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【論考メモ】作曲におけるパロディとシミュラークル ー星野源とサカナクションをたよりにー

【メモ】1 / 0512
「作曲におけるパロディとシミュラークル」
 ー星野源とサカナクションをたよりにー

大衆の音楽に対する嗜好が多様化し、とりわけ「若者音楽」と一括りに言えなくなった。たとえば、いわゆる若者(10代〜30代)を中心に人気があり、私と同年代のアーティストに星野源とサカナクション(大半の楽曲の作詞作曲を担当している山口一郎)がいる。

彼らが音楽性のルーツとして公言しているバンドは多数あり、またそのメンバーと公私に渡って交流を深めているのも周知のとおりである。彼らが作曲し、世に送り出した多数の楽曲にはその影響が随所に表れており、CM WorksやLIVEなどで原曲をカヴァーをしているほどだ。

<例1>
はっぴいえんど「風をあつめて」covered by 山口一郎
https://www.youtube.com/watch?v=BwVN99bOS1w

<例2>
星野源は、2017年の自身のLIVEで「時よ」の参考曲であると公言しているYMO「Mad Pierrot」をカヴァー(インストアレンジ)した。

YMO「Mad Pierrot
https://www.youtube.com/watch?v=oWwmy-SH2xs

星野源「時よ」
https://www.youtube.com/watch?v=LGG8grKZhxY

星野源とサカナクションの音楽は、一見(一聴)すると楽曲構成に大きな違いがあるように感じるが、実は共通していることの方が多いと考えられる。それはそのはずで、彼らがルーツとするバンドないしアーティストの音楽性のみならず、その楽曲構造や展開までを巧みに取り入れているからに他ならない。まさに「温故知新」ならぬ「音故知新」である。

まず、星野源はYMOが多用したような複雑なコード進行の上に、極めてポップなメロディ(ペンタトニックが多い)を重ねているのが特徴的だ。またアレンジが秀逸で、LIVEにおいても、例えば「Earth Wind & Fire」を彷彿とさせるようなサウンドに仕立てるなど、そのセンスと技術/能力の高さがうかがい知れる。

<例3>
星野源「Week End」
https://www.youtube.com/watch?v=F4kUnm4nOpI

Earth Wind & Fire「September」
https://www.youtube.com/watch?v=Gs069dndIYk


他方のサカナクションは、シンプルなコード進行の上に、やはり極めてポップなメロディ(こちらもペンタニックが多い)を重ねている。そして、やはり音色の使い方が秀逸で、POPSの枠を超えたEDMとしても根強い人気を博している。さらに、Music VideoやLive Performanceにおける芸術性も、同世代のアーティストからは頭ひとつ抜きん出ている。

<例4>

サカナクション「ナイトフィッシングイズグッド」

サカナクション「目が明く藍色」
https://www.youtube.com/watch?v=xOqvFHwh3rk

Queen「Bohemian Rhapsody」
https://www.youtube.com/watch?v=fJ9rUzIMcZQ


作曲について考えるときに、「何をオリジナリティとみなすか」というテーゼを無視することはできない。
著作権法の関係上、剽窃(パクリ)における線引きはあるものの、あくまでも旋律(メロディ)に関する訴訟(判例)が大半を占める。今日の楽曲(特にPOPS)では音色という要素が、メロディやコード進行と同等の価値をもつまでになったが、法律上は、音色やコード進行に関しては明らかな「パクリ」であっても、別楽曲とみなされている。この辺りは、パロディをめぐる議論と通じるところが多々ある。

以下は蛇足だが、星野源が最も大きな影響を受けている人物のひとりだと公言している細野晴臣さんが「星野源のオールナイトニッポン」の代役として約30年ぶりに同番組を2時間担当した。そこで、自身の最新作である『Vu Jà Dé』を紹介していた際に「今は(自分が影響を受けてきた楽曲の)カヴァーをしている方が楽しいし、発見がある」といったことを話されていた。この話も掘り下げると、結局は「オリジナリティとは何か」という議論に深く通じるものがある。

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