推し燃ゆ(最近読んだ本)

書店でプッシュされていた文庫本を読んだ。
芥川賞受賞作との事だ、受賞作の発表は見たことないけど本屋に行くと帯にそう書かれている本が定期的に並んでいる。
読書から離れ気味な自覚がでると本屋に行って平積みの本から1冊選んで買う習慣がある。そして、家に帰ってサイドテーブルに平積みにして満足するのだ。

朝早く起きすぎて仕事に行くまでに時間があったので積読を消費することにした。したのだが、一番上にあったのが推し燃ゆだった。
本に熱中して遅刻してはいけないので、職場近くまで行って車内で読もうと思って軽い違和感。。。

本が軽い。

おや?と思って確かめると薄い。160ページしかなかった。
しかも、パラパラと見た感じギッシリと字が詰まっているように見えない。
という訳で、1時間半程で読み終わってしまったのでこうして次の時間つぶしを始めた訳だ。

前置きが長くなった。
本の内容は生き辛さを抱える主人公の少女がアイドルの「推し活」にのめり込み、そして解放されるまでの半生を全編一人称で描写するというものだ。
勝手にミステリ的な要素があって炎上の原因に迫ったりするんだと期待して読んで居たが、半分過ぎたあたりでそういう話じゃないと気づいた。
アイドルは何時までも手の届かない存在で、憧れのままに姿を消してしまったし、そこに事件性は無くていわば良くある話に過ぎなかった。

読んでいる最中は若干苦痛だった。
主人公が脆弱すぎる。
そのくせに周囲に不満を抱いていて、現実逃避だと自覚しながら推し活して望んで苦境に陥っていく。みていて腹が立った。

でも、あとがきを読んでやっとわかった。
主人公は自分の気持ちを言葉にできない、置かれている状況を言語化して飲み込めないなかで分かり易い指針を求めていたのだ。
言われてみれば一人称で進む中で拙い表現や、大人に対する敵意。
一面を見て真理を捉えたかのような断定とちょっとアレな空気はあった。

作中でちょくちょく挟まる描写で「ふと、~~を思い出した」として、小さなころに見た虫や、過去の記憶が脳裏をよぎりその様子が描写される。
これも、主人公の理性の弱さ、集中力の無さを表現していると気づいて。
そんな彼女に対して苛立ちを覚えていた自分に寛容さが足りないなとちょっと反省した。

総合的に見て、イライラする本だった。
言い訳を重ねて何もしないのに、気を使われても相手の苛立ちを見抜いて勝手に落ち込む主人公は、中学生くらいの自分と重なる。
決して良い方向には進んで無いのに本人の意志があるせいで大人たちが矯正できない。取り返しのつかないところまで悪化してからその意志が失われて立ち上がれなくなる描写は引き込まれた。

現代の少女の内面をそれらしく書いていると感じた。
実物はもうちょっと複雑で色々考えているだろうが
おじさん視点で見ると、あぁ最近の若者ってこうだよね。という感じを受け取った。

考えてみれば私が手にもって居るのは「芥川賞」受賞作品だった。
ミステリー大賞や電撃文庫の新人賞では無いのだ、事件が起きたり痛快な冒険をしたり大どんでん返しであっと驚かせる作品を集めたコンテストではないのだから私が期待していたような展開が無くて文句を言うのは筋違い。

50年後の学生が令和所期の若者の様子を知るために当時の芥川賞作品を読もう。という目的でこの作品を読んだら完璧な役割を果たせるのでこの作品はこれでいいんだと思う。

娯楽として読んだ私は楽しくはなかった。

(書いてる途中で仕事を始めてしまって下書きで放置されていたのに気付いたので投稿。読んだのは11月頭だった。)

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