ダニー_ハサウェイlive

<茫漠たる手前勝手なCD名盤ご紹介>#13

なかなかの長文だが、ぜひ最後までお付き合いを。

ダニー・ハサウェイ 1972年発表『Live』

この名盤が2013年リマスタリングされ、ワーナーから1000円で発売されているのを見つければ、これは自動的にポチるしかない笑。

*何気ないジャケットだが、鮮明な記憶・・。

「ライブ盤」というジャンルにおいて、知名度・内容ともに確実に「最高峰」と言える名作中の名作である。

若い人でもこのジャケットと、収録された「What's Going On」や「You've Got A Friend」などのパフォーマンスはさすがに知っている方も多いはずだ。

*ご存じマーヴィン・ゲイの名曲カヴァー。オリジナルよりもこのヴァージョンで認識している方がいかに多い事か・・笑。

*こちらはキャロルキングのあまりに有名な作品。イントロ始まっての観客の歓声だけで、すでにグッとくる名パフォーマンス。

★ ★ ★ ★ ★

 何度も書いていて恐縮だが、僕は1976年大学二年に進級し、19才で下北沢に移り住んだ。

その頃レコードを掛けて、お酒を飲んだり軽いおつまみを楽しめる、深夜まで営業している音楽バーが、下北沢には十数軒はあった。

様々な店に先輩や友達、または一人で飲み歩いたが、どの店にいってもこのレコードは必ず置いてあり、ジャケットが壁に掛かっているのは当然で、一日一回はターンテーブルに載せる、忙しいとか困ったらとりあえず選ぶってのが当たり前の一枚だった。

当時の下北沢のライブハウスは下北ロフトがあるくらいで、主流はロック、フォークロック、ブルースなどで、ソウルっぽい事をやっている人達は意外と少数派だったと思う。

しかし音楽バーなどのお店で流す洋楽は別で、黒人物ではレイ・チャールズ、マーヴィン・ゲイ、そしてこのダニー・ハサウェイは下北沢のどこかのお店で常に流れていた。

ましてや、1979年年明けに彼の死去のニュースが流れ、追悼の意を込めて、それまで以上に毎日のようにレコードを掛けていたのは当然であった・・。

という経緯もあり、その時期いろんなお店で手に取り、散々聴いてきたこのアルバム『Live』は、あまりにも身近でアナログ盤も自分で購入した記憶が無く、実は僕個人にとって初のパッケージ入手かも知れない。・・は?笑。

ダニー・ハサウェイは1945年シカゴに生まれ、大学でクラシックを学び、1970年デビュー、71年ロバータ・フラックとのデュオ「You've Got a Friend」が大ヒット。

しかしその後病気に苦しみ、1979年1月NYのホテルから転落して33才で死去した。R.I.P・・。

存命中に出したアルバムはスタジオ盤が4枚、そしてライブ盤がこの1972年発表の『Live』一枚である。

この『Live』に残された音源の素晴らしさや各ミュージシャンの超強力なグルーヴ、そして当然ながらダニー・ハサウェイの唄とウーリッツァーピアノの演奏力の凄さは、

*Wurlitzer 210 Electric Piano

僕にはとても文章で表現出来ないので「とにかく聴け!」としか言えない。

さらにこのリマスター再発盤の解説を読み、参加ミュージシャンのクレジットを見て、そのメンバーの名前の数々に大きなショックを受けた。

もちろん、すでに「当然」ご存じの方は僕の無知を笑って下さい・・。

僕がスタジオ系のミュージシャンに興味を持ちだしたのは77年頃だが、対象はウエストコースト・AOR系がほとんどであり、当時の黒人ソウル系のセッションミュージシャンに対してはあまりに不勉強だった。

いろんなお店にあったこの『Live』の日本発売のアナログ盤にも解説は付いていたはずだし、読んでもいるはずだ。ただそこに参加ミュージシャン名が書かれていたとしても、当時は知らない名前で、悲しい事に今まで全く記憶に残っていなかったのだ。

このアルバムはA面がLA、B面がNYの小さなクラブで録音されている。

LAのリードギターがフィル・アップチャーチで、NYはコーネル・デュプリーである。ここまでは二人とも当時の売れっ子ギタリストであり、さもありなんという感じで驚きはさほど無い。多分この二人の名前くらいは当時も認識していた気がする。

LA・NYとも共通の参加メンバーはマイク・ハワード(G)、アール・デュロイン(Conga)で二人とも、もう本当に素晴らしい演奏をしている。

しかし本当の驚きはリズム隊である。

Bassはまだ無名の当時25才、その後セッション・スタジオベーシストとして一世を風靡するウイリー・ウイークスその人であり、Drumsはなんと当時16才!のフレッド・ホワイト(その後EW&Fに参加、現バンドリーダー。モーリス・ホワイトの実弟)なのである。

え?そんなの常識?知らないお前がモグリ同然?ラスト曲の4分近くのウイリー・ウイークスの伝説のベースソロとかあまりにも有名?このアルバムがきっかけで二人とも超売れっ子になった・・? あわわわ・・。

まったく「なんてこったい!」と両手を挙げて天を見上げるしかない事実に、しばし自分自身が茫然自失となった訳だ・・。

パッケージ盤を持っていないと、こういう無様な落とし穴にハマるんですよ、みなさん・・。笑

ともあれ、この再発盤のリマスタリングの出来はかなり良いと思う。

amazonの販売ページはこちら。なんと現在は935円・・。

マスターテープのノイズ等、時代が時代だけに仕方のない部分もあるが、この音源を少なくとも現代の効率化されたオーディオの爆音で聴いても、遜色のないレベルにまでマスタリングで突っ込んである。

このライブ盤に残されたダニー・ハサウェイさらにミュージシャン各人と、ライブに参加したオーディエンスとの類い希な一体感はもはや常軌を逸している。

ソウルミュージックとはどういう事なのか、この一枚に凝縮されていると言っても過言ではない。

実は知人のプロミュージシャンの方々が、この『Live』をカヴァーした、トリビュートライブを定期的に都内ライブハウスで行っている。

それくらいの価値を持つ、どんなに年月が経とうが失われる事のない輝きと、内容が詰まったアルバムなのである。

「あ、ソウルとかR&Bとか好きで良く歌ってますー。え?誰かって?そうですねやっぱエグザイルとかケミストリーとか、あ、久保田利伸とかも知ってますよー。え?ダニー・ハサウェイ?・・・えと有名な人なんですか?」

若い方は、なんて事にはならないようにして頂きたい・・笑。

この稿おわり。

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