横軸に細分化される時間

言うまでもないが、スマホの登場は現代を生きるわれわれ人類の時間感覚を大きく変えた。

今まで何もできなかったような細切れの時間がコントロール可能になり、たった5分の待ち時間でもその隙間時間が自分の統治下に入ってきた。言うなれば、人類は細切れを使ってハンバーグを作れるようになったということだ。

この時間感覚の変化は年々勢いを増しており、15分の隙間時間で読書していたものが、5分間で記事を1本読むようになって、1分でLINEをチェックするようになり、最終的には15秒でInstagramやTikitokを見るようになった。

テキストはどんどん圧縮されて端的で濃いものだけが好まれるようになっていき、動画内でも無駄な時間はどんどん削られて時間あたりの情報量が多いものが先行されるようになってきている。議論も長々と過程を話すのではなくて結論を先に求められるようになり、人々はあたかも生き急いでいるかのようなスピード感で日々の情報に触れるのがもう当たり前になっている。

だからと言って、今後もその傾向は加速する一方で、様々なサービスは人のコンマ数秒の隙間時間を争っていくだけになるのかと言われると、個人的にはそれだけの方向性ではない気がしている。ただ単に「時間」というだけの尺度で物事を考えるだけではナンセンスで、もっと二次元的に時間を捉えていく必要があるように感じられる。

横軸に広がっていく時間の細分化

時間というのはいつ何時でも等しく流れているものであるが、同じ時間でもやれることは様々である。歌いながらダンスをすることもできれば、パソコンの前でYoutubeを見ることもできるし、ソファで眠ることができる。

ダンスで言えば、足ではステップを刻み、左手は振りを踊り、みき手でマイクを持ちながら口で歌う。鼻で会場の匂いを楽しみながら、目と耳で視覚的・聴覚的なお客さんの反応を伺うこともできる。

要するに、今までの時間の議論はすべての部位を「身体」と一括りにして時間と言っていたが、これからの議論の中ではどの部位・どの五感を使うかという観点が大事なような気がしている。

時間の感覚は横方向に細分化されていき、時間対効果は密度だけで表されずに、「密度×量」の総和によって表されるようになっていく。言うなれば、余ったすべての肉を細切れにしてハンバーグを作っていたが、部位によって選別し、その大きさによって違う料理に使うようになっていくという感じである。

現に、昨日の僕は夕食を作りながら動画を耳だけで聞いているし、作った夕食を食べながらその続きを目で視聴している。仕事の単純作業しながらYouTubeを耳で聞くのは当たり前で、常にイヤホンをして何かを聞いているような気がしている。

肌感覚であるが、僕に限らず、若者は同時並行的に何かをしていることが昔と比べて多くなったように感じているし、ただ目や耳だけを使って時間を消費するというのは時間を無駄にしているような気になってしまう人も決して少なくないように感じる。

だから、僕の最近の傾向として記事よりも動画の方を好む傾向があり、まだ意識は目と耳だけであるが、「常にどっちも使っていたい」「できるだけ多くの五感で情報を吸収したい」という風に考えるようになってきた。

ただ、まだまだ情報を両方から受け取るのは難しく、耳で何かを聞きながら目で違う情報を捉えるということに慣れきっていないため、情報の吸収率は悪ければ思考も浅い。

しかし、それは訓練によっていくらか吸収率は改善され、従来の「一点集中主義」が絶対的な正解とされる世界から同時並行もまた一定の条件下では有効とされるハイブリッドな世界観が実現される可能性も十分あると思っている。

所要時間より同時並行可能かどうか

実際問題としてこの時間の細分化は、今後も勢力が増してくるメインストリームなのかはわからないが、間違いなく「同時に1つのことしかできないのはナンセンスだよね」と思う世代がやってくると思うし、五感を使って浴びるように情報を受け取るような人たちが現れるような気がしている。

そうなってくると、物事の選択基準も大きく変わり、所要時間の短長よりも、同時並行可能か否かの方が選択基準の中では大きな要因になるということも十分あり得るようになってくると思われる。

時間は縦方向と同時に横方向にも細分化されていき、人間の五感はどんどんと拡張されていく。目の前の1つのことに集中することが最適解という時代が終わり、マルチタスクが当たり前になる時代がもうすぐ来るのかもしれない。

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1997年の日本生まれ。