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【考察】読者のタイプと傾向の分析

ウェブ小説(特に小説投稿サイト)の読者には「いろいろな種類の人間がいる」ということを、作者は分かっているようで、意外と分かっていないのではないかな…と思うことがあります。

その「タイプの違い」により、行動に違いが出て、結果も変わってくるというのに、全て「同じタイプの読者」で考えて、その行動を読み違えているのではないかと…。

なので「読者にはどんなタイプの人間がいるのか」を「そういうタイプの読者」と「そうじゃない読者」を対比しながら考察していこうと思います。

ここでは分かりやすくするために、あえて対極的なパターンを取り上げていますが、もちろん「どちらでもない」「ちょうど両者の中間くらい」という読者はいらっしゃることと思います。

あくまで「分かりやすさのために極端な例を出している」ことを念頭に置いてお読みください。

それと、この記事…最初は「全てのタイプ」が頭の中で出揃ってから投稿しようと思ったのですが…それだといつまで経っても投稿できない気がするので、読者タイプは思いつく都度(そして思考がまとまる都度)、追加していこうと思います。


1.アカウントを持っている読者と、持っていない読者

そもそも小説投稿サイトに来る読者というのは、こんな感じでピラミッド構造になっています。↓

サイトに来る読者の全てがアカウントを持っているわけではないわけですが…

この読者のアカウントの有無、実は作者にとって、とても重要な「違い」なのです。

なぜなら、アカウントを持っている読者の行動は「数値に出やすい」ですが、アカウントを持っていない読者の行動は「数値に反映されにくい」からです。

小説投稿サイトというものは、アカウントを持っていなければできないことが多々あります。

「ブクマ」や「お気に入り」をつけること、「感想」を書くこと、「評価」や「レビュー」をつけることetc…

作者は「ブクマ」や「お気に入り」が増えることを欲し、「感想」「評価」「レビュー」を求めるものですが…

アカウントを持っていない読者には、そもそもこれらが「できない」のです。

アカウントを持たない理由は、様々あります。

まず、「アカウントを持っていなくても、小説を読むだけなら普通にできるから」という理由。

「作者をどうしても応援したい」「感想や評価やレビューをつけたい」という思いが特になく、「ただ小説が読めれば良い」というのであれば、アカウントを持つメリットも特にありません。

(「ブクマ」や「お気に入り」はブラウザのブックマークやソーシャルブクマでも代用できます。)

また、未成年やネット初心者などで「アカウント登録自体に慣れていない」場合、「登録が面倒」「個人情報を入れるのが、何だか怖い(「ここは本当に信頼できるサイトなのか?」という疑問が脳裏を過ったり…)」ということがあります。

(実際、自分も学生時代はそんな感じでした。)

もちろんアカウントを持っていないくても「PV数」などで行動が反映されることはあります。

しかし、1人が1日何ページ読もうと一定の(1人分の)ポイントしかつかないというサイトもあります。

そうやって「数値で見えにくい読者」は、作者や運営からも、そして他の読者からも「読者」として認識されにくいものです。

たとえそういった読者がどれだけ作品や作者を愛し、熱心に追っていようと、その熱意は気づかれることなく「無いもの」のように扱われてしまうのです。

「実は密かに人気がある」作品であっても、その人気が数値で表れなければ、「人気の作品」として世間に認知されることはありません。

「アカウントを持っていないと行動が示せないシステム」だと、そういう問題が発生するわけですが…

「アカウントを持っていなくても行動が示せるシステム」にしてしまうと、それはそれで不正を防ぐのが余計に困難になるので、難しいのかも知れません…。

ちなみに、アカウントを持っていても、出先でのスマホ操作などでログインせずに見ていることが多いなら「アカウントが無いのと同じこと」かと思われます…。

(そういう読者が「外出中にブラウザでブックマークした」ことに満足して、ログインした時にその小説を「お気に入り登録することを忘れる」、そもそも「PCでもブクマするということを思いつけない」というのは、結構あることかと思われます。)

2.アクションに腰の重い読者と、軽い読者

上の「1.アカウントを…」で「アカウントを持っていないことには感想も評価も付けられない」と書きましたが…

アカウントを持っていたからと言って、全てのユーザーがそういった「アクション」をしてくれるわけではありません。

気軽に感想・評価してくれる読者もいれば、そうでない読者もいます。

それは必ずしも作品自体のクオリティーが理由ではなく、読者の性格や個性にもよります。

たとえ大好きな作品・作者を見つけたとしても、性格的にアクションを起こせない読者もいるのです。

たとえば、コミュニケーションに自信の無い読者・苦手な読者は、アクションを起こすこと自体に大きな不安や迷いがあり、行動を躊躇いがちです。

また情報リテラシーの高い読者であれば、「自分の意見が誤解・曲解される可能性」「意見の合わない相手と衝突する可能性」は常に意識しているでしょうから、アクションには慎重になることでしょう。

それに、そもそも「作品・作者に対してアクションを起こす」ということ自体、思いつけない読者もいるかと思います。

「小説を読む」ことにしか意識が行かず、それだけで満足して、感想や評価などの機能は「そんな機能あったんだ?」状態な方もいるのではないかと…。

たとえ機能に気づいていたとしても「わざわざアクションしなくても、小説は読めるし」と、面倒くさがってアクションしない方は多いのではないかと…。

実際、読者の行動が見えるサイトで数値を調べてみると(下部<関連記事>参照)「アクションを起こす読者」の少なさは恐ろしいほどで、作者でもある身としては結構なショックを受けます。

(小説投稿サイトは、サイトによってだいぶ規模もユーザー数も違いますので、1つ2つのサイトだけでは参考にならないかも知れませんが…。パーセンテージ的にはどこも似たり寄ったりなのかも知れないな…と思うので…。)

<関連記事>

実は「アクションを起こす」って、とても大事なことなんですけどね…。

なぜなら、アクションで数値やコメントが示されないと、作者には「読者がいる」「作品を楽しんでもらえている」ということが、なかなか伝わらないからです。

上の「1.アカウントを…」でも書きましたが、数値やコメントなどの「目に見える結果」が表れないと、たとえ密かに人気があったとしても、なかなかそれが人に認知されません。

中にはそういった数値やコメント数だけを見て「自分の作品なんて、誰にも求められていないんだ…」と誤解し、筆を折ってしまう作者もいることでしょう。

サイトによっては作品を訪問しただけでポイントが付くものもありますし、どのページがどれだけ読まれているかが分かるサイトもあるのですが(そういうサイトであれば、少なくとも自作品が「読まれている」「訪問者がいる」ことは分かるのですが…)、そういうサイトばかりではありませんので…。

3.要素を求める読者と、ストーリーを求める読者

これは「性的な意味(※)でR18な小説」を思い浮かべていただくと、一番「分かりやすい」のではないかと思います。

※R指定は性表現についてのみのレーティングではなく、暴力描写犯罪描写にも関わってきます。
R指定付きの小説が全てエロスなものだと思ったら大間違いなのです。
念のため。

たとえば「エロスな話が読みたい」読者には、「エロスな要素」があることこそが重要で「スト―リーは添え物」むしろ「エロスの邪魔になるならストーリーなんて要らない」という方もいらっしゃるのではないかと思います。
 
どれほど素晴らしいストーリーだったとしても、エロスな要素が無い(少ない)ならば、それだけで「好みじゃない」「求めているものと違う」と評価が下がってしまう可能性があるのです。
 
反対にストーリーを求める読者にとっては、エロスなどの「要素」ばかりが強調されて「中身」の無い小説は「興醒め」に感じられることでしょう。

この場合は、いわゆる濡れ場が、どれほどテクニカルに官能的に描かれていたとしても、評価はされません。
 
分かりやすく例を挙げるなら、カップルが「結ばれるまで」の過程をじっくりゆっくり丁寧に追った小説の場合、要素(エロス)を求める派の読者は「モタモタしてじれったい、早くエロスなシーンに行け」と思うでしょうし、ストーリーを求める派の読者は「ふたりの心情がよく分かって良い、エモい」と思うのではないでしょうか(そして逆に、そういう過程が描かれずにエロスなシーンばかりの小説は、ストーリー派の読者からは「展開が唐突過ぎて、このキャラがこのキャラに惚れる意味が分からない」となるのではないかと…)。
 
両者の違いは「小説に何を求めるか」の違いであり、広い意味での「好みの違い」です。

当然ながら「“要素(だけ)を求める読者”の評価は、“ストーリーを求める読者”には全く参考にならない」ですし、逆もまた然りです。

(様々な小説のレビューを見ていると、この両者の「溝」を理解していない方が結構いらっしゃるような印象を受けるのですが…実際のところ、どうなのでしょう?)

「要素」はもちろん「エロス」だけではありません。

「萌え」や「笑い」「承認欲求」「怖さ(ホラー)」「人間の心の闇(ドロドロ展開)」など、様々なものが考えられます。

そして小説投稿サイトは構造的な問題として、「ストーリーを求める読者」の動向よりも「要素を求める読者」の動向の方が反映されやすくなっています

なぜなら、「要素の有無」はタイトルやあらすじ、タグやキーワードなどからある程度推測できますが、「ストーリーが面白いか否か」は読む前の第一印象では分かりようがないからです。

「おもしろいかどうか分からない」小説の中から「読む小説」を選ぶ際、人はどうしても「自分好みの要素がありそうかどうか」で判断してしまうものなのではないでしょうか?

(あるいは星の数や各種数値で「おもしろさ」を判断しようとする読者もいるのかも知れませんが…これまでの文章を読んでいただければ分かる通り、「他人の」評価って、自分と好みが一致しない限りは全くアテにならないので「意味が無い」んですよね…。)

小説投稿サイトではしばしば「似たような作品ばかり」ということが指摘されていますが…

それは、こうして作品が「要素」により選ばれているがゆえに起こる、自然の成り行きなのではないでしょうか?

…もっとも、同じ要素の作品ばかりが上位に固まっているとしたら、それは「そのサイトの読者層が極端に偏っている(そのサイトが多様な読者を集められていない)」ことを意味しますので、あまりよろしくないことなのですが…。

(特に、要素が偏り過ぎると、その要素が廃れた途端に、そのサイト自体も廃れかねませんので…。)

あと、そもそも「自分好みの要素」が入っていても、作者の力量によっては「おもしろくない(せっかくの要素を活かせていない)」こともあるので、「要素で作品を選ぶ」のもちょっと難アリなんですけどね…。

<関連記事:読者が偏る(一極集中する)ことの問題とリスク

4.マメに更新を追う読者と、まとめてイッキ読みの読者

これは読者の環境性格によることなのですが…

小説を毎日投稿したからと言って、全ての読者が更新のたびに、毎日読みに訪れてくれるわけではありません。

そもそも、毎日欠かさず更新をチェックできるのは「ある程度、時間にゆとりのある読者」なのではないでしょうか?

昼間は学校や会社に拘束されて、平日で自由になるのは数時間だけという読者が、そうそうマメに更新を追えるわけではありません。

また、チェックする時間があったとしても、性格的に「1日たったこれだけの文字数を、ちまちま追っていくなんて耐えられない」→「ある程度まとまってからイッキ読みしよう」という読者はいることと思います。

つまり、作者は「毎日更新しているから、毎日読みに来てもらえる」と「捕らぬ狸の皮算用」をしない方が良いということです。

ただし毎日投稿は露出が増える(人目に触れる機会が増える)という点ではメリットがあるので「意味が無い」というわけではないのですが…。

(個人的好みで言えば、1日数百文字ずつUPされるより、2000字程度以上イッキにUPしてもらえた方が読み応えがあって良いのですが…。1ページ(1回)あたりの文字数の好み人それぞれ(PCで読むかスマホで読むかによっても違う)ですので、一概には言えませんね…。)

5.作者に認知されたい読者と、認知されたくない読者

以前、何かの質問板(小説投稿サイト関連)で「お気に入り(ブクマ)登録すると、作者に名前が知られるのですか?知られずに登録する方法はありませんか?」といった質問が載っているのを見て「わかる」と思ったことがあるのですが…

自分の存在を作者に認知されたくない読者って、普通にいますよね?

もちろん、自ら堂々と名前を出して「むしろ作者にアピールしたい」くらいの読者もいるのでしょうが…

逆に作者に存在を知られたくないばかりに、お気に入り(ブクマ)を躊躇う読者もいるのです。

(小説投稿サイトはサイトによってシステムが違いますので、お気に入り(ブクマ、本棚登録)しても名前は知られないもの(アルファポリスさんやベリーズカフェさん)もあれば、勝手に名前が出てしまうもの、名前を出すかどうか選べるものなど、様々です。←たぶん、自分の使っているサイトの機能がどのタイプなのか分かっていないユーザーも多いのではないかと…。)

更新情報を受け取ったり、応援していること自体はアピールしたくても、個人としての存在は認知されたくない作者とコミュニケーションを取りたいわけではないという読者は、普通に存在するはずです。

それは作者に人として興味が無いというわけではなく「コミュニケーション自体がそんなに得意ではないから、ひっそり陰から応援するだけで良い」といった、複雑な心境なのです。

あるいは「ちょっと興味があって軽い気持ちでブクマしただけだから、ファンとして認識されるのは、ちょっと重い…」というパターンもあるかも知れません。

なので、そういう読者に対しては、「名前を伏せてお気に入りできる方法」があるなら、そのやり方を広く伝えておけば、登録を躊躇う背中を押してあげることができるのではないか…と思っています。

6.自分の好みで小説を選ぶ読者と、他人の好みで小説を選ぶ読者

この見出しを読んで「他人の好みで小説を選ぶ人間なんている?」と思った方…少し考えれば「普通にいる」ことが分かりますよ。

ちょっと「謎かけ」のようになってしまいましたが…

たとえばランキングオススメレビューの評価で読む小説を選ぶ人って、いますよね?

しかし、そのランキングの元となったユーザー、オススメやレビューを書いたユーザーが「自分と同じ好み」を持っているとは限りません。

偶然にも好みが一致していたなら、結果的に「自分の好みの小説を選んだ」ことになるのでしょうが…

それが自分の好みに合っていなかった場合は、「他人の好みに合わせて小説を選んだ」ことになります。

自分の好みとは違う「他人の好み」であれば、読んでみて「合わない」「おもしろくない」と感じることもあるでしょう。

しかし自分が「他人の好みで小説を選んでしまっている」ことにすら気づかず「何で面白くないんだろう」と疑問に感じている読者も、おそらくは存在するものと思われます。

(そしてそういう読者の何パーセントかが「ランキング上位なのに(評価が高いのに)おもしろくないなんて、どういうこと!?」というタイプのアンチになるのではないかと…。←中には原因に気づきながらも「自分好みじゃないのに上位なんて許せない」という人もいるかも知れませんが…。)

また「自分の好みとは違う」ことに気づきながらも、「他人の好みで小説を選び続ける」読者もいるものと思われます。

たとえば「自分の好みが少数派」であることに気後れを感じ、「多数派の好み」を学ぼうとするタイプですとか…

そもそも「自分の好みが分からない」「自分を持っていない」「(サイトのシステム的な問題で)好みの小説を探すのが難しい」ため、とりあえず「皆が選んでいるもの」「人気のもの」を選んでおこうとするタイプなど…。

日本人はそもそも、ランキングが好きだと言われています(逆に海外ではそれほどランキングは気にしない、日本人は「他者の意見」を気にするからそうなるのではないか…とTV番組で海外の人が語っていたのを見たことがあります)。

「自分好みのもの」「自分に合っているもの」を選ぶより、「皆(※)も選んでいる人気のもの」を選ぶことの方に満足を覚える人間も、実際のところ多いのかも知れません。

(※たとえランキング1位だとしても、全体から見れば「何割か」に過ぎないので「皆」というには語弊があるかも知れませんが…(比率が1番多いというだけで「全員」ではありませんので…)。)

7.先の見えないドキドキ・ハラハラを求める読者と、先の読めている安心感を求める読者

人間には、スリル冒険を好む人間と、むしろそういったものを避ける人間がいます。

それは、読書においても同じなのではないでしょうか?

展開の予想がつかない、ビックリするような「どんでん返し」がある…そんなスリリングな物語が好きな読者は多いことでしょう。

しかし、むしろ「ドキドキ・ハラハラしたくない」「先が分かりきっている方が安心して読めて良い」という読者もいます。

そんな「タイプの違い」は、小説の評価にも関わってくるでしょうし、それより以前の「小説選び」の段階から影響してくるはずです。

スリルや冒険を好む人間は、未知なるものを求めます。「それまで自分が思いもしなかった物語」を期待し、探し求めます。

しかし、スリル・冒険を避けるタイプの人間は「なじみのある世界観」を求めます。タイトルや「あらすじ」などから「容易に展開が読める」ものを選びます。

後者のタイプの人間は、むしろネタバレがあったり、結末が分かっている方が安心して読める(選べる)のかも知れません。

投稿小説のタグ(キーワード)の中には「ハッピーエンド」や「バッドエンド(あるいはメリーバッドエンド)」など、結末が分かってしまうタグが時々ありますが…

それはこういった「結末を先に求める読者」向けに付けられたタグなのかも知れません。

…ただ、こういった「結末が分かってしまうタグ」って、ネタバレを望まない人間にとっては、かなりビミョウなんですよね…。

たとえば「ハッピーエンド」タグが付いていたなら、途中どんなに「この先どうなってしまうんだろう?」という展開があっても、「どうせ最後はハッピーエンドなんだろう」と、せっかくのドキドキ・ハラハラ感が削がれてしまいます。

「一方を立てれば他方が立たず」で、作者でもある身としては「どんなタイプの読者にも合うタグ付けって、難しいな…」と、いつも思います。

(タイトル付けなども同様で「先の分かり過ぎるタイトル」って、未知の物語(先の読めない物語)を求める読者にとっては、むしろ逆効果なんですよね…。)

個人的には、この「スリルを求めるor安心感を求める」という違い、生まれつきの資質のみならず、その時その時の「精神状態」によっても変わってくるのではないかと思っています。

「新しいモノに挑戦する」「冒険する」には、それなりのエネルギーが必要です。

そんなチャレンジをして、もし「失敗」しても受け入れられる、「心のゆとり」が必要です。

心が元気・若々しい状態であれば、そんなエネルギーにも事欠かないでしょう。

しかし、心が疲れていると、そんなエネルギーも湧いて来ないのではないでしょうか?

精神が老いる(※)と、新しいもの(未知のもの)を受け入れづらくなる、というのはよく聞く話ですが…

※精神の老化は、実年齢とは関係ありません。
いくつになっても新しいものにチャレンジしようとする、心の若々しい人はいますし、そういう人は見た目からして若々しいと言いますよね。

そういう目線で見ると、「同じようなジャンルのものばかりが人気を得る」「新しいジャンルが出て来ない」「今までに無いタイプの物語が見出されない」というのは、何だか恐ろしいことのような感じがします…。

自分も、心の疲れている時には、よく「知っているジャンル・要素のもの」しか読みたくない時もありますが…

新しいものを拒絶して、知らず知らずのうちに精神を老化させてしまわないよう、気をつけていこうと思います。

8.複雑な物語を好む読者と、シンプルな物語しか読まない読者

文章や物語構成には「難易度」があり、読者には「読解力」というものがあります。

物語が複雑で難しければ難しいほど、読者の側に「高レベルの読解力」が求められます。

以前「小説の評価は『理解度』に左右される」という記事をUPしたことがありますが…

「物語の難易度」と「読者の読解力」のレベルに差があり過ぎた場合、そもそも評価される以前に「この話、意味が分からない」と読むのを止められてしまう可能性の方が高いです。

そして、この「物語の難易度(複雑さ)」と「読者の読解力(理解力)」の関係、実はだいぶ根の深い問題です。

なぜなら、読者がどんなに「自分に合ったレベルの物語」を求めても、タイトルや小説概要などの初見の情報だけでは、物語の難易度(複雑さ)など、分かりようがないからです。

(さらに言えば、物語の「複雑さ」は最初の数ページだけでは分からないことも多いです。クライマックスの「どんでん返し」のために、序盤はわざと複雑さを「隠す」のも、よくある手法ですし…。)

そして、複雑な物語を求める読者にとって、シンプル過ぎる物語は「物足りない」ものですし…

逆に、シンプルな物語しか読めない読者にとって、複雑過ぎる物語は「意味不明で、つまらない」ものです。

読者にとって「評価できる物語」とは、自分のレベルに「ちょうど良く合った物語」(もしくは、背伸びしたい読者にとっては「自分のレベルより『ちょっと上』くらいの物語」)なのです。

よって、物語の難易度と読者のレベルの「差」によっては、全く真逆の評価が出かねません。

レベルがちょうど良い具合に合っているかどうかは、まさに運。作品ガチャであり、読者ガチャです。

…なので、ひょっとして「平均的な読者に好まれる、平均的な物語が1番『割が良い』なんてことはないだろうか」…と、ちょっと怖い仮説が思い浮かんだりもしたのですが…

検証のしようがない(データが取れない)ので、何とも言えません(「平均的な物語って、具体的にどんな話?」という問題もありますし)…。

ちなみにこの問題、「作者の側の工夫(難しい物語を、分かりやすく読ませる)でどうにかできないだろうか?」ですとか、「単に読解力レベルの問題だけでなく、読者の『先入観』や『固定観念』が、理解を歪ませることがないだろうか?」ですとか、もっと複雑にいろいろ考えていることもあるのですが…まだ思考がまとまりきっていないので、いずれそのうち、別記事で…。

9.読書は「ひまつぶし」でしかない読者と、「読書大好き」活字中毒気味な読者

これは要するに「小説を読む」ことに対する「熱量の違い」です。

時間が余った時にする趣味が「べつに読書でなくても良い」か「読書でなければならないか」の違いです。

あるいは「小説のために労力を使えるか否か」の違いです。

読書が「ひまつぶし」で、「数ある娯楽のうちの1つ」でしかない読者は、ちょっと探してみて「気に入った作品が見つからない」となれば、簡単に他のメディア――動画サイトやマンガサイト、SNSなどに流れてしまうかも知れません。

ただの「ひまつぶし」なら、わざわざ手間ヒマかけてまで「おもしろい小説を探そう」とはしないでしょう。

TOPページやランキング等、目につきやすい場所から適当に小説を選び、そこに気に入った作品が無ければ、すぐに「小説を読む」こと自体、諦めてしまうのではないでしょうか?

小説というものに対して「熱意」や「こだわり」が無いなら、「流行」や「人気」の作品になら興味を持つかも知れませんが、「自分の好み」や「好きなジャンル」というものは、そもそも持ってすらいない(自覚していない)かも知れません。

こういう読者に小説投稿サイトに「定着」し、熱心な読者に変化してもらうためには、「本当におもしろい小説」と出会って、小説の魅力に目覚めてもらうしかありません。

一方、後者の、趣味が「読書でなければならない」人間であれば、是が非でも「自分が読みたい」小説を探し出そうとするはずです。

「自分好みの小説」が見つからないとなれば、たちまち読書に飢えてしまうはずです。

…ただし、こういうタイプの読者だからといって、必ずしも小説投稿サイトを「熱心に」巡ってくれるとは限りません。

アマチュアの作品を軽視して、小説投稿サイトというもの自体に興味を抱かず、プロ作家さんの書籍ばかりを読んでいる方もいることでしょう。

あるいは小説投稿サイトの中でも、ランキング上位や書籍化された(既に他の誰かに評価された)作品しか読まない方もいるかも知れません。

(こういう読者にサイトに「定着」してもらうためには「アマチュアの作品にも傑作はある」と気づいてもらうしかありません。)

もしくは、探したくても情報検索能力が低く、サイトの中で「小説を探す」という行為自体が難しい…という方もいるかも知れません。

(こういう読者には、小説探しのテクニックをシェアしていくしかありません。)

しかし、読書を「趣味」とする人であれば、「ひまつぶし」とは違い、小説を「深く」読み込んでくれるはずです。

小説の評価は、読者がその作品をどれだけ深く「理解」できたかによっても左右されます。

物語の行間に埋め込まれた“何か”や、深読みしなければ気づけない“何か”――それを読み解けるか否かで、真逆の感想を持たれてしまうこともあります。

おそらく、後者のような「真の意味での読書好き」がたくさん訪れないことには、「深くて面白い(一定以上の読解力が無いと面白さが分からない)」タイプの作品は、なかなか評価されないのだろうな…と思います。

10.ストライクゾーンの広い読者と、地雷だらけの読者(そして解釈違いを許せるか否か)

レビューや感想を見ていてよく思うのが「物語に正解は無い。あるのは個々人の『好き嫌い』だけ」ということです。

ある人に絶賛されている作品が、別のある人には酷評されていたり…あるいはその真逆があったり…。

そしてそんな各々の「好き嫌い」を見ていて気づくのが「人によってストライクゾーンの幅広さは全く違う」ということです。

食べ物の「好き嫌い」で「好き嫌い無く何でも食べられる人」と「好き嫌いが激しくて食べられるものが少ない偏食な人」がいるように、作品の「好き嫌い」にもタイプがあります。

「特定のジャンルにこだわることなく何でも臨機応変に楽しめる」という読者もいれば、「このジャンルの、こういう要素の物語以外は受けつけない」という読者もいます。

後者の中には、さらに「こだわり」が強過ぎて「同じジャンルであっても、自分と同じ解釈のものしか許せない」というタイプもいます。

(主人公の選ぶ行動が自分の望むものでないと許せない、主人公の境遇や性格が自分と同じ(似ている)ものでないと許せないetc…)

つまりはストライクゾーンが激狭で、それ以外は全て「地雷」というタイプです。

読者同士で意見が対立したり、他者のレビューや感想を見て「ダマされた」と思う背景には、この「ストライクゾーンの広さの違い」もあるのではないでしょうか?

「ストライクゾーン広めの読者」のオススメは、「ストライクゾーン激狭の読者」の好みには、かすりもしない可能性があります。

一方「ストライクゾーン激狭の読者」の「この作品は好みに合わない、つまらない」は、「ストライクゾーン広めの読者」からすると「なんでこの面白さが分からないんだ?」になる可能性があります。

レビューや感想を読む際には、きっとこの「ストライクゾーンの違い」も意識した方が良いのでしょうが…

そもそも自分のストライクゾーンの幅を自覚している読者自体が少ないでしょうから、難しいかも知れませんね…。

11.読みたいものはお金を払ってでも読む読者と、無料の(安い)ものしか読まない読者

とある小説投稿サイトで、不可解な現象を見たことがあります。

それは、サイト「内部」と「外部」でのランキングの「違い」です。

そのサイトはサイト内での人気小説ランキングの他に、そのサイトの運営さんで書籍化した小説の売上ランキングも出しているのですが…

そのTOP10の内容(ジャンル)が、サイト「内」の人気ランキングと、サイト「外」での売上ランキングで、だいぶ違っていたのです。

(具体的に言うと、サイト内のTOP10はほぼ女性向け、ほぼ「ざまぁ」な内容ばかりでしたが、売上の方はむしろ「ざまぁ」は少なく、男性向けもバランス良く混ざっていました。)

もちろん、サイト内ランキングとサイト外ランキングは計算の仕方も計算期間も違いますので(サイト内はサイト独自のポイント制、サイト外は週単位での売上)、そこで違いが出てしまうのも仕方がないことなのかも知れませんが…

ここで、ふと思いついた仮説があります。

それは「ひょっとして、サイト内で人気になる小説と、書籍化されて『実際に売れる』小説は『別』なのではないか?」ということです。

ご存知のように、サイト内で公開されている小説は、ほとんどが無料で読めるものばかりです。

一方、書籍化されて販売されているものは、お金を出して「購入」しなければ読むことができません

もし仮に、「サイト内でのランキングに影響するユーザー(※)」が「無料の作品なら読むけど、お金を払ってまで読む気はない」という読者ばかりだったとしたら…書籍化したとしても「購入」してはもらえないのではないでしょうか?
(ブックオ○などの中古書店では買ってくれるのかも知れませんが、それは売上には反映されません。)

※ランキングの計算方法はサイトによって違いますが、「感想やお気に入り等のアクション」と「ただ読むだけ」とで、ポイントにかなりの差がついてしまうサイトもあります。
さらに言えば、サイトに集まる読者の中で「アクションを行う」のは、ごく一部のユーザーのみです。
(アカウントを持たない「アカ無し読み専」は、ほとんどのサイトではアクションを起こすこともできません。)
某サイトでは全ユーザー中、レビューをしたことのある読者はわずか1%だけというデータが得られています。↓

もう1つ気になったのが、サイト内ランキングの上位作品に「既婚女性層」を思わせる要素が並んでいたことです。

一方でサイト外のランキングは、未婚の男女にも読まれそうな内容の作品が多く入っていました。

そこで何となく思ったのが、「『独身者層の方が、自分の趣味にお金を使いやすい』は、小説コンテンツでも言えることなのではないか?」ということです。

お金の自由度の高い独身者層に比べ、家計に頭を悩ませる既婚者層は、お金の使い道によりシビアになるのではないでしょうか?
(昨今の厳しい経済事情を考えると、余計に…。)

ひょっとすると、昨今サイトに「似たようなジャンルの作品が溢れている」ことも、「小説にお金を使わない」層を増やしているかも知れません。

好きな作品と、同じようなジャンル・同じような内容で、クオリティーもさほど変わらない「無料」の作品がサイトに溢れていたとしたら…

わざわざお金を払って「有料」の作品を買うアドバンテージがあるでしょうか?

節約志向の人間なら特に「少しくらい何かが違ってても、無料で読めるこっちの方がいいや」となるのではないでしょうか?

…以上はあくまで「仮説」に過ぎないのですが、実際のところ「無料だから読んでいる」「お金を払ってまで読まない」という層は必ずいると思われます。

(「読まない」と言うより、経済的理由で「読めない」と言った方が正しいかも知れませんが。)

「あんなに人気の作品が書籍化されたのに、なぜ売れない?」という現象の裏には、実はこんな「お金を出す読者・出さない読者」問題があったりするのかも知れません。


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