見出し画像

#16 ヤングブラッド『ヤングブラッド』

服部さんへ

 来ましたディズニー。前回はアカペラでしたが、今度はピアノですか。ピアノは好きですぞ。どれどれ〜……と、呑気に聴き始めて、すぐにハッとさせられました。
 いったいなんなんでしょう、このキラキラしたファンタジー感は。リン・リン、いやラン・ラン(全然関係ないのですが、その昔、リンリン・ランランという双子のポップ・デュオがいたのを思い出したもので)自身がアレンジしているのですか? いずれにせよ本人が弾いているのだから、僕がキラキラしていると感じているような演奏をしているということですね。ご指摘のアルバム・ジャケットしかり、ラン・ランのディズニー愛が伝わってきて、温かい気持ちになるとともに、ピアノ・プレイヤーとしてのスキルと表現力に魅せられてしまいました。
 「ザ・ベアー・ネセシティ」のような演奏法は、ラグタイムと呼ばれるものなのですね。勉強になりました。僕が特に耳を持っていかれたのは、何気にジョン・バティステが参加している「It's All Right」です。ジョンの歌との絡みが絶妙ですね。また、「We Don't Talk About」がなぜ大ヒットしているのか不思議で仕方がなかったのですが、ラン・ランのピアノ・ヴァージョンだと、とてもいい曲に聴こえてくるから不思議です。
 それにしてもディズニーって、ミュージシャンの創作意欲も刺激してやまない夢の国なのですね。

ヤングブラッド『ヤングブラッド』

 英国発、今夏のSUMMER SONICで初来日を果たしたヤングブラッド。昨今のポップ・パンク再燃の火点け役とも言えるトラヴィス・バーカー(BLINK-182)をはじめ、元交際相手でもあるホールジー、ダン・レイノルズ(イマジン・ドラゴンズ)、アヴリル・ラヴィーン、マシュメロ、ブラックベアーなど、自身の音楽性同様にジャンルを超え、あらゆるアクトとコラボレートしていることもあり、かねてから注目していた新鋭だ。
 時にワンピースやスカートを身に着けるファッションや、ジェンダーが特定しておらず流動的なことなども、新しい感覚で魅力を感じていたのだが、MVの世界観も含めてヤングブラッドの音楽と自分が繋がったと感じたのは、彼がトラヴィスとともに客演した、マシン・ガン・ケリーの「アイ・シンク・アイム・オーケイ」だった。

 今月リリースされたばかりの『ヤングブラッド』は、通算3枚目のニュー・アルバム。このタイミングでセルフ・タイトルを冠したのは、自身の名刺代わりの作品にふさわしいとの判断からだろう。それも納得。一聴して耳を奪う楽曲が並ぶ、2020年代型ロックの在り方を提示したとも言える快作だ。シングル曲「ティッシューズ」では、リスペクトするザ・キュアーの名曲「クロース・トゥ・ミー」をサンプリング、「メモリーズ」ではポップ・パンクつながりのウィローを迎えるなど、相変わらずフットワークも軽い。
 すでに全英アルバム・チャート1位を獲得。対照的な作風でロックの魅力を伝える、オジー・オズボーンの新作を紹介しようか迷ったのだけど、今回は書き手の若作り(!?)ということで。
                              鈴木宏和



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?