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続けるのも才能のひとつ
雨の日に始まったガラスの個展。
津村里佳さん。
ヒナタノオトでは初めての個展を開いていただきました。
里佳さんとの出会いは、2009年の「工房からの風」。
その年の最年少作家だったそのひとは、子リスのように愛らしい表情で、「工房からの風」出展に向けて、その一生懸命さが際立っていました。
印象に残っているのは、開催の直前だというのに、ボランティアでお庭の手入れに加わってくださったこと。
一瞬一秒を惜しむような開催直前の時間に、弾むような表情で庭作業に勤しむ姿に驚いたのでした。
その後、声がかかるお仕事へ果敢に取り組む姿を横目で感じながら、直接お仕事をご一緒する機会はありませんでしたが、2017年、ふたたび「工房からの風」に応募をしてくださったのでした。
8年ぶりの出展の日、そのブースに目を瞠りました。作品、構成は堂々としていて、作家が何を好んで、何を求めて制作をしているかが爽やかなまでに示されていました。その場に立つ作家の表情もすっきりと佳き自信に満ちているものでした。
子リスのような愛らしさはそのままに、ガールからレディーへと美しく進化したのは、その姿だけではなかったのでした。
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もう10年以上も前のこと。
当時20代後半だったある作家の言葉が印象に残っています。
「続けるのも才能のひとつ」
美大に在学していたときに、作家としてもがいている先輩から投げかけられた言葉だと。
私自身、この仕事を30年続けてきた中で、この言葉を実感します。
「続けるのも才能のひとつ」だと。
キラリと光る感性や、優れた技能を持った作り手であったのに、数年を経てものづくりの世界から退いていった人もいます。
もちろん、ものづくりを続けることだけが是ではありませんから、別の道に幸せや人生を見出していくのは、それはそれでよいことだと思います。
それでも、続けていく中で、よき作り手、作家になっていった人にもたくさん出会いました。
共通しているのは、コツコツと日々繰り返される単調ともいえる制作の日々を、心に灯した光を信じて続けていく力があるということでしょうか。
ものづくりを続けていく過程で起こるさまざまな行く手を塞ぐものごと。
それらを越えていった人たちの生み出した果実のような作品を伝えるとともに、これからはその想いももっと伝えていこう。
里佳さんの透明の生み出す輪郭美しき作品を前に、あらためて思うのでした。