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寝たきりの母から学ぶこと

目がぼんやりとしか見えない母は声を頼りに反応しています。
眠る時間が増えてきていますが、落ち着いて眠れていると安心します。
おむつ交換やお茶を飲むこと、体の位置を直すこと、顔を暖かいタオルで拭くこと、口腔ケア等の介護をすると必ずありがとうと言ってくれます。声が出ないときはジェスチャーで返してくれます。
ひとつひとつ丁寧にありがとうを返してくる母を愛おしく思います。

今までの人生の中で人に助けて頂いて何回ありがとうと言ったんだろう。
人から頼りにされて何回ありがとうって言ってもらったのだろう。

そんな事をふと思い返していました。

今日は母の人生の記録を母の話を思い出しながら綴っています。


1,経験しながら人となる


母の母親(私の祖母)は母の弟を産んで間もなく亡くなったそうです。
母の父親は男手ひとつで子供達4人を育て上げました。
片親しかいなかった為、兵役を免れたとも聞いています。
(そういう免除があったかは不明です)

母は唯一の女の子だったので小さな時から母親代わりでもあり、家の働き手でもありました。男兄弟や父親に混ざり、田畑の仕事などをしていたそうです。
弟をおんぶして学校に行ったよとも話していました。
勉強が出来る環境ではなかった為、それを悔やんでいましたが
思い出話をする母は嬉しそうでした。

戦前戦後の子供達は、家族と離ればなれになったり、家族を失っています。
私が想像する一般的な家庭環境に育つ子供や
家族団欒できる家庭は少なかったでしょう。

見本となる母親がいなかった母は
自分が母親になったとき、不安とかなかったのでしょうか。
里帰りしても、子育てを教えてくれる母親もいなくて心細かっただろうなと思います。

でも、私達は母親、両親のお陰でたくましく育ちました。

人生は未体験な事ばかりです。
未来を見過ぎて不安に覆われるのではなく、目の前のことを丁寧に行っていくことが大切なんだと思います。


2,日々の出来事をどう捉えるかが大切


私達は人生の質を高めようと自分らしく生きていく為のライフワークを求める傾向にありますが
母の時代は生活のために子供を姑に預けて沢山の仕事を経験してきたそうです。
大変な生活状況でしたが
どんな仕事でも楽しいと言っていました。
そんな母親を私は尊敬します。

思考や言葉は現実になるという法則は今や多くの人が知っていることですが
母は苦しさから脱却するために、自身の精神性を高める努力をして
この言葉に行き着いたのだと思います。


3,身近な人を大切にする


母は身近な人を大切に思える人でした。

叔母の入院先に行ったとき
喋れなくなって、
全身の関節が硬くなり肘や膝が曲がっている姿を見ても(関節の拘縮)
慈しみの心を持って言葉をかけていたのが印象的でした。
まだ学生だった私は、ベットに寝ている姿を見てどんな風に声をかけてあげて良いのか分からず、母の対応は今となっては当たり前に事なのですが
あの優しい表情や優しい声が忘れられません。

そして、相手の言うことをまずは聞き入れること。感謝すること。
これは良く母に注意されました。
母はこうして身近な人を大切にし、ありがとうを言う立場から
ありがとうを言われる人になったんだなと思います。
沢山のありがとうが母を守り、母の世界を広げ
私達の成長をも促してくれたんだなと思います。


4,おわりに


介護を行うことで、こうしてゆっくり考える時間が出来
本当に良い時間を過ごさせていただいています。
寝たきりの母は悲観的なものを想像するかもしれませんが
沢山の気づきを与えてくれているんですよね。
ありがとうございます。




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