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自己流ギターメンテの話 ~指板・フレット編~

どうも、おうちギタリストのkです。

コロナ発生からあっという間に1年が経ち、おうち中心で過ごす生活様式も大分自然になってきましたね。
先日アコギをメンテしにとある工房にお伺いした際、おうち時間推奨されて以来、昔弾いていたギターを引っ張り出してきてメンテに預ける人が激増しているという話を伺いました。

メンテの情報ってネットに様々な情報が転がっていますが、中には「これは使ってはいけない」とか「楽器を悪くする」みたいな不穏な情報も転がっているし、最初は情報の取捨選択が難しいと思いました。
何より、何となく始めたは良いものの、「あれもこれもやらないと」という義務感も生まれて、なんとなく手間になっちゃうんですよね。
自分はセルフでの対応が好きだし、慣れてしまいましたが、よくよく考えると楽器のメンテするのって結構腰が重くなりがちな気もします。

と言うことで、今回はおうちギタリスト歴9年目になる自分が、ギター・ベースメンテについて

・作業目的とポイント
・愛用しているメンテツール
・個人的な楽しいポイント

以上を明示した上で、各メンテナンス作業に関する自分の解釈を添えてお届けできればと思います。

あくまでも「素人が自己責任かつ手探りで積み上げていった知識」であることを念頭に置いていただいた上で、お読みいただけると幸いです。
また、メンテにおいて各々にとっての最適解は、使ってる楽器や環境によって異なってくると思うので、参考程度に。

初心者や、メンテが気になっている方に、セルフメンテの魅力が少しでも伝われば幸いです。

基本方針

第一歩で気がかりなのは、メンテをしなかった、あるいはメンテをした結果、「楽器をダメにしてしまわないか」と言うことだと思われます。高い楽器を購入して初めてメンテに興味を持った方もいらっしゃると思います。折角の買い物を台無しにしたくないですもんね。

取り返しのつかないことにならないよう、以下の通り、基本方針を3つ設定してみました。

①実施するメンテナンスの内容と使用する道具については必ず事前にリサーチをする
②木部の過度な乾燥/加湿は避ける
③ネック(トラスロッド)は極力いじらない

この3点さえ守っていればOKだと思っています。少なくとも、以下で紹介するメンテが起因して、自分が持っている楽器に悪影響が出たことはありません。

特に①は調べた量に比例して、万が一悪い方向に進んでしまったとしても、結果に納得できるようになると思います。愛用したギターに傷がついたら「使い込んだなぁ笑」って思うのと一緒だと思ってて、このメンタリティが結構重要な気もするので、嫌にならない程度に調べてみてください笑
①と②は後のパートで重点的に触れるようにします。

③のトラスロッドは経験を積む機会が少なく、感覚頼りになることから個人的にはおススメしていません。自分は安ギターでも愛着が強いので、丁度良い楽器でテスト、ということができないんですよね笑 いつか解説できるくらいにはできるようになりたいですが、この記事ではスルーします。

最後に、今回は指板とフレット周りにフォーカスしているので、エレキ・アコースティック共通となります。心配な方は是非コメント欄でご質問ください。
上記を踏まえ、これからより詳しい解説に入っていきます!

指板のメンテ

個人的にはここが一番気と時間を使っています。施工対象が木部であることから変数が多く、諸説囁かれているのも指板周りだと思います。

自分は弦を交換するタイミングで毎回指板の様子をチェックするようにしています。ElixerやGHSのコーティング弦を使うことが多いので、施工の頻度は3〜4ヶ月に一度くらいです。湿度の変化が起きやすい季節の変わり目と重なるように、タイミングは気持ち合わせています。汚れも溜まるしね。

冬場のちょっとカサっとした指板見ると「やるか~!」ってなる人

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指板メンテでポイントになるのは、「木部にどの程度の油分を塗布するか」だと思っています。
そもそも、せっかく乾燥させて状態を安定させた木材に、ベタベタとオイル類を塗ることに関しては賛否両論あるかと思いますが、本来の目的は、油分を塗布することにより、木部の深層に水分が過度に揮発・浸透するのを防止する役割と認識しています。

木材は基本的に水分過多になると膨張、乾燥気味になると収縮し、どちらも木部の捩れやヒビ割れといったダメージの原因となります。日本は四季による気候の変化が顕著で、どちらの状態にも転がり得る為、オイルで適度に保湿がされた状態が維持されているのが好ましいわけです。塗布そのものは目的でなく、ゴールは木部に一定の湿度を維持させることです。

加湿/保湿に目が行きがちだけど、撥水要素も同じ位大事だよ!っていう話

木部の湿度管理

たまにネットで「カラカラの指板にオイルを染み込ませたら生き返りました!」みたいな記述を見ますが、「オイルで潤す」みたいな域まで行ってしまうと湿度の安定を損ねるので、めっちゃミスリードな表現だと思ってます。(それも、楽器屋のHPに載ってたりするから割りとタチ悪い気が…)

上記を踏まえて、市場に出回っている道具を見ていくと、レモンオイルとオレンジオイル、蜜蝋ワックス等々、様々な道具がありますね。次のパートでは、実際に使用するツールを個別解説していきたいと思います!

レモンオイルとオレンジオイル

ここもどちらを買うのが正解か、また使い分けが悩むポイントですよね。そもそものオイルの性質・指板材等の変数が多く、本家本元の楽器メーカー間ですら、個人のオイル使用に対するスタンスが異なる為、猶更判断に迷うかと思います。ここは用途要領を守って、適度に使っていきましょう。

まずレモンオイルですが、オイルといいつつサラサラとした質感が特徴です。揮発性が高いため、指板の汚れ浮かせに向いており、余分な油分を拭き残す心配が少ないので、指板の掃除に最適なツールです。反面、揮発性の高さ故、湿度維持力は後述のオレンジオイルに劣るかと思います。

続いてオレンジオイルですが、「クリーニング性能」と「湿度維持力」のバランスが非常によく取れています。レモンオイルと比較して揮発性が低く、高い湿度維持力が見込めるかと思います。加湿効果も高いので、昔使ってたギターを引っ張り出して来たパターンの方は、オレンジオイルの方が適役な気はします。こちらは特に拭き残しに要注意ですね。

柑橘の爽やかな良い匂い、メンテの楽しみの一つです

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愛用しているのはFreedom Custom Guitar ResearchLemon Oilと、HowardOrange Oilです。どちらも楽器屋では定番ですね。Howardは超スタンダードですが、Freedomレモンオイルは若干ワックス成分(後述します)が含まれているようで、以前使っていたFernandesのレモンオイルと比べると少し粘性が高めです。

個人的には指板に関しては塗布する木材毎に使い分けるのではなく、前述のオイルの性質を踏まえて、用途毎に使い分けるものだと思っています。具体的には…

・レモンオイル:指板の汚れ浮かせ/春〜夏場の湿度管理に利用
・オレンジオイル:秋〜冬場の加湿/湿度管理に利用

…といった感じで、基本的には季節毎に変えています。(勿論併用もOK)
夏場は湿気とクーラーが相殺しあって気持ち乾燥気味に傾くので、サラっとレモンオイルで撥水、冬場は乾燥+エアコンで加湿が追い付かないので、オレンジオイルでガッツリ乾燥防止、っていうガバガバ計算でメンテしてます笑

オイルをクロスに塗布し、指板上で適度に伸ばしてあげたらちょっと放置、汚れが浮いてきたら傷がつかないようにクロスや綿棒で拭き取り、足りなかったら再度塗布、これらを繰り返した後、最後は乾いたクロスで乾拭き、といった手順で指板を磨いています。
直接指板にオイルを垂らすのはおススメしません。特にフレット周りは拭き残りがあると最悪フレット浮きに繋がりかねないようなので、入念に拭き取っています。(埃などを残さないために、クロスは毛羽ついていない素材のものがおすすめです)

オイル塗布後のエボニー、美人の黒髪の如き重厚な艶感でLove…(伝われ)

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オイルは使い過ぎさえしなければ、木部に過度な負荷をかけることもなく、しっとり滑らかな綺麗な指板を維持することができます。
指板が綺麗になると、ギターが元気になったような気がしてやる気出るんですよね。ちょっと放置気味のギターがあれば、是非試してみてください!

蜜蝋ワックス

続いて蜜蝋ワックスです。こちらはオイルを塗布した後、指板を薄い膜でコーティングするようなイメージで、オイルが適度に浸透した状態を維持してくれます。

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使っているのはOrange Oilと同メーカーのHowardFeed-N-Waxです。これも定番中の定番ですね。オレンジオイルも含まれているようで、甘くいい匂いです。

記事を書くにあたって調べたところ、ギターだけでなく家具に使うもの等、定番でないワックスが多数あることを知りました。いつかはオイルみたく使い分けてみたいな。結構沼ですね笑

自分は半年くらい前に使い始めた程度なので、正直必須ではないのかなぁ、とは思っています。ただ、過度な乾燥を防止する観点から、暖房や外気で乾燥しやすい冬季には特に効果的と思いました。艶々な指板を維持できるので、メンテ後の見た目の満足度も高くなるので、これからは続けようと思っています。
使い方はオイルと同様です。オレンジオイル以上に粘性が高いので、拭き残しには要注意ですね。

ちなみに、何故かポリッシュと同じカテゴリで説明されている記事を散見するのですが、ポリッシュの主な用途は、ギター(特にボディ部)の塗装面についた汚れを落とすことが目的なので、全くの別ものです。こちらも機会があったら記事を書こうと思いますが、購入・仕様にあたってはご注意ください!

フレット磨き

さてさて、指板が終わったらお次はフレットのメンテです。正直に言うと、長いこと敬遠してきたこともあり、施工頻度は2~3年に1度程だったのですが、最近良いツールを見つけたので、フレット磨きにハマりだしました。

フレットの擦り合わせ(=研磨)でなくクリーニングなので、汚れが落ちる以外の変化は無いのですが、ピカピカのフレットだと弦のスライドも滑らかになりますし、何より折角綺麗にした指板や新品の弦に汚れを移さないで済みます。見た目も格段に良くなるので、気が向いて時間があるときに義務感フリーでやってあげれば良いかと思います。

さて、ここで我が家の激落ちくんをご紹介しましょう。

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HappichSimichrome Polishです。前述のオイルと比べてあまり聞き馴染みは薄いかもしれませんが、ドイツ製の知る人ぞ知る名品といった感じです。楽器屋の店員さんにおススメを聞いてそのまま購入したのですが、フレットどころか、水道管のサビなんかも落とせる中々イカツい性能をしているらしいです… 使用にあたっては、しっかりと指板のマスキングをしましょう。

これ、ビビるくらい汚れが落ちます。使い方はシンプルで、指板をマスキングテープでしっかり覆った後、クロスに少量塗布したポリッシュをフレットに塗布。数分放置した後、乾拭きすると…

1フレット分磨いただけでこんなに汚れが…

フレット磨き

…画像の通り、メチャメチャに汚れが落ちました。弦交換するたびにフレットは入念に拭いていたのですが、それだけじゃ落ちない汚れってあるんですね。

最終的にはここまで綺麗になりました。

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もうツルッツルのピッカピカ。写真では伝わりきらないかと思いますが、一枚皮がめくれたんじゃないかと思うくらいの輝きっぷりで、ここまでくるとチョーキングや押弦が滑らかになったのもプラシーボじゃないように思えてきます。

今回ご紹介したSimichromeに限らず、ポリッシュは全般的に強い洗浄作用を持っているので、指板のマスキングや入念な乾拭き等、オイルと比べると気を遣う要素も多く、手間もかかる割にメリットが小さいのは否めないかと思います。
ただ、ギターが綺麗に保たれていることは演奏のモチベーションにもつながりますし、効果を視認できる分、作業を通じて愛着が湧きやすくなるメンテだと思いました。難易度は決して高くないので、気が向いた際、一度で良いので是非体験して頂きたいですね。

フレットバター

最後に、色々解説されたけど、「やっぱりそんなかったるいことやってられっか!」ってなる方が一定数いらっしゃると思いましたので、そんな方にはこちら!笑

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dmi guitar labsFret Butterです。最近メジャーになってきたので、どんなものかと思い購入してみました。

簡単にいうと、上記で紹介したオイル・ワックスがけとフレット磨きを一拭きで完結できる超便利アイテムです。画像のピンクの布に油分が含まれており、これで指板を磨くわけですね。湿度保持・木部の汚れ落とし・フレット磨きのいずれも高い水準でこなしてくれるので、手っ取り早くメンテを済ませてしまいたい方、もしくはギター・ベースを多数所有している方は重宝するかと思います。
詳しい使い方はこちらのブログに綺麗にまとまっていたので、是非ご参照ください。

個人的にはメンテは苦でないので、リピートするかは未定ですが、フレットバターの甘い香りがたまらなく気に入っています笑 オイルやポリッシュ成分についての記載はあまりないですが、何が入ってるんでしょう…?

気になる方は是非!

最後に

思っていたより大分長めの記事となりました笑 ポリッシュや他のメンテについても、またいつか記事を書いてみたいですね。

今回記事を書きながら、指板やフレット周りのメンテは、あくまで楽器を良い状態で保存することに重きが置かれており、実施直後に演奏性や音質が劇的に改善しているわけではないということを改めて認識しました。

じゃぁなんでわざわざやるの?という話なのですが、直接的な施工効果以上に、メンテナンスで定期的に楽器と向き合う時間を作ることで、細かい変化や気付きを得られること、楽器への愛着が湧いてくることが、長期的に楽器ライフのQOLを高めることにつながっている、と、長くセルフメンテを続ける中で感じているからです。

最近梅雨入りし、ますますおうち時間は長くなりますが、これを機に是非皆さんセルフメンテを始めてみてはいかがでしょうか?きっと今以上に、楽器を好きになれると思います。

<ご参考リンク集>


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