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新・オーディオ入門65 電子パーツ編 トランス

『オーディオはよくわからないけど良い音で音楽を聴きたい』、『オーディオ歴は長いけどこれは知らなかった!』というお話を聴くことがあります。 新オーディオ入門はオーディオの基礎についてエンジニアの視点から初心者の方にも判りやすく解説していくものです。 タイトルは私が10代の時に愛読した『オーディオ入門』から拝借しました。 私がオーディオに携わることになったきっかけの本です。 とても判りやすく説明されていて、手元に置いて辞書のように使っていました。 『新・オーディオ入門』はその現代版となれるよう書き進めたいと思います。

トランスは電源電圧を変更したり、真空管アンプにおいて真空管とスピーカーのインピーダンスの適正化を行うための電子パーツです。トランスは100年前から構造に大きな変化はありません。そして小型化が非常に困難な電子パーツです。

● 電源トランス
大出力のパワーアンプに使用するような大容量の電源トランスは大型にならざるをえません。トランスは低い周波数で使用するほど大型のものが必要になります。同じ大きさのトランスであれば高い周波数で使用した方が大きな電力を伝送することができるのです。東日本では電源周波数は50Hz、西日本は60Hzと西日本の方が電源周波数が20%高いため、同じ電源トランスを使用していても西日本のほうが20%多くの電力を取り出すことが可能です。このことから同じパワーアンプであっても西日本の方が高音質になると言われています。スイッチング電源回路で使用するトランスでは数十キロヘルツというさらに高い周波数になりますので、たった親指の先ほどの大きさのトランスで数百ワットの電力を取り出すことが可能です。そのため、最近ではスイッチング電源を使用するパワーアンプが多くなってきました。

● 出力トランス(OPT)
真空管アンプの出力トランスも同様に低い周波数で使用するほど大型のものが必要になります。真空管ラジオの出力トランスは200Hz程度までしか再生しないような設計ですので小型のトランスが搭載されていますが、本格的な真空管アンプでは10Hzくらいまで再生できる出力トランスが搭載されています。このような出力トランスは幅120mm、奥行120mm、高さ160mmほどの大きさがあり非常に高価です。また、安価な小形真空管アンプでは数センチ程の小型の出力トランスが使用されていますが、こういった出力トランスでは100Hz程度までしか再生することができず、重低音は望めません。

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