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『水曜どうでしょう』の「サイコロの旅」シリーズはある意味、奇跡の引きの良さである

1. はじめに

大泉洋の大出世作『水曜どうでしょう』。その番組の方向性を決めたのは、その第1回で放送され始まった「サイコロの旅」シリーズである。「サイコロの旅1」から「6」まで、「サイコロ3」は前編・後編とあるので、(国内で行われた「サイコロの旅」は)全7回放送されたことになる。

さて、この「サイコロの旅」は、行き先の選択は常にサイコロ任せであり、特に「ミスターどうでしょう」こと鈴井貴之のサイコロの目の引きの悪さは、シリーズ中(特に後半)では、しょっちゅうネタにされている。無論、大泉洋の降る賽の目も決して良いわけではない。

確かに、「サイコロの旅」シリーズは、そのどれにおいても、深夜バスやフェリーに登場人物たちは心身を削られ、日に日に悲惨極まりない状況に陥っていき、そして全7回のうち、4回も「時間切れ終了」というエンディングを迎えている。

2. 視点を変えてみる

だが、ここで少し視点を変えてみよう。藤村Dの編集のうまさも番組の大事な要素の一つであり、仮にどのような展開になっても面白く料理していたとは思う。が、それでも、日程前半から「札幌(北海道)に帰れる(=企画終了!)」となってしまっていたら、この人気企画も盛り上がりに欠けたものになってしまっていたのではないか?

それは、ひいては、この『水曜どうでしょう』という人気番組が、史実に比して盛り上がりに欠けてしまっていた可能性にすら繋がりうることだ。

つまり、実はこの「サイコロの旅」シリーズのサイコロの目の引きは、ある意味とんでもなく良かったのではないか、という仮説だ。

そこで、「土曜日、すなわち企画の終了期限である月曜日の前々日(日程の前半)までは北海道に帰れない確率」がどれぐらいあったのか、計算してみた。

ここでひとつ注意を。この確率の計算は実は正しくはない。というのも、実施された選択の各選択肢は、企画が始まる前から決まっていたものではなく、それぞれの目の出方によって変動するものだからだ。この場合、厳密な確率はこの計算では導き出せない。あくまでここで計算する確率の数字はお遊びのものと思っていただきたい。

3. サイコロ1

サイコロ1

記念すべき人気シリーズの第1回にして、番組自体の第1回放送でもある「サイコロ1」。すべての選択に「北海道に帰る」選択肢が存在した唯一の回である。期限の1996年9月15日(月)の前々日である9月13日までの計5回の選択(上の表では白い部分)では、すべて「北海道に帰れない目」を出し続けた。結果、「土曜日までは北海道に帰れない確率」40.19%を引き当てた、と言える。

4. サイコロ2

サイコロ2

「サイコロ2」からは、藤村Dもゲームバランス的なものを考慮したような選択肢を作るようになっていく。具体的には、企画前半(上の表では白い部分)では北海道に帰れる選択肢が含まれていない選択をある程度配置し、企画後半で(上の表では灰色の部分)は高い確率で北海道に帰れるような選択肢にする選択が増える傾向だ。

そのような工夫のおかげとでもいうべきか、この回も土曜日までは北海道に帰れない。その状態が起こる確率は、55.56%であった。

なお、この「サイコロ2」で初めて「時間切れ終了」というオチを迎える。ちなみにこの「時間切れ終了」まで行き着いてしまった確率は、19.29%。これもまたかなりの引きの悪さ(よさ?)である。

5. サイコロ3(前編)

サイコロ3(その1)

この回あたりから、「北海道に帰れない」以外の面でも、引きの悪さが強調されるような選択肢がうまく組み込まれていく。詳しくは番組を見ていただきたが圧巻は長崎・ハウステンボスでの目の引きであろう。

この回の「土曜日までは北海道に帰れない確率」は57.87%であり、「時間切れ終了の確率」は24.11%であった。

6. サイコロ3(後編)

サイコロ3(その2)

「サイコロ3」は時間切れ終了に終わったために、決着をつけるべく後編が実施された。ここでは企画前半での選択の数は多いものの、北海道に帰れる選択肢がはなから入ってない選択も数多く、「土曜日までは北海道に帰れない確率」は69.44%、つまり約7割であった。これはもうそうなっても仕方がない、とも言える。

7. サイコロ4

サイコロ4

この回も、企画前半では北海道に帰れる選択肢がはなから入ってない選択が多めで、「土曜日までは北海道に帰れない確率」は69.44%であった。

この回の圧巻は「時間切れ終了の確率」の方だろう。企画後半の怒涛のチャンスタイムにも関わらずことごとく北海道に帰れない目を出し続け、時間切れで企画は終了。その確率なんと6.43%であった。

8. サイコロ5

サイコロ5

ある意味このシリーズの最高傑作とも言える展開が待っている「サイコロ5」。しかし、確率的には企画前半までに北海道に帰れなかったのは仕方がないとも言える。企画前半の4回の選択のうち、北海道に帰れる選択肢が存在したのは1回だけ。「土曜日までは北海道に帰れない確率」は83.33%であった。

9. サイコロ6

サイコロ6

「サイコロの旅」シリーズの(現時点での)最終回は時間切れ終了(確率は12.06%)で幕を閉じた。企画前半の選択の回数の多さもさることながら、かなりの頻度で「北海道へ帰る」選択肢が出現する。にも関わらず、それらを見事にくぐり抜け、「土曜日までは北海道に帰れない確率」は48.23%でという、「サイコロ1」に次ぐ、引きの悪さ、いや引きの良さであった。

10. はたして「1回も土曜日までに帰れない確率」はどれぐらいだったのか

では、大泉洋やミスターどうでしょう・鈴井貴之は、そして藤村Dや(不参加の回もあるが)嬉野Dは、国内で行われた「サイコロの旅」シリーズ全7回のうち、1回でも土曜日までに、企画終了期限の前々日までに余裕を持って、楽しい旅気分のうちに帰ることはできなかったのか??

上述の全7回の「土曜日までは北海道に帰れない確率」を掛け合わせてみよう。その確率がこれだ。

サイコロ総合

2.50%!!

つまり、「チームどうでしょう」の面々は、97%ぐらいの確率で、1回ぐらいは土曜日までに北海道に帰ることができていたはずなのである。それを見事にかいくぐり、毎回期限ギリギリまで旅を続け、「サイコロの旅」シリーズを盛り上げ続けた。

なんという引きの良さであろうか!!

11. 最後に

繰り返すが、あくまでこの確率計算は厳密なものではなく、お遊びの数字である。とはいえ、「だるま屋ウィーリー事件」や「インキー事件」、「シカでした」など数々の彼らの「引きの強さ」とともに伝説となった『水曜どうでしょう』、その伝説の末席にでも、この「2.50%」という数字を置かせてもらいたい、と『水曜どうでしょう』の番組の一ファンとして、思う次第である。

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