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ほぐす毛糸玉

出展作家ミーティングをした。

「工房からの風」に出展が決まった作家と、出展に向けて行う個人ミーティング。
全員と行うわけではなく、依頼があった時に行っている。
今年は今のところ50人中20人。
今月あと数名の方と行います。

一対一で話すことがほぼ初めての相手。
作家の中には、とても緊張している人もいて、私の仕事は、まず緊張をほぐすことから始まります。

少しでもフラットな感じになってもらったら、作家のことを尋ねます。
ここ、大事なところです。
作家の中には、いきなり How to的なことを質問してくる場合があります。
性急に方法論や展開論へと。

方法論も展開論も、基があってのこと。
そう、作家によって、私の応じ方は変わります。
(答えは変わります、とは言いません。
答えなんてないと思っているから)

現在の制作状況や、発表状況、
どんな制作をしているのか、
踏み込んで経済的なことを伺うこともあります。

そんな時に思います。
こういう会話を毎回重ねながら、私自身が育ててもらっているなぁと。

もし、この会話を聞いている人がいたら、きっと楽しそう、と思ってもらえるのでは。。
わはは、わはは、と笑顔で行っていますから。
「尋問」や「カウンセリング」にならないように、そこは場数を踏んだキャリアです。

多くの作家は、もやもやしています。
そして、自己肯定感が低いような気がします。
そこには、優しすぎて、人の意見を吸い込み過ぎることで生じる混乱があるように思います。

私はその混乱の毛糸玉の中から、その作家ならではの、生かしたらよいと思える毛糸を探し出して、引っ張りだすお手伝いをします。
なので、「答え」は、すべて作家の中にあるのであって、私が持っているものを加えるのではないんですね。

今日の方は独立して5年ほどの作家。
一通りクラフトフェアに出てみたり、少しお取引も始まったりのところ。
そこからどのように続けていくかを迷っているのですね。


こんがらがった毛糸玉から引っ張り出した、その作家が伸ばすべき糸。
その伸ばし方へのアドバイスを、私なりに精一杯行います。
話しながら、合点がいった表情を見ることができたら、それは喜びです。

今年行った20名の作家の方との会話は、私の感想、印象としては100%満足してもらえたような気がしています。
(違っていたら、ごめんなさい<m(__)m>)

「ああ、話す機会を持ってもらって、よかった!」
と思えるのは、ミーティングを終えて見送るとき。
軽やかになった肩のラインと、ほぐれた表情に、心底がんばってほしいなぁ。と思います。
ものづくりだからこそ味わえる生き生きとした醍醐味があります。
その喜びをもって作られたものが、誰かの喜びになっていく。
そんな喜び、幸福の環を実感して、信じているから、この仕事を続けています。
きれいごとかなぁ。でも、「きれいなこと」でありたいです。
きれいなものを作り、伝え、使う環なのですから。

・・・と、そんな風に少し自信をもって言えるようになったのも、ここ数年のこと。
うまく毛糸を引っ張り出せなかったり、相手の会話や様子に憤ってしまって冷静になれなかったことも幾度かはあります。
でも、かく言う私も成功例を重なることで、成長させてもらったのだと思います。
私の成功例とは、引っ張り出した糸を大切に育てて、よきものづくりになった人、作家そのもの。
その成功例を心の薪として、また新たに出会う作家を励まし、応援していきたいと思うのです。

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