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<茫漠たる手前勝手なCD名盤ご紹介>#1

まずはポップ・ファンクバンドの最高峰、Earth,Wind and Fire (アース・ウィンド・アンド・ファイアー、略称EW&F)の70年代末「神」作品を二枚ご紹介。

1977年発売、『All 'N All』(太陽神)、そして 1979年発売『I Am』(黙示録)。

1977年発売、『All 'N All』(太陽神)

1979年発売、『I Am』(黙示録)

1970年代初頭から英米では、白人ロックは様々なバンドの結成、ヒットが相次ぎ、ハードロック・プログレ・初期パンクまでもが、その時々で隆盛を極め、市場を席巻していた。

またセールス的には少し地味だが、カントリー・サザンロック・ウエストコースト~AORの流れの中でも、シンガーソングライター系を含む各バンド・ミュージシャンが活躍し、全米チャートを賑わせていた。

ただ黒人のソウル・ファンク物はモータウンブームも過ぎ、70年代前半は日本国内では散発的なヒットに留まり、いまいちの感じだった。

しかも70年代前~中盤以降、英国白人ファンクバンド、アヴェレージ・ホワイト・バンド(Average White Band)の全米大ヒット、さらに白人系デュオ、ホール&オーツなどが「ブルーアイド・ソウル」と呼ばれ台頭を初め、アメリカでは黒人音楽の領域を侵し始めていた。

しかし、1976年スティーヴィー・ワンダーがとてつもない名盤『キー・オブ・ライフ』(Songs in the Key of Life)を発表し全米で大ヒット。

同年発表のイーグルスの弩級大名盤『ホテル・カリフォルニア』(Hotel California)と首位攻防戦を続けた頃から、ファンクサウンドを経て黒人中心のディスコブームの兆しが見え始めてきた。

そして、ついに77年EW&F、9枚目のアルバム『All 'N All』(太陽神)から"Fantasy"(宇宙のファンタジー)が日本国内で爆発的大ヒット。

その後数年間、以降の一連のヒット曲含め、ディスコ大ブームの渦中、日本中のディスコ店での超ヘビロテ曲と化した。と言う経緯もあり、ただのディスコ物ヒットバンドと誤解している若い方もいるかもなので、すこし釈明を・・。

EW&Fはそれまでも一応の認知はあり、全米一位のヒットアルバムも出している。

が、76年にリーダーのモーリス・ホワイトが「カリンバ・エンタテインメント」を設立してから、大きく「コマーシャル」を意識したのは間違いなく、それまでの経験値を踏まえ時流を読んだ上で、70年代末にこの二枚をまさしく「神懸かり」的に制作した。

全米でももちろん大ヒット。『All 'N All』(太陽神)はポップチャート3位、R&Bチャート1位を記録。

とにかくアートワークに長岡秀星のイラストを起用した所あたりから、その時期の彼の才覚が垣間見える。

二枚ともシングルヒット曲の計算されつくした「売れ線」狙いを始め、それ以外のナンバーも楽曲・演奏の凄さ、インタールードの付け方、リズムの在り方、カリンバの使いっぷり等そして、MIXバランス、楽器の音質、はては曲間の在り方に至るまで、その制作力と内容が当時ミュージシャンやスタッフの間で密かに語り継がれていた。

なぜ密かかというと、ディスコとかで流行っているバンドや曲を語るのはかっこ悪いから笑。

とはいえ、当時の日本の楽曲でEW&Fのサウンドのパクリはそれは数多くあり、もういちいち挙げられないほど。まんまコンセプトをパクったバンドもいたなー笑。

そもそも僕が19歳でBassを止めたのは、それ以前のアルバムでEW&FのBassヴァーダイン・ホワイトの演奏聴いて「あ、もう無理です。こんなの出来ません」と悟ったからだ笑。

その他VoのF・ベイリーの超絶ファルセットボイスやGアル・マッケイの16beatカッティングの技巧と音色に心が震え、躍動するコーラスワーク、フェニックス・ホーンズのジェリー・ヘイによるブラスアレンジや、TOMTOM84のストリングスアレンジなど「どうしたらこんな事思いつくの?」と宇宙の広さを思い知った「神作」の二枚だったのだ。

さらに1978年、EW&F最大のシングルヒットとなる”September”を発表。(オリジナルアルバムには未収録)世界中でディスコヒット曲として知らない人はいない圧倒的な代表曲となっている。

そしてモーリスは何を閃いたか、79年発表、R&Bチャート1位を記録した『I Am』(黙示録)では才能の片鱗を出し始めていた(白人の)デヴィッド・フォスター、ジェイ・グレイドン、ビル・チャンプリンらの共作曲を起用し、レガシーとなる名曲After the Love Has Goneを作り上げ、グラミーを獲得。
AOR領域にまで食指を伸ばす、合わせ技を見せた。

TOTOのスティーブ・ルカサーを1980年発表次作アルバム『Faces』でも続けて起用するなど、人種に関わらない、最も旬な才能をチョイスするプロデュースワークにも成功している。

モーリス・ホワイトが、残念ながら2016年2月に亡くなったのは記憶に新しいところ。R.I.P

とにかくこの二枚のEW&Fの「神」アルバムはいたるところにファーストアイデアが満載の「ディスコファンク」「ブラコン」「アフロビート」その他黒人系ジャンルの代表作となり、それらサウンドの礎となったのである。

ぜひアルバムを通して聴く事で、その神がかり的凄さと音楽的意義を感じ取ってほしい。今聴いてもただ素晴らしい・・。

こんな感じで70年代末はロックだけでなく、ソウルファンクグループやその他のミュージシャンも目を見張る進歩とジャンルの融合を遂げつつあり、レコードセールスの増加と相まって怒濤の80年代へなだれ込んでいく。

この稿終わり。

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