見出し画像

世の中にはいろんな考え方があるんだよ。 私は毎日神様に試されています。

我が家で一番大人な娘・M子は、私と一緒にこれまで何度も修羅場をくぐり抜けてきた。なるべく見せないようにしようとは思っていたが、小学生の頃は何度か私と夫の言い争いを見て、部屋の隅で体育ずわりで涙ぐんでいた。一人っ子で、気を紛らわす兄弟もいない。

夫(父親)はM子をとてもかわいがっていたけど、家族とは、親子とは、○○とはこういうもの、という頑ななポリシーがあり、それが極端に古い。自分の考え方に合っていればとても穏やかで機嫌がいいが、少しでも外れるといきなり怒り出し、「非常識だ!」と荒れる。

娘の大学進学、就職に関しても気にいらないから、それはそれは大変だった。昭和24年生まれの夫は「県内の大学を出たら公務員かそこそこの企業の正社員。世間で言う結婚適齢期に結婚して孫を産んで…」と言う。自分が就職した40年前の考え方から進化していない。

娘は「県外の外国語大学へ行って卒業後自分でお金を貯めて語学留学したい(親のお金だけで行くのは申し訳ないから)。そしてその語学を生かした仕事がしたい。」という考えだったから、「人の道を外れた」とコテンパンにやられた。アルバイトやフリーターなんてとんでもない。

それに、私とM子で進路を話し合い、決まってから父親に言ったのが気にいらなかった。蚊帳の外である。それは悪かったかなとは思うが、すでに「難しい父親」だったから、相談どころではなかった。

あらゆることが不確かな社会で、「正社員なら収入が保障されている」という考え方は一理ある(令和2年ではそれも怪しいが)。しかし私は、M子がいい加減な考えでないことはよくわかっていたから、「本気なら自分の言葉でお父さんに伝えろ。」と言ってきた。M子も必死だったし、その繰り返しのおかげか、M子のプレゼン力はかなり鍛えられた。「働き出してどんなに難しい上司がいても、平気だと思う。」とM子は言う。

夫は思ったことをズバリ言う。容赦ない。あれだけコテンパンにやられたら、普通は家に寄り付かなくなると思うけど、自分が家に寄りつかなくなったら、家族がバラバラになってしまうことを娘は嫌がった。よくメンタルを病まなかったことだ。

今から5年ほど前、M子が大学卒業後の進路について父親にコテンパンにやられた後、私と夫の間もギクシャクしていたから、電話で夜な夜な、夫=父親の攻略法を話し合っていた。その時、M子がこう言った。

「お母さんと私は考え方が同じだから、二人して間違った方向に進んでしまうかもしれない。そうならないように、神様がお父さんの体を借りて忠告してくれてるのかも。お父さんに正反対のことを言わせて、『本当にそれでいいのか?』って考えさせてくれてるのかもしれない。神様はお父さんに正反対のことを言わせて、世の中には違う考え方もあるのだということを伝えようとしているんだよ。だからお父さんは言うだけ言ったら、何もなかったかのようにすぐ元に戻る。あの瞬間、神様が抜けていったのよ。本当のお父さんは、あんなにきついことを言う人じゃないのかも。」

神様が抜けた。
娘が言ったこの言葉に私は至極納得した。
夜中に電話でそんな話をしながら、娘と私は泣いた。
切ないような、嬉しいような、少し何かが変わったような。

うちは特に何かの信仰があるわけではないけれど、私が「心のヨガ」の話をずっと聞かせていたからかなあ。私は娘の言葉に何度も救われている。

キレて家を出て行くという道もある。
でも、神様の仕業だと考えたら、もう少しやって行けそうな気がするのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?