五月雨と春陽炎

揺れ薙ぐ 水溜まりを行く
降り続く 五月雨 藍の花
遠く声 夜は覚えている
水面に映る 私は枯れていた

窓越しに映る濡れた路地
君の残していった手紙は
部屋の隅ホコリ被ったまま
暗い 暗い 暗い

雨雲 アイリス
感情の葉を摘むんだ
記憶の片隅に残る
君との春

そこは快晴の空の下
二人沈む夕日を眺めていた
君は微笑んだ 夢だった
いつまでも隣にいることが
でも もう 溶く 無く 逝く

何も無いように振舞った
寂しさに気づかないよう
優しさから身を置いた
痛い 痛い 痛い

駅前 時計塔
横目に映る蔵屋敷
君と歩いた日々追う
息遣いを思い出す

揺れる柳並木と春陽炎
人混みをかき分け歩いていた
ふれた左手は優しかった
今はもう届かない過去の霧

繋いでいた二人の手を
離そうと夜がくる
「さよなら」を言った君と
目が合う 泣く 泣く 泣く

君の名前刻まれる石の前
思い出さないように蓋をしていた
でももういいから平気だから
遅れてごめんと花添える
それじゃまたねと手を振った

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