名曲579 「Stranger In the Mirror」【鳥山雄司】

ーー幻想的な世界観にじわじわと広がる景色ーー

【Yuji Toriyama - Stranger In the Mirror】

 鳥山雄司はシティポップ界隈だと有名だが、世間一般的にはあまり知られていないと思う。自身のリリースした曲は少なく、楽曲提供のほうが多い。編曲家としても活動している。有名なところだと、シャ乱Qの「ズルい女」とか、松田聖子の「あなたに逢いたくて~Missing You~」の編曲を担当した。

 個人としてだけでなく「PYRAMID」のメンバーとしての活動もしている。自身はギターを務め、ほかにピアノの和泉宏隆、ドラムの神保彰。しかし昨年に和泉宏隆が急逝してしまった。これによりメンバーは2人になったが、今後も活動していくようだ。

 PYRAMIDはヒュージョンが特徴。上記にベースが存在しないが、ゲストを呼んだりコンピューターの打ち込みによる自動演奏などで対応しているようだ。シンセもそうだとか。ヒュージョンは個人的に好きである。いいものを取り入れて新たなものが出来上がったときの感動は爽快だろう。カシオペアのときにも書いたので、その辺は割愛。

 今回の曲は歌詞の存在しないインストルメンタルではあるが、じんわりと「Stranger」のセリフが聞こえる。これがまたセクシーなのだ。幻想的なサウンド(異世界をも思わせる)に、徐々に広がっていく世界観。先に進めば進むほど、より深く大きな景色が見渡せるかのような趣がある。

 鏡の中の見知らぬ人ということで、考察すればするほど奥深さを思い知る。自分自身を見失っている姿を見て葛藤しているのか、それともパラレルワールドに迷い込んでいるのか。解釈はさまざまだ。

 個人的には妙に早起きしてしまった早朝に聴いてみたい一曲である。午前4時の日曜日なんていかがでしょう。もうひと眠りする前に、頭の中を空っぽにして聴いてみる。すると壮大な夢が見られるかもしれない。

 今回の曲は個人的にかなり評価が高い。シティポップにはまだまだ財宝が詰まっている。1983年の曲なのだが、いやはや、これがこのまま埋もれてはダメだって。それにしても当時のレベルの高さは何なのだろう。この時期は洋楽も凄まじい勢いがあった。だから日本国民も邦楽よりそっちに行ってしまった人も多い。世界に対抗しようとした国産の音楽も、今になって世界から再評価されている。ようやく気づいたのだ。負けんとするソウルがあったのだ。

       【今日の名歌詞】

なし

 


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