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筋肉少女帯 ベストアルバム「一瞬!」 収録曲レビュー

6/14に、筋肉少女帯の記念すべきオールタイムベストアルバム、「一瞬」がリリースされます!!2枚組の全32曲で、ここではすでに公開されている収録曲をレビューしながら、期待に胸を膨らませたいと思います。

さっそくレビューに入りたいと思いますが、ふと、今の若い世代(10代〜30代)で筋肉少女帯のことを知っている人は、どれくらいいるのだろうかと思いました。40代以上でも、名前は知っていても好きで聴いている人はどれくらいいるのだろう…そんな考えが頭をよぎったので、簡単に筋肉少女帯をご紹介します。

筋肉少女帯とは

1988年にメジャーデビューしたロックバンドで、メンバーは次の方々です。

  • 大槻ケンヂさん(ボーカル)

  • 内田雄一郎さん(ベース)

  • 橘高文彦さん(ギター)

  • 本城聡章さん(ギター)

結成当初からメンバーチェンジを経て、現在24期です。

ボーカルの大槻ケンヂさんは、人の内面に迫る江戸川乱歩情緒たっぷりの純文学的な歌詞や、世知辛い世の中をできるだけ気楽に生きられるような”のほほん”とした歌詞を綴っています。両者の世界観のコントラストが、筋肉少女帯の魅力の1つであることは間違いありません。

また、一見「おふざけ」のようにも見える大槻ケンヂさんの歌を、それに見合わない(?)超絶テクニックの演奏でリスナーに届けているところも大きな魅力です。曲のジャンルは、プログレッシブロック、ハードロック、ポップなど、もはやジャンル分けの意味もないくらいに幅広いです。

なぜ今筋肉少女帯なのか

筋肉少女帯を昔から好きな人にとっては、「今」どころじゃねぇよ、デビュー当時からずっと好きだよ、と言われそうですが、あまり知らない人に向けて、筋肉少女帯の魅力をもう少しだけお話しさせてください。それは、先ほど書いた歌詞や音楽的な面もあるのですが、端的に言うと「筋肉少女帯の音楽を聴くと気が楽になる」という点です。

「気が楽になる」とは、「自分が抱えている不安ややるせない気持ちを代弁してくれている」「ダメな部分があってもそれも含めて肯定してくれている」「ゆるくてクスッと笑えるような生き方を示してくれている」といったことをリスナーが感じ、「それでもいいんだ」と思えるようになるということです。

日々、何らかの義務や責務を果たさなければならない私たちの、強張った気持ちを和らげ、肩の力を抜いてくれるような存在です。そう、彼らは癒しの存在(ヒーラー)なのです。

学校や会社に行くのが憂鬱になる日曜の夜や、月曜の朝を迎えてどうにもならないような時は、筋肉少女帯を聴くと「ま、どーにかなるよな」というリラックスした気持ちになることができます。

それっぽいことを書きましたが、とにかく歌詞の世界観が面白いので、ぜひ聴いてみてください。

「一瞬」収録曲レビュー

前置きが長くなりましたが、ここからベストアルバムに収録されている曲の魅力を語っていきたいと思います。6/14リリースなので現時点ではまだ音源はありませんが、ご参考としてSpotifyから同名の曲を引用しておきますので、ぜひ聴いてみてください。

<DISC1>

01.サンフランシスコ (2023ver.)

華やかで印象的なキーボードから始まるこの曲は、筋肉少女帯の代表曲です。
男女の別れを描いていますが、「サーカス」とか「空気女」とか「小人」とか、江戸川乱歩っぽいキーワードが出てきてどうしてもそっちが気になります。
1番好きなところは、「わがサーカス団をぜひごらん下さい ワニ女もお見せしましょう」の部分。ワニ女って何や?上半身がワニで、下半身が人間の女なのか、それとも…気になって仕方ありません。この曲が新録音源になるということで、どんなアレンジが施されるのか楽しみです。

02.釈迦

これも筋肉少女帯の代表曲!と書きかけて、ベストアルバムなんだから当たり前かと思い直しました。とはいえ、その中でも「往年の代表曲」というものはあり、釈迦はまさにそれです。曲を聴いた後に頭に残るのは、「ドロロのノウズイ」というキーワードただ一つ!!その意味は気にしてはいけません。
歌詞に出てくる「古ぼけた娘」もかなり気になります。古ぼけたって…人に対してそんな表現をしているところがググッときます。あと「アンテナ売り」も。何や、アンテナ売りって(笑)。売れるんかなぁ。ただ、「娘」や「アンテナ売り」は初期の曲によく出てくるワードなので、チェックしておきましょう。

03.日本印度化計画

タイトルの強さで完結している往年の名曲。日本を印度化するって…誰が、なぜ!?(笑)歌っている内容は、基本的に「俺にカレーを食わせろ」ってことだけ。「for away tonight feaver    natural high and trip!」のところの歌い方が、イっちゃってる感があって最高です。 

04.踊る赤ちゃん人間

「あぱぱ  あばば  あぱば  踊る赤ちゃん人間」という、もはや「!???」な歌い出しに度肝を抜かれます。「赤ちゃん人間」って何や(笑)。
歌詞を見てみると、「人とうまくコミュニケーションを取れない人間が、いっそのこと赤ちゃんになりすましてやろう」という、同じ悩みを持つ人にとっては「その手があったか!」と思えるような(?)、肩の力が抜けるような内容になっています。

05.香菜、頭をよくしてあげよう

数ある筋肉少女帯の名曲の中でも、ファンの大半が上位に挙げる屈指の曲だと思います。「頭をよくしてあげよう」なんて、失礼だからふつう言わないですよね。それを、何の臆面もなくさらりと言ってのけてるところにシビれ憧れ、なおかつ「一体何があったんだ?」と興味を掻き立てられます。
この歌は、好きになった女性(香菜)のことを想う純愛歌です。自分のことを「バカで犬以下」だと言う彼女に対して、主人公は、彼女が「生きることにおびえることのないよう」不器用ながらも自分ができることを一生懸命考えます。それが「名画座に連れて行き、カルトな映画を見せてあげる」ことと「図書館に連れて行き、泣ける本を選んであげる」ことなんです。ここ、グッときませんか?大袈裟なことじゃなくて、自分ができることをやってあげてる感じがあたたかくて。これが、主人公にとって彼女の「頭をよくする」ってことなんですよね。勉強とかじゃなくて、「生きることにおびえることのないように、映画や本に触れさせること」。深いですよね。そして最後、主人公が彼女との「恋の終わり」を予感しながらもなお、彼女のことを思っているところに、胸が熱くなります。
よく思うのは、「もし香菜という名前の友達がいたら、カラオケでこの歌を歌ってみたい」ということですが、多分相手はあまりいい気持がしないと想うので、実際にやることはないと思います。

06.サボテンとバントライン

一本の映画を見ているような印象を受ける曲です。この世を憎む少年が、目抜通りで爆弾騒ぎを起こします。彼はネコのバントラインが友達で、映画を見ているときだが幸せという孤独な少年です。彼の隠れ家には「緑に輝くサボテン」があり、それを神様だと信じています。その後、街のムービーシアターを標的に第二の犯行を実行しますが…。孤独な少年の切なさと、ちょっとしたおマヌケ感が何ともいえない後味を残す名曲です。

07.小さな恋のメロディ

荘厳なイントロから始まるこの曲は、哲学的であり純文学的です。サビの構成は、「メロディ」という言葉が3繰り返されて、その後にメッセージが添えられる
という形式です。これが何回か続いて、メッセージの全体像が見える仕組みになっています。聞き流していると、何度も繰り返される「メロディ」という言葉だけに注意が向いてしまうのですが、歌詞を読んでみると深い。
この曲では、「小さな恋のメロディ」という映画を見た17歳の少女が、ラストシーンの恋人たちのことを、なぜか「地獄行き」だと言います。背景に色々抱えている少女なのでしょう。そして、恋も人も消えてしまうのが怖いから、私も早く消えたいと言います。少女の話を聴いている主人公は、この世に対する怒りや憎しみを忘れてしまっている男で、彼女に対して、我々が思うほどこの世界は哀しくプログラムされていないことを伝えます。まるでそれは、少女へのメッセージでもありながら、男が自分に言い聞かせているようでもあります。そして最後の一言が、この曲を何よりも純文学的にしている要素だと思います。

08.オカルト

ド直球な名前のタイトル。日本に、こんな名前の曲を作る人が筋肉少女帯以外にいるでしょうか?まぁ、この曲だけでなく、他の曲も、誰もつけるようなことのないタイトルばかりですが…。
この曲では、神様から奇蹟の力を与えられた男が、危機に瀕している世界のためではなく、自分の恋のためにその力を使ってしまい、人類が滅びます。再度、神様が男にチャンスを与えますが、男は懲りずに同じ目的に力を使ってしまい、またもや人類が滅びます。ただのおマヌケソングに聞こえるかもしれませんが、この男にとって救うべき世界こそ、彼が今まさ直面している「恋」だったというところが何とも深い。一人の人間にとっては、「世界」なんていう漠然とした概念より、今目の前にある「恋」の方が大切なのだという真実を描き出した名曲 です。

09.再殺部隊

「再殺」って何ですか(笑)。誰かを1回殺してしまったら、その人をもう1回殺すなんてことはできないわけで。そんな疑問を頭にこの曲を聴いてみると、謎はすぐに解けます。相手が、好きな人にもう一度出会うために生き返った少女たちのゾンビなんですね。そのゾンビを始末するのが再殺部隊。そこに入隊した少年は、恋人を失った深い哀しみから逃れるように任務に就いていたのですが…。
この曲も、深く考えさせられる曲です。

10.サイコキラーズ・ラブ

「サイコキラーの男女がお互いに支え合う」という、他のどのバンドがこんな設定の曲を作るのだろうかという曲ですが、好きなんですよね。お互いにサイコキラーなので、愛や恋といった感情はわからないのですが、寂しいという感情はわかる。それで二人は寄り添いながら、動物や人に手をかけてしまわないように見守り合うという、特殊な関係が築かれます。この曲は、歌詞の世界観も良いのですが、何と言ってもアコースティックギターのメロディが綺麗。哀愁だけでなく、爽やかさも感じられるメロディが絶妙で、クセになります。

11.バトル野郎~100万人の兄貴~

この曲はあまり思い入れがないですね…確か、ストリートファイター2のCMソングだったという話を聞いたことがあります。

12.航海の日

爽やかな印象のインストゥルメンタル曲です。収録アルバムの「サーカス団パノラマ島へ帰る」は、全体的に暗めの曲が多い印象ですが、その中でも希望に満ちた雰囲気があります。

13.ゾンビリバー ~Row your boat

ゾンビで溢れる川をボートで逃げ切る話。副題の「Row your boat」の部分について、昔中学生の頃だったか、英語の授業で「row row row your boat, gently down the stream」という歌を歌った記憶が蘇ります。

14.元祖 高木ブー伝説

恋人との別れに際して何もできな無力な自分を「まるで高木ブーのようだ」と嘆く歌。高木ブーさんに失礼といえば失礼。でも、高木ブーさんご本人は、いいじゃないかと寛大な心で許してくれたそうです。

15.月とテブクロ

この曲はあまり聴いてきませんでしたが、改めて歌詞を読み返してみると、BUMP OF CHICKENの「K」に似ているなぁと思いました。「K」は、自分を可愛がってくれた絵描きが命を落とし、そのことを彼の恋人に伝えに行く黒ネコの物語ですが、「月とテブクロ」は、「僕」を探して旅に出る黒ネコの話です。
冷静に考えてみると、「僕」はなぜ、黒ネコが自分を探しに旅に出ていることを知っているのでしょう?普通、置いてきたネコがどうしているかなんて、知り得るはずがありません。ということは、「僕」はもうこの世に生きてはいなくて、空から黒ネコのことを見ているのかもしれません。

16.ディオネア・フューチャー

この曲は、最初は激しい曲調であるにもかかわらず、サビになると一気に雰囲気が変わり、切ない浮遊感のあるメロディになります。そのメロディがクセになる名曲です。もう少し細かいことを言うと、サビのメロディそのものが良いと言うよりも、サビ前からサビにかけての「ダダダダダダダダ ディオネア・フラワ〜〜」の一連の流れがカッコイイです。

ここまでが、DISC1の収録曲になります。
思い入れのある曲とそうでない曲の熱量が違いすぎてすみません。でも、そういうものですよね。いくら好きなアーティストであっても、無条件に全ての曲が好きというのはあり得ないですし。なのでこんな感じで、引き続きDISC2の収録曲を見ていきましょう!

<DISC2>

01.50を過ぎたらバンドはアイドル

これは新曲なので、「楽しみ!!」としか言いようがありません。タイトルに何とも言えない味がありますね。長年バンドを続けている筋肉少女帯だからこそ、歌える歌だと思います。いや、例え長年バンドを続けていても…他のバンドがこのタイトルの曲を作ることはないか(笑)。

02.高円寺心中(2023ver.)

恋の旅路に疲れ果てて死を選んだ恋人の話が、語りと歌によって織りなされています。短編小説のような物語と、夕暮れ時を思わせる物憂げなメロディが重なって、「あー、やるせねーなー」という言葉が説得力を持って胸に響きます。人の人生を垣間見るような一曲です。

03.混ぜるな危険

「うしおととら」のアニメとタイアップしていた曲です。「会うべきではない奴らは出会うな、会わせるな」と言う歌です。曲の中盤で、「愛別離苦、怨憎会苦などと経文には書いてございます」という語りが始まるのですが、これ、お坊さんが語っているスタンスなんですかね?「78〜9年あたりの手毬歌にでも」というフレーズが出てきますが、何の手毬歌のことを指してるんだろう。
パッと思いつくのは金田一耕助の「悪魔の手毬唄」ですが、映画の公開が1977年だから微妙に違いますし。まぁ、あまり細かいことは考えない方がいいですね。

04.踊るダメ人間

心の奥で「ダメ人間がはびこるこの世を爆発させたい」と思っている男の歌です。しかし、生き残った自分が一番ダメ人間だということに気付き、それならば、「ダメ人間として生きる愚かさ」をあまねく全ての人々に伝えたいという決意をします。その目的を達成するために、ダメ人間の王国をつくる。
…と、ここまではいいんです。リスナーは「そうなんだ〜、ダメ人間の王国をつくるんだね〜」という他人事として聴いていられるのですが、そんな無関心な態度を許さないかのように、最後の言葉が突きつけられます。
「王様は僕だ 家来は君だ」
え!?家来!?主従関係!?というか、「ダメ人間の王国の家来」ということは、自分もダメ人間側ということか。そしてそれを、唐突に宣言されたのか。
「ダメ人間」という言葉には常に、どこか肩身の狭さが付きまとうにもかかわらず、この人は「ダメ人間の王国」をつくり、「自分が王様になる」と声高らかに宣言しているのか。なんだこれは。カリスマか。そんなふうに思えてくる、ライブでも大盛り上がりする名曲です。

05.イワンのばか ’07

「三年殺し」という、ロシアの格闘技の裏技をかけられたイワン。残り短い命だと知って自堕落に生きる中で、貧しい子供を安い値段で引き取り、ツンドラの白夜の森に辿り着いた子供たちにこの世の裏を教えるのだが…。これも物語性の高い曲ですが、おそらくこの曲で言いたいことはただ一つ、「イワンのばか!」。それを言いたいがために、そこに至る世界観が綿密に練り上げられた曲ではないかと思います。

06.機械

「機械」。一般名詞。非常に一般名詞なタイトルです。フランツ・カフカの「城」みたいな感じです。実はこの「機械」は「天使を呼ぶための機械」であり、狂った男が「人の哀しみを消して人を救う」目的で作ったものでした。おそらくその男はもうこの世にいないのですが、たった一人彼のことを信じた女性が、今その機械を空に向ける…。そんな、何とも切ない世界観の曲なのです。
そして、美しくも物悲しい間奏の中で、大槻ケンヂさんが呟きます。
「ニコラ・テスラ(交流送電を発明したセルビア系アメリカ人)、トーマス・アルヴァ(エジソンのこと。ニコラ・テスラとは因縁の関係にある)、フランツ・アントン・メスメル(動物磁気説を提唱したドイツ人医師)、ヴィルヘルム・ライヒ(オーストリア出身の精神分析家)、コナン・ドイル(シャーロック・ホームズで有名なイギリスの作家)」
!!?? 何、この人名列挙!?
実在した人物の名前を列挙して呟くという特異な試みをしているのですが、曲の雰囲気と相まって何ともオカルティックでたまりません。切なく、かっこよく、聴きやすい。「機械」はそんな名曲です。

07.衝撃のアウトサイダー・アート

「堕ちていく恋は アウトサイドの絵画さ」という歌詞が、この曲の全てを表している気がします。

08.ドンマイ酒場

ベストアルバムにこの曲が入っていることが嬉しいです。下町の居酒屋感たっぷりの曲調で、本城さんが店のマスター、他のメンバーがお客さんという設定。
大槻ケンヂさんの歌の中で、「こうしたかったけどできなかった」という客の告白が入ります。それに対して、他のメンバーがドンマイ!ドンマイ!と慰めの言葉を掛け合う。このやりとりが愉快でたまりません。本当に酒場にいるような感覚になります。メンバーからのドンマイ!ドンマイ!を聴いていると、何かに悩んでいたとしても「ま、いっか!」と思えて気が楽になるから不思議です。究極の癒しソングです。何回でも聴いていられます。
オールタイムベストという名を冠したこのアルバムに、主役っぽい「ゾロ目」が入っていないのに、脇役っぽいこの「ドンマイ酒場」が入っていることが面白いです。

09.くるくる少女

この曲はあまり聴いてこなかったので、次に行きます!

10.暴いておやりよドルバッキー

この曲はノリがいいし、歌詞の世界観も面白いんですよね。キレイごとを言うとどこからともなく子ネコのドルバッキーが現れ、キレイごとを見事に暴くというお話。ドルバッキーの断罪シーンも好きなのですが、それ以前の、アワアワしたような感じの大槻ケンヂさんの歌い方が好きです。
この子ネコにはご主人様がいて、ドルバッキーにこの世のキレイごとを暴かせています。自分で言うのではなく、子ネコの自分に言わせている。ドルバッキーはそんなご主人様のことを情けなく思い、やるせない気持ちになっています。
サビのところで「真実子ネコだドルバッキー」「断罪動物ドルバッキー」「嘘つきゃばれるぜドルバッキー」というふうにドルバッキーの性質を説明し、その後「かましておやりよドルバッキー」「あんたも罪だねドルバッキー」でドルバッキーに声をかけます。そこからの「みんなでケイレンドルバッキー」。「みんなでケイレン」ってどういう状態!?(笑)。でもこの言葉、好きなんですよね。

11.マタンゴ

筋肉少女帯、名曲中の名曲です!!厳かなピアノのイントロが終わり、ピアノもギターもドラムもビートが激しくなったところで、「呪いの館には行っちゃいけねえ!!」という謎の忠告を受けます(笑)。呪いの館なんて言われなくても行かないのになぁ〜なんて思っていると、「それでも行くと言うならば」「俺を振り切り行くならば」と、なぜか「めっちゃ行きたい人」にされている(笑)。
続けざまに「タマミ」という謎の人物名の連呼!もうハチャメチャで最高。
そしてここからがこの曲の真骨頂。「語り」パートに入ります。
「マタンゴというキノコは人に寄生いたします」という、やけに丁寧な語り口調で話が始まり、「あまねく全ての人がお庭にキノコを植えたら」という謎のシチュエーションが提示されます。普段あまり使わない「あまねく」という言葉を、どやっ!と言わんばかりに「あまねくっ!」と声高に言っているのも面白い。かと思いきや「お庭」という可愛い言葉を用いているのが絶妙に不気味。
そして、全ての人が庭にキノコを植えたら、「キノコ人間になってしまった君の家のタマミちゃんが目立たなくなるからいいねぇ」と言い出します。ここで、あの名前を連呼されていた「タマミ」という人物が、「君の家のタマミちゃん」…つまりこちらの身内だということが突如として判明します。タマミちゃんがこちらの娘だというのなら、話は変わってきます。無視できません。
キノコ人間になってしまった娘を持つこちらに対して、「目立たなくなるからいいねぇ」「パーティーにも連れて行けるからいいねぇ」などと慰めておきながら、続けざまに「いくら頭が良くたって かわいくたって キーーーノコ人間じゃあねぇ〜〜!!」と最大級のイヤミをブチかましてきます。多分これがこの曲で一番言いたいこと。頭が良い人、可愛い人へのねたみ・そねみ。
いろいろ書きましたが、この曲の「語り」パートにおける大槻ケンヂさんのねちっこい喋り方が最高にツボにハマります

12.カーネーション・リインカネーション

「カーネーション・リインカーネーション」をひたすら連呼している曲、という印象があります。あらためて歌詞を見てみると、「猫をカン袋につめ込む」とか「猫とシュークリームを詰め替える」とか、「特撮」の「ケテルビー」に通じるキーワードが出ていることに気づきました。それにしても「カン袋」って何だ?っと思って調べてみたら、「紙袋」が訛って「カン袋」になったそうですね。そしてこの言葉は、「山寺の和尚さん」という童謡に出てくるようで、この曲もそこからインスパイアされているのかもしれません。

13.Guru 最終形

ショートムービーの1シーンのような、何とも言えない切なさを感じる曲です。主人公が、植物園で血みどろになった「君」を見て「綺麗だ」と呟いたり、「君」が着ているミルクドレスには血の赤が冴えると思ったり、薔薇園に着いたらココアを入れてあげようなどと言ったり…もはや彼は、目の前の「君」ではなく幻想の「君」を見ている。その危うげな感じが印象的です。

14.エニグマ

約5分半に及ぶ組曲。既存の型にはまらない、筋肉少女帯の曲の中でも珍しい構成です。曲調の変化と呪文のような歌詞が面白い。どうやら、大槻ケンヂさんがとりあえず言いたかった言葉が詰め込まれているようです。緩急のしっかりした曲なので、飽きることなく何回でも聴けて楽しめる1曲です。
組曲という観点では、「特撮」の「歌劇「空飛ぶゾルバ」より「夢」」が思い浮かびました。が、そちらは組曲というよりも大ミュージカルですね。

15.週替わりの奇跡の神話

こちらも「うしおととら」のアニメとタイアップしていた曲です。この曲もあまり聴いてこなかったので、次に行きます!

16.楽しいことしかない

ラストを飾るのは、筋肉少女帯近年屈指の名曲「楽しいことしかない」です。
素晴らしいタイトルですよね。楽しいことしかないって、なんて希望に満ち溢れた言葉なんでしょう。曲調は全体を通して爽やかなんですが、イントロのアコースティックギターに続くのは、エレキギターの泣きのメロディ。あと、「た〜の〜しい〜 こーとーしか〜〜〜ない〜〜」の部分も割と哀愁メロディ。そんな、爽やかさの中にも哀愁が混じった、大人な雰囲気の曲です。
歌詞で好きなのは「車出すよ どこか旅でも行こうぜ」と「仲間集め メシでも食いに行こうぜ」の部分。気の置けない友達からの誘いって感じで、何だか心がホッとするような言葉ですよね。そんな友達からの誘いだからこそ、「行こう行こう!」って気持ちになります。言葉選びのセンスが素晴らしい。
この曲はPVもありますが、イラスト調のムービーで、爽やかな見晴らしの良さを感じる一方で、グロテスクなモチーフも同居する見応えのある内容になっています。ぜひそちらもチェックしてみてください。

おわりに

筋肉少女帯結成35周年記念ベストアルバム「一瞬!」の収録曲に全32曲を見てきましたが、そうそうたるラインナップですね。新旧をカバーした筋肉少女帯のフルコースをいただく感じがします。メンバーが選曲・監修しているところも嬉しいですね。一方で、全てのアルバムを網羅しているというわけではないようです。例えば「THE SHOWS MUST GO ON」からは一曲も入っていません。「再結成10周年パーフェクトベスト+2」に入っているからかもしれませんね。

今回が35周年記念だとすると、5年後には40周記念ベストアルバムが出されたりするのかな?もしそれが出るとしたら、収録されていると嬉しい曲を(個人的に大好きな曲を)書き記して、終わりにしたいと思います。
・ペテン師、新月の夜に死す!
・いくじなし
・夜歩くプラネタリウム人間
・蜘蛛の糸
・星座の名前は言えるかい
・ゾロ目
・霊媒少女キャリー
…こういうのを書き始めるとキリがないですね。筋肉少女帯は魅力的な曲が多すぎるので、40周年は4枚組くらいで出していただけると最高に嬉しいです!


最後まで読んでいただいて、ありがとうございます!