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次世代のライブに必要な2つの要素

音楽業界がCDモデルからストリーミングモデルに移行して久しい昨今。CDなどの「情報」としての音楽では売り上げが上がらなくなってきている中、ライブなどの「体験」としての音楽は勢いを増していると言う。

数年前には、小橋賢児さんがULTRA JAPANを日本で初めて開催し、フジロックも毎年のように盛況を記録している。

そこで、ライブの何がそんなに人々を熱狂させるのかと言うことを探りに、先日きゃりーぱみゅぱみゅさんと中田ヤスタカさん(YSTK×KPP)、Perfumeさんのライブに行ってきた。

そこで得た感覚と体験をもとに今後の体験型エンターテイメントの行く末を考えていこうと思う。

「ライブの価値」の変化

まずは僕の正直な感想から言うと、面白かったけどライブと言うエンターテイメントは未だに平成や昭和の時代のままだなと感じた。その理由は以下の通りである。

①エンターテイメントの一方通行
②音楽の変化によるライブの価値の希薄化

である。これらについて、それぞれ解説していく。

自分が何もできないものはつまらない

まずは、「①エンターテイメントの一方通行」だが、これは未だにライブが“昔のお客さん”を想定して作られたエンターテイメントになっている(昔のまま思考停止している)のがこの問題を生んでいる。

“昔のお客さん”は、今と違ってテレビ(マスメディア)と一般人の人の距離感が遠かった。そのため、ライブとは生でその架空だと思っていた人物を見ることができるという点においても価値を届けることができたが、ライブが当たり前になり、インターネット環境の発達やSNS等の登場によって「どこに行けば会えるかわかる時代」においては、本物の人に会えるという価値はもはやそれほど機能しなくなっている。

その昨日の低下に伴って、パフォーマンス側は「本物がいる特別感」で場を持たせられる時間が近くなり、一方通行だけで2~3時間をもたすのは正直しんどくなったように感じる。

多分、1時間も本物の人を見ていれば正直どんな人でも慣れてくるだろうし、それが遠い座席とからとなったら、近くにあるスマホの中で展開されている身近な経済圏の話題の方が気になってくるのは当たり前の話である。

もう、一方的だけで終わるライブなどには価値がなく、求めているのは従来のライブの良さに加えて、自分が参加できること(今目の前で起きているライブが身近な経済圏の話題になること)である。

正直、新しい世代は自分が参加できないもの(自分の思いが全く反映されないもの)では全く動かず、どんなに規模が小さくてもいいから、自分の思いが反映される方に動くのだと思う。そして、その反映度が高ければ高いほど指数関数的に新しい世代はそれを魅力的に感じる性質を持ち始めている。

テレビ世代なら一方通行でもまだいいのかもしれないが、スマホやその先にあるデバイスを使っている世代にとっては、やはり自分の思いが反映される余地(エンターテイメントの双方向性)がないと彼らを満足させることができない。

それなら家で大丈夫

次に、「②音楽の変化によるライブの価値の希薄化」を取り上げる。これはいたって簡単で、ライブと家での差が徐々になくなってきているということである。

従来のライブの重要なポイントのひとつとして「音が圧倒的にいい」という項目があったと思う。

「家では到底実現できないようなスペックのオーディオ機材を複数使って、イヤホンでは絶対に味わえなかった低音を楽しむ」

そんなライブの楽しみ方が少なからずあった。しかし、テクノロジーの発展によって、体全体に響くような機材を揃えることはまだできないものの、耳だけなら十二分に満足させられる性能のイヤホンが出てきており、お金をかければ自宅にもミニライブハウスくらいの音を実現できる世界になってきた。正直、多くの人にとっては満足いく環境になってしまった。

そうなってくれば、自ずと「良い音を味わえる期待値」と「わざわざ遠くに足を運ばなければ行けないコスト」で、後者が勝つ確率が高まり、従来の「音が圧倒的にいい」は価値を持たなくなってくる。

また、音楽の変化も「②音楽の変化によるライブの価値の希薄化」も影響を与えている。その変化というのは、電子的な音楽の台頭である。

今までのドラムやギター、生声でやるバンド的な音楽は、CDやインターネット上にある録音された楽曲とライブでのその楽曲は、良くも悪くも違うものになっていた。

しかし、現在新たに台頭している音楽は録音された楽曲とライブでの楽曲の差はほとんどなくすことができると言っても過言ではないだろう。

Perfumeさんもきゃりーぱみゅぱみゅさんも、変化の余地があるとしたら本人が歌っているところ(あとは中田ヤスタカさんの裁量)だけであり、声も瞬間的に加工されて出てくるわけだから、生の声よりももっと振り幅が少なくなる。

そうなると、とうとういつもストリーミングサービスで聞いている音楽とライブで聴くその音楽は一緒になってしまい、音質に強いこだわりがある人以外はライブにわざわざ来る理由を失ってしまう。

テクノロジーの発展(音質)と音楽の変化(振り幅)が、従来的なライブの価値を下げている。

結論:双方向性とライブ感

きゃりーぱみゅぱみゅさんと中田ヤスタカさん(YSTK×KPP)、Perfumeさんのライブにいって学んだことの結論としては、

「これからのライブに大切なのは、双方向性とライブ感」

ということだった。自分の意思で動かせる何かがあるのが当たり前になり、いつでもどこでも最高の音楽やパフォーマンスを聞ける・見れるようになった今だからこそ、ライブにも参加の余地が必要になるし、「ライブだからこそ」というライブ感が必要になる。

そんな気がする。

1997年の日本生まれ。