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#28 アヴリル・ラヴィーン『ラヴ・サックス』

服部さんへ

 ベイビーフェイスって久々な気がするなと思ったら、オリジナル・アルバムは7年ぶりだそうで。今や大御所も大御所だから、プロデュースやら新星の発掘やらで忙しいのでしょうし、アルバムとして価値があると納得がいくものでなければ、世に送り出さないのでしょうね。
 で、フタを開けてみたら、酒池肉林のハーレム状態。いや失礼。はしたない言葉を使ってしまいました。あくまで僕の個人的なイメージの問題で、偏見との批判を承知で言うのですが、時折MVなどでも感じられる、米R&B/ヒップホップの表現のゴージャス感、マッチョ感、イケイケ感みたいなものが、ちょっと苦手なんです。多分にやっかみもあるのでしょう、はい。
 でも、そのイメージは脇に置いておいて真剣に捉えると、ベイビーフェイスが今推している女性シンガーを、自身の名を用いてフック・アップしようとしているように感じます。僕がR&Bにあまり詳しくないことを差し引いても、聞いたことがない名前が多いし。
 それぞれの才能のきらめきを感じさせる、ポップで良質な楽曲が揃っていて、そのあたりはさすがですね。今や世代や知名度の差を超えた共演が当たり前になっているので、今作で名を揚げたオネエちゃんたちが、今後誰から声がかかるかにも注目したいところです。あっと、最後もはしたなくてスミマセン。
 追伸。ジュニア・ウィリアムズ、聴きました。エレクトロ要素を排したオーガニックなサウンドと、甘ったるくない声が好みです。まだシングルのみの新鋭なんですね。覚えておきます。

アヴリル・ラヴィーン
『ラヴ・サックス・ジャパン・ツアー・エディション』

 元々は今春のリリースだったため、見送っていた1枚。来日記念盤が出たので、ぜひ取り上げたい。僕は横浜公演に行ったのだけど、想像をはるかに超える盛り上がりだった。暗黙の了解なのか、会場が一体となったシング・アロング(マスク着用)と、アーティストが客席にマイクを向けるという景色も久々に見ることができて、ちょっと感慨深いものがあった。
 それにしても、胸が空くとはこのことだ。死をも意識した難病を克服したアヴリルは、前作『ヘッド・アバーヴ・ウォーター』で、美しくも力強いソウルフルな歌声とともに帰ってきた。そこには、ぐっと大人になった彼女の姿があった。だから今作で、こんなにもロックに振り切れてくるとは、まったく予想できていなかった。しかも、王道も王道のポップ・パンクが全編で炸裂している。気持ちがいいほど見事に、してやられた。そして、一周して立ちたかった地平がここだったのだなと、納得。

からの、↓↓↓というわけです。

 オリジナル・パンクとかネオ・パンクとか、ポップ・パンクとかダンス・パンクとか、はたまたポスト・パンクとか、そんな面倒なことは抜きにして、とにかく“パンク”を感じたいロック・ファンに声を大にして「オススメ」と言いたいアルバムだ。
 しかもこの来日記念盤は2枚組で、DISC-2はキャリアを網羅して代表曲をまとめた、最新ベスト盤と呼ぶべき内容。過去作をあまりチェックしていないような新しい世代のファンは、絶対にこっちを聴くべし。
                              鈴木宏和


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