ「落ち着いてえええええええ!!!」


常磐をかばいながら田代が戻ってくる


た「どうしたワカ!!」


わ「いる!!いるの!!!」


と「いるんだって!!!見えないの!!!!!」


た「あ、ああ!アレね。見えてるよ」


田代平然と言い放ち、佐藤に近づこうとする。しかし、良く見えてないのか、全然違う方向に向かって話し始める。


た「よろしく。俺は田代ってんだ。シロって呼んで。よろしくな」


さ「田代くん・・・ようやくまともに話してくれて嬉しいよ、全然顔みてくれないけど」


わ「シロ強すぎる」


た「俺霊感あるんだ。霊の声が何となく聞こえるくらいだけど」


と「この3人の中で能力が1番クソザコナメクジなシロちゃんもすき....(限界オタク)(怯えながら)」


わ「でも、確かに落ち着いてみると、悪い人ではないようね」


た「でも見えてないってことは霊だろ?」


さ「違うし!ちょっと人と違うだけだし!ちゃんと人間だし!」


と「多様性の時代だもんね」


さ「そうそう!たようせいたようせい!」(変なイントネーション)


わ「あっこいつ絶対わかってないわ」


さ「ただちょっと人より変わってるだけで!ただの幽霊だから!」


わ「あっもう幽霊って言った」


さ「とにかく、私のことは、さとちんって呼んで!ハイ!よろしく〜」


と「よろしくできない...........」


わ「私は落ち着いてきた。とにかく、悪いやつじゃないならいい。私は若林。ワカって呼んで」


た「ここで怯えてるのは常磐。トキって呼んでやって」(相変わらずよくわかんない方向を向いている)


さ「おっけ!トキにシロにワカ!」


た「そうそう。おっ、トキ、落ち着いた?」


と「よくみたら、イケメンかも・・・」


た「そこかい」


さ「えっ、照れちゃうんですけど。恥じらっちゃお!」


わ「さすがイケメンハンター。まあ、トキさんのイケメンの基準はよく分からないけど・・・」


と「なによ失礼な!これでも私はシロちゃん一筋なのに!」


た「とりあえずどうやって片付けようか、これ」


さ「あっ!僕の家(ロッカーを見ながら)にはそれ置かないでね!狭くなるから!」


わ「あっそれ家なんだ」


さ「やっぱり個人の絶対領域ってあるじゃん?」


わ「霊なのにパーソナルスペース気にするんだ....」


と「まあ、とりあえず飾り棚の上に置いておきましょう」


片付け始める


さ「そういえば、なんで片付ける必要があるんですか?」


と「これから演劇の稽古をはじめるの」


さ「みるからに茶道室なのに?」


た「俺の提案でな!」


さ「というか、もともとここは看護棟でしたよね?」


わ「そっか、さとちんは知らないんだっけ。看護棟潰れて、茶道部と運動部の更衣室になったの」


さ「そっかー、時代は変わったんだね」


わ「さあ、片付けたわね?稽古するわよ!まずは・・・とりあえず通しで!好きに動いてみて!」


全員ストップ(ここまで10分)


さ「こうして私は、彼女達の稽古を見学しました。物語は、今流行っている不幸と、そこから幸せを見出そうとする家族のありきたりなもの。つまり、良くいえばいい子、悪くいえば典型的な台本。でも、それは本当に散々でした。一部マシな部分を切り取ったので、これをみてください」


佐藤手を叩く


た「やめて!待ってよキヨコ!」


と「もう私は止められない、誰にも!たとえなにがあろうとも!」


た「だめ!!そんなことしたら、キヨコは・・・」


と「ええ、おわってしまうかもしれない。でも、それでも行かなきゃいけない。ごめんね」


佐藤手を叩く


さ「ここで注目してほしいのは、彼女達のこの棒読み演技ではなく、彼女達がなにをしているかです。とりあえず続きをご覧ください」


佐藤手を叩く


わ「はいはいストップ!!!もっと必死になれるでしょ!二人はどこにいくの!」


た「大安売り・・・」


わ「そう!ピーマンが1個1円なのよ!スーパー玉出だってビックリのやすさなんだから!もっと情熱を持って!」


と「で、やっぱり私は・・・」


わ「おばさんの集団に突っ込んで行ったら圧死した役よ」


と「えっすごいいや」


わ「仕方ないでしょ、これ社会問題なんだから」


た「久々にワカの言動がぶっ飛びすぎててわかんないぜ」


わ「はい!つべこべいわない!2人とも集中!」


と・わ「はーい・・・」 


佐藤手を叩く


さ「まったく意味がわかりません。元演劇部の私としては、こんなよくわからない薄っぺらい劇よりも絶対既成台本をやった方が・・・おっと、なんだかすごいブーメランをくらってる気がします、痛い!あっすごく痛い!やめて!」


みんな動き出す


わ「なにしてるのさとちん」


さ「えっ?あぁ!なんでもない!ちょっと痛がってるだけ!アッ痛い!」


と「やっぱり幽霊はヘンね」


さ「幽霊じゃないもん!僕に構ってないで稽古して!」


と「とりあえず、通しも終わったことだし、そろそろ塾があるから、私は帰るね?」


た「あっ、もうそんな時間か。そろそろ俺も」


わ「そっか、2人とも同じ塾だもんね」


と「そ!バスの時間だから。シロ!行こ!」


た「おっしゃ!じゃあ、ワカ!さとちん!またな!」


わ「ええ、またね」


3人バイバイして、若林だけ残る(12分)


さ「今どきの子はみんな大変だね、毎週塾なの?」


わ「ううん、毎日。もう来年は受験生だから、二人とも忙しいの」


さ「ワカは?」


わ「私は家を継ぐの。海産物の会社。許嫁もいるっぽいのよ。顔も見た事ないおっさんだろうけど」


さ「許嫁ってことは、そうとう大きい会社なんだね?」


わ「そうなの。意外とお嬢様だったりするんだから。さとちんは・・・ってもう幽霊なのか」


さ「残念ながらね。僕に未来はないよ。でも、ずっと高校生のままでいられるのは楽しい。少し寂しくなる時もあるけど」


わ「そういえば、さとちんって何歳なの?」


さ「僕?死んだ時は18歳だけど、今は何歳かわかんないんだよね。多分もう死んでから正確には分からないんだけど、65年くらい経ってるんじゃないかな」


わ「えっ、そんなに?せいぜい+10年くらいだと思ってた」


さ「でしょ?よく言われる」


わ「死んだ原因とか・・・って、あんまり聞いちゃいけないか」


さ「いいよ、気を使わなくても。・・・お母さんに殺されたんだ。無理心中」


わ「無理心中・・・?」


さ「そ。一家全員・・・ってか母1人子1人って感じで。ほら、戦争があったじゃない?あれでお父さん亡くなってるんだ。お母さんのお腹の中にはもう私がいたのに、あっさりサイパンで逝っちゃった。即死だったんだってさ」


わ「即死・・・」


さ「苦しまなかったのが救いだって、お母さんが言ってた。で、お母さんは私を産んで、育ててくれたけど、結局お金がなくて、困っちゃって、それで」


わ「一家心中したのね」


さ「うん。練炭って、意外と苦しいんだね。あれ息できないんだよ。てか息しても、吸ってるのは空気じゃなくて、なんかモワモワした変な気体。お母さんばっかり睡眠薬飲んでさ、苦しまないようにって、でも、僕はまだ死にたくなくて、家を出て、ここに来て、でもこのロッカーの前でで力尽きて・・・(泣き出す)」


わ「それで、このロッカーに・・・」


さ「へんだよね、地縛霊とかそういうのじゃなくて、ロッカーに取り憑いてるなんて。気付いた?開けた人にしか見えてないこと」


わ「そういえば、そうだったかも」


さ「どうしてこうなったんだろ。普通に恋とか、愛とか、青春とかしたかったのに」


わ「・・・」


さ「(涙を拭う)なんかごめんね、しんみりさせちゃって。これでも一応人間だったからさ、まだ辛いんだ」


わ「・・・ねぇ、さとちん」


さ「なに?」


わ「青春をさ、やり直してみない?これから」


さ「これから?」


わ「私ね、この台本を、もともと3人でやる予定だったの。でも演出とか、大事かなって思って、私のいったセリフを無理矢理消して、今みたいな劇にしたの。だからちょっと不自然な劇になっちゃった。さとちん、演出、やってくれない?」


さ「....満足したら途中で成仏しちゃうかもしれないよ?」


わ「大丈夫」


さ「・・・本当にいいの?」


わ「私がここの決定権を持ってるの。さとちんがなんと言おうと、私はさとちんに演出をやってもらう。それでいいよね?」


さ「ワカ・・・ありがとう」


チャイムがなる


わ「ちょっと話しすぎたみたいね。下校時間になっちゃった」


さ「ほんとだ、もう外も真っ暗」


わ「じゃあ、私はもう行くから。鍵は閉めていっても大丈夫なのよね?」


さ「まあ幽霊だしね!一晩閉じ込められるくらいどうってことないよ!」


わ「なんかすごい良心が傷つくんですけど」


さ「気のせい気のせい!ワカ、じゃあね!」


わ「うん、また明日」


若林帰る


見えなくなると、佐藤ため息をつく


さ「演出、か」


暗転






書き上げられる自信がある方は連絡をください。書き上げた台本を見せてくれるお優しい方にデータをお渡しします。この際書き上げた台本の権利は、書き上げた方に帰属します。

レッツ!クマ囲みライフ!