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<茫漠たる手前勝手なCD名盤ご紹介>#17

いきなり90年代初頭。とにかく長文です。止めるなら今のうち笑。

Guns N' Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ)1991年発表『Use Your Illusion I&Ⅱ』

『Use Your Illusion I』

『Use Your Illusion Ⅱ』

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僕が小学6年、1969年に友人宅で聴いた『LED ZEPPELIN II』の衝撃から延々と続く、英米HR/HM、特にハードロックに胸震える長い旅は、ある意味このアルバムで終了したと言える。

あまりにも個人的な価値観で恐縮だが、メタル系・パンク系と違い、売れた(売れる)「ハードロックバンド」はどこかの時期にポップを注入される。

それは全く悪いわけでは無く、広がるマーケットとユーザー層にアピールするのは商業的に最重要な事だ。

90年代以降、1992年Bon Joviの『Keep The Faith』は良質なポップアルバムだったし、1993年Aerosmithの『Get a Grip』もバラードを中心に外部ライターとの共作が多いコマーシャルなハードポップアルバムの傑作だった。

Mr.BIGもExtremeもVan Halenも、ある意味、商業的価値観を重要視する、グレードの高いハードポップバンドへ変容していった。

それはそれで大好きだったし、ハードロックテイストを散りばめた内容の濃い、文句のつけようがない商業ロックで、当時は本当に良く聴いた。

しかし、同時期その他多くのHR/HMバンドが中庸になっていく中、過去の衝撃の本質を持つアルバム、僕にとっての「ロック魂」を持ち得た最後の作品が91年のGuns N' Rosesによる、この『Use Your Illusion I&Ⅱ』である。

それは80年代最後に登場し、多少の狂気をはらんだ自己実現を目指して、成功を勝ち得たロックンローラー達の全てを出し尽くしたアルバムであった。

僕が当時主流のパンクロックのだらしなさとうさん臭さに飽き飽きして、全くロックの新譜を聴かなくなっていた80年代終盤、いつの間にかにGuns N' RosesはLAメタルの潮流を掻い潜って、幸運なメンバー達との出会いを果たしデヴューしていた。

1987年7月、Guns N' Rosesのデヴューアルバム『Appetite for Destruction』が全米でリリースされた。ようやくチャートに登場したのが同年8月29日で、182位であった。このデヴュー盤は翌88年8月、50週後にしてようやく全米1位を獲得する事になる。

『Appetite for Destruction』

シングルカットされた"Sweet Child o' Mine"も全米1位となるが、リリース時は76位、"Welcome to the Jungle"も全米7位まで登るが、リリース時は58位であった。

これらのロック史に永遠に残る名曲を含む『Appetite for Destruction』はゆっくりと全米から世界に浸透していき、静かにその当時のロック・マーケット全てを制圧した。

快進撃は長期にわたり、勝てるものはほぼ皆無だった。

全世界で2800万枚以上を売り上げた、このデヴュー作を知らない方は少ないだろうが、アクセル・ローズのヴォーカリングはそれまでの誰でもないハードロックヴォーカルを提示し、ロックの次元を昇華させた。

スラッシュのギターはその音色の太さと計算されたプレイとフレーズで世界中のギタリストを、ある種の混乱に陥れた。

翌88年、繋ぎとして既存の初期作とアコースティック新録音を加えた8曲入りミニアルバム『GN'R Lies』を発売し、全米2位。

そして様々なライブ・ギグやTV出演をこなしながらも、毎回のようにメンバーが問題を起こし、ロックバンドとは何たるかを証明しつつ、1990年、新ドラマー、マット・ソーラムとKeyディジー・リードを加えた6人で本作『Use Your Illusion I&Ⅱ』のレコーディングに突入する。

バンドとして最も脂の乗った時期、溜まっていたマグマが噴き出すような勢いでレコーディングされた楽曲の数々。

「I&Ⅱ」併せて30曲、2時間半を超す内容は凄まじく、僕にとってはポップ感のかけらもない「ハードロック」の存在を指し示すものであった。

ウィングスのヒット曲、ポールが書いた"Live and Let Die"も、ディランの名曲でクラプトン作を経てカヴァーされた "Knockin' on Heaven's Door"もどうあがいても「ロック魂」満載である。

とはいえ、通して聴き込むにはかなりの精神力が必要で、よっぽど余裕がないと僕にも厳しい。

さらに、デヴュー盤『Appetite for Destruction』よりも一般的には評価が低いのも判る気がする。ただ出し切ったからだ。

1991年9月に、4年ぶりの新作として同時発売されたこの2部作は、全米・全英1位を含む全世界でチャートを席巻し、当然の如く併せて3000万枚を超える大ヒットアルバムとなった。

しかし、ギタリストのイジー・ストラドリンが脱退。

そして同年からスタートした2年半を超える世界ツアー「Use Your Illusion World Tour 」をギルビー・クラークを加えて敢行する。

1992年2月、東京ドームで3夜連続公演が行われ、翌93年1月も同ドームで、3夜行われた。

僕は幸運にもそのライブに行く事が出来たが、その超強力なパフォーマンスにただただ圧倒されるしかなかった。生でライブを体験し、その後TV放映された東京公演のライブビデオを録画し、VHSで幾度となく観たが、その度に「ああ、ここが絶頂だ、彼らにこれ以上のライブは出来ない・・」と悲しくも感じたものだ。どんなバンドにも時期的な「頂点」が存在する。91年~93年が、Guns N' Rosesのバンドパフォーマンスとして「絶対的な全盛期」だったとしか思えない・・。。

「Use Your Illusion World Tour 」は全世界の会場で寸分たがわぬステージセットを組み上げ、上下(かみしも)に作られたお立ち台から、アクセル・ローズが本当に全速力で、逆位置のお立ち台に歌いながら駆け抜ける。スラッシュはここぞという所でお立ち台からギター抱えたまま飛び降りる。

例え目をつむっていても、そのアクションが出来るようにセットの寸法が全て決まっているのだ。

アクセルは特注のマイクスタンドを幾度もステージ奥に放り投げ、その度にローディが拾い上げ定位置に戻す。何十秒間の間奏で衣装チェンジを繰り返す。

アクセル・ローズが弾くグランドピアノのプレイは指の曲がり方まで見事で繊細だ。そしてコーラスとホーンセクションの女性たち・・。

まさに全身全霊をかけたライブパフォーマンスであり、セットリストであった。

*92年東京公演。これがyoutubeで観られるなんて幸せな時代だ・・。

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燃え尽きたのだろう。長期ツアーを行った人気バンドの宿命である。

Guns N' Rosesはその後お決まりの分裂騒動・訴訟騒ぎ・メンバー脱退を繰り返し、パンク物含めアルバムも何枚かリリースしているが、人気も低迷していく。

やはりその手のバンドの全盛期間は5、6年が限界なのだろうか。生き残る手立てはポップ感を取り入れる事なのだろうか。

どちらにしてもアクセル・ローズには無理な注文だろう。

『Appetite for Destruction』でロック史を塗り替え、『Use Your Illusion I&Ⅱ』で頂点を極めたGuns N' Rosesはそういう意味でも、僕にとって最後の本質的なハードロックバンドであった。

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2016年再始動したGuns N' Rosesは、今年2017年1月、再来日公演が決定している。僕は92年公演が上書きされたくないので、行かないと決めている。

そうです、ジジイの自己保身です、笑ってやって下さい。

とはいえ25年の月日を経て待ち望んでいたファンも多い。願わくば、後ろ指をさされないパフォーマンスを期待する・・。

この稿終わり。

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