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5,000字に及ぶありがたいメッセージの真相を確かめに行った話

はじめに


「もぐおさん独身だから、イベントの潜入に行ってくれない?」

最初の一言余計だろと思いながら承諾した。
なぜならクレーム文が5,000字もあったからだ。
5,000字も怒りに身を任せて文章を書いたことがないので、僕が行ったらどんな気持ちになってしまうのか気になった。

僕は現在イベントECサイトの運営会社で働いており、今回のクレームは男女の出会いを目的としたイベント(所謂街コン)に対して送られたクレームだった。
内容について掻い摘んで書き出すと

・サイトに掲載されている主催者と違っていた
・(街コンなのに)イベントを仕切るスタッフがいなかった
・(街コンなのに)受付で検温と消毒がなかった
・(街コンなのに)無料で参加している女性がいた
・(街コンなのに)テキーラのショットを押し売りする女性スタッフがいた
・(街コンなのに)10,000~50,000円のVIP席が販売されていた
・(街コンなのに)ほとんどが誰かの紹介でパーティーに参加していた
・連絡先を交換した人に他のイベントに勧誘された

簡単に書き出してみたが、5,000字の内容ではない。
ありがたいメッセージの中身は、怒りに身を任せて支離滅裂な文章だった。感情が高ぶると、自分でもなにを言っているかわからなくなることがあるが、同じような目に遭ってほしくないという気持ちが込められていた。
わかったよ、君の怒りは十分に伝わった。あとは私たちにお任せあれ。
貴方が仰る通りのイベントかどうか実際に参加してみて確かめに行こうではないか。

というわけで実際に該当イベントが掲載されているサイトからチケット購入を進めた。実費ではない上、潜入という言葉だけだったらワクワクするが、正直最初から怪しすぎるイベントと確定している状態で行くのはかなり気が重かった。“いい出会いを探しに行くぞ”という気分にはならない。あくまでも仕事である。
ちなみに潜入する際に僕の職業を聞かれた場合はイベントEC会社で働いていると言うと不都合なので、専門商社の営業職(前職)で働いていることにする。

潜入当日

街は煌びやかなイルミネーションで照らされていた。僕は独身だからという理由でイベント潜入の大役()を担ったわけだが、この日は特段イルミネーションに照らされたカップルの姿が眩しく見えた。世間がクリスマスに向けてウキウキの中、足取りが重い僕は開始時刻のギリギリに会場に到着した。

受付「イベント参加の方ですか?」
もぐお「はい、そうです!」
受付「誰の紹介ですか?」
もぐお「○×△というサイトで申し込みました」
受付「…そうなん…ですね!(珍しいなこいつ)LINE Payの画面を見せてください!」
もぐお (7,700円の購入画面スクショを見せる)
受付「それでは下の階に進んでください!ドリンクチケットをカウンターに持っていって、1杯目のドリンクを貰ってください」

まじで検温とアルコール消毒しねえし、マスクもしてないじゃん。
しかもお前開口一番に誰の紹介か聞いてきたうえに、サイトで購入したことを不思議がってたよね?そんなに聞き慣れない日本語を喋ってたか??購入経路ぐらい把握してろや。

実際に先に進むと階段近くには白い壁紙とソファーがあり、突き当りを右に進むと黒い壁紙のエリアに着く。そこには立食スペースになっており、ドリンクカウンターとDJブースがあった。しかし、ただ音楽が流れているだけで見せかけのDJブースだった。
ドリンクの値段はアルコールは800円でソフトドリンクは500円。そこそこ種類は多く、値段も立食パーティーであれば可もなく不可もない価格だ。
料理は炊き込みご飯、サラダ、揚げ物、寿司、ケーキが出ていた。
映えないので写真は撮らなかった。(撮り忘れたとも言う)

黒い壁紙のエリアは男性が座れるスペースがなかった。
女性は無料で男性が有料の“レディース席”があった。細マッキーで“レディース席(男性は有料!!!)”って書いてあった。表記に工夫がなかった。
ありがたき5,000字のメッセージの中に記載あったVIP席は売っているのかどうか最初はよくわからなかったのだが、会場を見渡したらそれらしきものが記載あった。


よく目を凝らすと…!


VIP席売ってた~~~~~~!!!

VIP席、販売してた~~~~~!!!!!
僕のテンションとは裏腹で、細マッキーで書いてあった。
レディース席の案内もこの太さで書いてあったぞ。
ここのイベントの主催者は人を集めるだけで満足してやがる。デザインアートぐらいしろや。それかせめて透明クリアファイルじゃなくてラミネート加工しろよ。
いやその前になんで細マッキーで書いたんだよ。こんな細かったら見えねえだろうよ。太マッキー売ってるの知らねえのかよ。細マッキーは大学ノートに自分のクラスと名前を書くぐらいでしか使わないだろ。


ラブホぐらいでしか見ない照明の色

ちなみにVIP席はシャンパン付きらしく、金を使ってブイブイ言わせたいおじさんが隣に女の子を座らせて飲んでいた。
よく見たら床もソファーも傷だらけで汚いな。

開始時刻ではまだ人は多くなかったが、次第に人が増えていった。僕は特に誰とも話さずに様子を見ようと思っていたら、ある人に声をかけられた。仮にAさんとする。
Aさん「はじめまして!今日は誰の紹介できたんですか?」
もぐお「誰の紹介とかじゃなくてサイトで申し込んで来ました」
Aさん「へぇー!そんなサイトあるんですね!!」
もぐお「みなさん知り合いなんですか?」
Aさん「このパーティーはいろんな人が協力してやってるんすよ!」
もぐお「そうなんすね~!(その割には激ショボだろ)」
Aさん「あ、よかったらLINE繋がりましょうよ!ウザかったらブロックしてもいいんで!!」
もぐお (言われなくてもブロックするだろ)

若く見えようとしているおっさんだった。
おっさんのLINEは別に要らねえよと思いながらプロフィールを見ると笑いをこらえるのが大変だった。


どんな自慢だよ

写真撮っただけで自慢しちゃってるじゃん。
お前この裏でM-1の決勝やってるぞ。オズワルドは敗者復活勝ち上がって決勝で漫才やってたぞ。プロフィール画像で自慢するならこんな楽しくもねえイベントやってないで、テレビで応援しろや。
あとオズワルドの伊藤“さん”な????
岸田総理は岸田総理って言ってるのに伊藤さんだけ呼び捨てなのめちゃくちゃ気になるだろ。
胡散臭いな。

多分なにかしらの勧誘LINEが来るだろうと思いすぐにはブロックせずに放置していたらAさんからLINEがきた。


めちゃくちゃ長い

近くでやっているイベントの勧誘してきやがった。
絵文字多用してごまかしているけれど、誤字脱字あるし胡散臭いパーティーにジェントルマンは参加しないだろ。医師と歯科医師、美容外科系は別に一括りで“医師”でいいだろう。あとジェントルマンの中にYouTuberがいるけれども、逮捕され始めているやつらがジェントルマンなわけないだろ。高収入の職業ランキングから抜粋したような書き方しやがって、工夫しろ。

パーティーじゃなくて“party”なんだ

僕的にはパーティーを“party”って書いている上にpが全角のpになっていることが一番気になりました。

他にもクレーム文の中に“優しそうなシェフの恰好をしたおじさん”という文言があったので、シェフは厨房にしかいないだろと思っていた。でも噓じゃなくて本当にいた。しかもLINE交換を強制された。


お見合い写真か遺影の撮り方だろ

コック帽はさすがにしていなかったが、この格好でリュック背負っていた。それより名前の前についている青ハートの絵文字はどんな意味なんだよ。別にあなたのハートマークにはキュンとしないんだよ。
あとインスタグラムのURL貼ってあったけれど、飛べなかった。
LINEのプロフィールをバラまいているならちゃんと設定しておけよ。

まだ確認できていないことがあった。
テキーラのショットが売られていると書いてあった。
ショットグラスは見当たらないなと思い、人が増えた会場内をかき分けて進むと、大量の紙コップが置かれていた。


紙コップの中身はそう、テキーラだ

ショットグラスじゃなくて紙コップで売っていた。
さすがに人の写真は撮れなかったが、サンタコスをした胸元にタトゥーがある女性スタッフが希望者に配膳していた。
僕には押し売りしてこなかった。押し売りはありがたいメッセージをくれた方の勘違いだったかもしれないし、ヤケクソでテキーラを注文していたのかもしれない。

参加者の男女比は7:3ぐらいで最終的に人数は110名程度だったと推測される。200名規模で残りチケットが20枚程度と案内されていた割には人数が少なく、キャンセルが多かったか虚偽申告のどちらかだと考えられる。

年齢層も全体的に高く、特に20代の女性は少なかった。
若い女性はVIP席を購入していたおじさんに案内されて、自慢話を長く聞かされていた。若い男性は負債を抱えていた事業を持ち直した個人事業の自慢話と、おじさんはいい人脈を紹介するので繋がりましょうとLINEを交換しまくっており、男女の出会いを成立させるにはかなりハードルが高いイベントだと感じた。

僕はソフトドリンクを含めた4杯ほど飲み、終了時刻より少し早めに会場を後にした。料理が出ているとはいえ、ただ人を集めただけのイベントに合計10,000円程度かかっていた事実に会社の経費で参加したとはいえ悲しい気持ちになった。帰り道のイルミネーションは立ち眩みをしてしまう程まぶしく感じた。

最後に

実際に参加してみてありがたいメッセージ送ってくれた方の気持ちがよくわかった。しかもその人はお金を払って参加しているので、腸が煮えくり返るような気持ちになるだろうなと思った。そりゃ5,000字でメールするわ。俺も同じ目にあったら5,000字で記事書くと思う。ただの人を集めて満足しているようなイベントが衰退して、ちゃんとイベント運営している会社が報われるようになればいいなと願っている。

おまけ

実は勧誘してくるおっさんだけではなく、20代女性とも連絡先を交換した。年明けに飲みに行かないかと誘われたので、先日飲みに行った。
飲み始めの段階から出会ったイベントの話になり、酷くて二度と行きたくないと言っていた。そのため実は専門商社ではなく、イベントECサイトの運営会社で働いており潜入していたとネタバラシをした。もちろん嘘をついてごめんねと伝えた。若い女性が少ないイベントだったため、いろんな人と連絡先を交換したが、一番まともだったのが僕だという理由で飲みに誘ったらしい。運良すぎるだろ。
さすがにスクショは貰わなかったが、当日連絡先交換した他の男性からのLINEを見せてもらいつつお互いにイベントの文句言いながら楽しい飲み会になりましたとさ。

なお相手の女性は今恋愛に全く興味ないとのことで脈はない模様。


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