パティ_オースティン

<茫漠たる手前勝手なCD名盤ご紹介>#7

今回はこのマガジン初の女性ミュージシャンで。

パティ・オースティン 1976年発売のデビューアルバム『End Of A Rainbow』またも発表40周年。

ようやくこの超がつくほど大好きな名盤を買い直せた。届いて改めて聴き直して、ため息が出るほど素晴らしい。

これは2009年にCTIレーベル創始者クリード・テイラーがエンジニアと組んでリマスタリングし、日本でCTIの権利を持つキングレコードから発売されたもの。CDのオビには「注意!この音は輸入盤では手に入りません」とわざわざ書かれている。

ただこのヴァージョンは発売売り切りとなったらしく、新品がamazonで1万円近くで取引されている驚。僕は中古でこの2009年盤をかなり安く購入した。

さてパティ・オースティンが70年代に数多く存在し、認知されている黒人女性ヴォーカリストと決定的に違うのは、彼女がシンガーソングライターであることだ。

このソロデビュー盤でパティ自身が9曲中8曲を作詞作曲している。オリジナル作品を1stアルバムでここまで採用するのは、当時では珍しい事だ。

幼少のころから才能を認められ(4歳にしてアポロ・シアターにてデビュー、5歳の時にRCAレコードと契約)、十代でレコーディングやコマーシャルのバックコーラス等で十分なキャリアを積んできたパティ・オースティン。

ソロデヴューを後押しした御大クリード・テイラーが自らプロデュースに関わっているのも、そのオリジナル作品群を聴けばまことに納得出来る。

とにかく一曲目の”Say You Love Me”からあまりにも素敵で、おそらくミニー・リパートンの「Lovin' You」にインスパイアされて出来たのであろうと想像するが、聴けば聴くほど味わい深い癒しの名曲である。

ストリングスで繋がる二曲目の”In My Life”以降も、デヴィッド・マシューズの職人芸のアレンジに支えられ良く出来たメロディの数々で、当時日本のシンガーソングライターにも相当の影響を与えたと記憶している。

唯一のカヴァー4曲目”More Today Than Yesterday”もPOP感あって楽しい一曲だが、次の5曲目”Give It Time”のアレンジの軽やかさとメロディセンスは哀愁のあるサビと相まって人気曲だった。チャック・レイニーの彼らしいBassプレイで二度美味しい。

またもストリングスで繋がる6曲目”There is No Time”は僕のツボのメロディラインで大好きな名曲。他も捨て曲など一切無い、一枚通してしっかりと聴ける名作となっている。

もちろんパティの歌声は巧さといい、艶といい、伸びといい、それまでにかなりなキャリアを積んだその確かさは、ただただ素晴らしいとしか言えない。

REC参加ミュージシャンはむろん当時のNYの一流プレイヤーばかり。

エリック・ゲイル、スティーヴ・カーン(G)、リチャード・ティー、バリー・マイルス(Key)、ウイル・リー、チャック・レイニー(Bass)、スティーブ・ガッド、アンディ・ニューマーク(Dr)、ラルフ・マクドナルド(Per)、マイケル・ブレッカー(T・Sax)、ランディ・ブレッカ-(Trumpet)などなど「Stuff」系+αの面々。そしてコーラスチーム及びストリングスセクションもアレンジの巧みさも併せ、ほんとに良い演奏をしているので聴き所でもある。あ、このアルバムのリチャード・ティーのピアノは間違いなく必聴。

翌1977年にリリースした『Havana Candy』もデイブ・グルーシンと組んだ素晴らしいアルバムだが、僕はこのデビュー盤の方が好き。

以降もパティ・オースティンはソロ以外でも、その類まれな歌唱表現力で様々なセッションに呼ばれ、マイケル・ジャクソンやジョージ・ベンソンともデュエットしている。

そしてクインシー・ジョーンズにも可愛がられ、1981年クインシー・ジョーンズの大ヒット名盤『The Dude』(邦題:愛のコリーダ)に収録された”RAZZAMATAZZ”でメインヴォーカルを披露。

*これは日本公演でのライブヴァージョン。素晴らしい。

また1991年、まだバブリーな時代に松田聖子トリビュートアルバムに呼ばれ、英訳版”赤いスイートピー”で参加している。

*Patti Austin ”RED SWEET PEA”タイトルそのままだが、意外といい笑。

今だ現役のパティが、デヴュー時からいかに才能に満ち溢れていたか、このアルバムを聴けばその理由が判るというものだ。

ちなみに現在amazonで2013年リリースのブルースペックCD盤が1000円弱で購入可能

とにかく女性Vo好きのリスナーの方はもちろん、ソングライター・ヴォーカリスト志望の方々にも、この名曲に溢れたPOPな一枚の御一聴をぜひオススメします。

この稿終わり

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