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2017年配信Netflixオンリー映画ベスト10

自分の中でエンタメ革命が起きました。以前からヘビーユーザーではあったと思いますが、今年は本腰入れてNetflixのみで観られる映画を掘ったらまあ出るわ出るわ面白いものが。劇場かソフトでの鑑賞かの選択肢しかなかったところに、第三の選択肢としてNetflixの存在感が急激に大きくなった一年でした。

Netflixオリジナル扱いのコンテンツは平均点高いのは知ってたけど、今年は去年より配信数が増加し追いかけるだけでも結構大変。来年はさらに増やすというから嬉しい悲鳴。同時に日本では上映もソフト化もないNetflixでしか観られない作品もどんどん配信されてるわけです。そんな作品の中でも2017年に配信されたものに限って100本以上観たのですが、如何せん本家が「これNetflixでしか観られないよ!」ってプッシュしてくれないので、配信開始が2017年の作品のみをベスト10形式で勝手に紹介しようと思い立ちました。

家にはいるけど劇場には行けないしソフト借りるのも面倒だし。という年末年始インドアな映画好きの皆さんが印象に残る作品と出会う一助になれば幸いです。なお各順位で紹介した作品と何か共鳴するところのある作品も一本併記しましたので、参考にしてもらえれば嬉しいです。
では10位から。長いですがお付き合いください。一本でも観たい作品が見つかったり、Netflixに加入してみようかと思えますように。


10.ネイキッド

結婚式当日の朝、目が覚めると全裸でエレベーターの中に。全く身に覚えがないのだけど、花婿が式場にいないのは絶対にマズい。でも全裸で式場までどうやって……。あ、お巡りさんが……。そしてまたエレベーターの中で目を覚ます。という誓いのキスまで繰り返される1時間のループを描くコメディ。
結婚なんてもういいやとヤケクソになってもエレベーターの中だし、頭を使っても結局失敗してエレベーターの中。ループを重ねることで「大人になること」を自然と考え始める展開の妙と、失敗したループが全部伏線となってゴールに向かうピタゴラスイッチ的構成はお見事。『デンジャラス・バディ』観た人なら誰でも覚えてるイケメンFBI捜査官の彼が主役なので、心当たりの方は是非。

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一発屋をテーマにしたミュージカルの上演前後を描いたコメディ。仕事や夢について考えさせながら、「大人になることって大変だよね。でも、そろそろね」を笑いと耳に覚えのある曲と共に描く。インシンクのJCが本人役で出てるのも見どころ。


9.アンダーカバーじーさん

ずっと好きだった高校の同級生のあの子とデートだ!と喜んでいたけど、一向に彼女が現れない。老人ホームから訪れていたボケたじいちゃんがそれを知ると「トラブルに巻き込まれた」と推理しだす。じいちゃんはボケてて昔特殊作戦に従事したと言い張るから信じられないのだが、次第にその推理が現実味を帯びてきて……。
仲間集め大好きクラスタ集まれ!なじいちゃんが昔の仲間を尋ねる展開は熱いし爺さん好きも観て欲しい。男の子が頑張る話としても熱いのもよい。そして、「アンダーカバー」の本当の意味が明らかになり、孫と祖父の交流も描かれるラストにはホロリ。小粒な作品だけど、劇場公開やソフトスルーされてたらもう少し評判になったのではないかな。じいちゃん役のジェームズ・カーンは年老いて尚格好良く、そして切れ味のある表情を見せているのも嬉しい。

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行く先々で問題を起こしている主人公が、ついにここが最後だと押し込められたのはくだらない校則でガチガチの学校。そこで「相棒」と共にイタズラをしてひとつひとつ校則を破っていく。空想がちな主人公がなぜイタズラを続けるのか、家族の物語として明かされる真相とラストシーンは眩しい。


8.オタク・レボリューション

スクールカーストの上位のやつらはなんであんなに我が物顔で校内を闊歩してるの?でも、イケてない扱いの子の方が多いんだから、みんなで力を合わせればこの序列ひっくり返せるんじゃない?という、ギークとナードふたりの親友女子が仲間を集めて仕掛ける学園下克上。だけど、ひっくり返した後に見えてきた景色は本当に見たかったもの?という女子の友情物語。
オタクが天下を取ってルールやコードを書き換えた後の学園生活は面白いのだけど、同時にそれだけギークやナードがいるというのも今のアメリカの高校なのかなとか。レズビアンだと告白した不思議女子に、フェミニストでSF好きの黒人女子が「あんたの彼女を見つけてあげるよ」とサラリと言うなど現代性と多様性が織り込まれてるのも「今」の学園物だった。上の画像の女子5人の構図に惹かれた方は是非。

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イケてないナードだった私が一念発起。オシャレに決めたら学園一イケてるグループの仲間入り。当然それでめでたしにはならず……。調子に乗るのも自分を取り戻すのもまずSNSというのが今の高校生だし、「巷」が全世界に拡張された怖さ。イケてるグループにファッショニスタのゲイがいるのも現代性かな。


7.リクシャー

平凡な三輪タクシー運転手の男の日常を追いかけるドキュメンタリーを撮影していると、彼はマチズモとミソジニーを抱え込んだ不安定さを次第に見せはじめる。カメラを回し続けることでひとりの怪物が生まれる瞬間とその後も映しとってしまったという、ランタイム90分強のインド産モキュメンタリータッチのサスペンス。
「なんで金がない」「なんで女にモテない」という同じ男なら分からないでもない鬱屈だけど。それが解消されないフラストレーションを身近なカメラがずっと撮影し続けることで、客観的に「こいつはダメだ」が分かると同時に満たされないという不全感の辛さも浮かび上がる。トラヴィスにはなれない男の半径10メートルの怒りを描いている、世紀を超えてインドから届いた『タクシードライバー』へのアンサー。

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実在の連続殺人犯をリスペクトするヤバい奴が、ヤクもやって殺しもやる汚職警官を地獄のストーキングinムンバイ。両者の「彼岸に立つ者」ぶりをふたつの視点でじっくりと描くことでラストシーンの異常性が際立つ。殺人衝動を抱える男がホームレスであることで街のどこにでもいる怖さが滲むし、警官の自己保身から生じたノワール的泥沼も上手い。


まだまだ他にも(次点枠)

おとなの事情、こどもの事情:NYから郊外に引っ越した父は作家で黒人、母は大学講師で白人、とそのひとり息子。文化的な零落や人種差別といった想定しやすい問題は描かれず、違う場所に来たことの戸惑いは大人も子供も一緒だよ優しく描く。
天下無敵のジェシカ・ジェームズ:私は美人だし努力してるし才能もある。それは分かってる。でもさ、上手くいかないんだよね恋も夢も。という一歩間違えると鼻持ちならない話を、主人公が不器用でも真摯であることと主演のルック一発で見事に成り立たせてた。
羊飼いと屠殺者:アパルトヘイト下の南アフリカで白人の青年看守が全く無関係の複数の黒人7人を射殺した事件を描く。死刑囚の面倒を見る看守の仕事と、その彼らを自らの手で絞首刑に処することに人間は耐えられるのか。重い重い鑑賞後の空気。
美しい湖の底:ある強盗計画の真相を一日ずつ遡ることで明らかにする変則構成。最初は散漫に感じたあれこれが次第に意味を持って結びつくのだけど、興味が持続できるように情報の出し方のタイミングを考え抜いた脚本。やや後出しなとこはあるけど。
ワン・ナイト:離婚寸前の夫婦と最悪のプロムナイトを過ごした高校生のふたりがホテルで出会う。大人は子供から純粋にお互いを愛する気持ちがあったことを教えられ、子供は大人に素直に愛を伝えることの大事さを教えられる。そんな温かい一晩の物語。
境界線:「世界にあなたと私だけでいい?じゃあ本当にふたりにしてやろう」という意地悪な設定の物語。旅行先でふたりだけになった閉塞感に加え、決定的な何かがなくとも違和感を積み重ねることで恋愛感情は壊れる怖さにゾッとした。
ワン・オブ・アス:NYの超閉鎖的なユダヤ人コミュニティを描いたドキュメンタリー。女性蔑視や自由のなさが「伝統」という理屈で維持できる時代ではないこと、だけどそのコミュニティで生きることを大事にする人々もいること。その難しさ。


6.ヒットマンズ・ボディガード

ボディガードのライアン・レイノルズが、殺し屋のサミュエル・L・ジャクソンの護衛をするぞ!ドンパチもあるぞ!友情もあるぞ!楽しいぞ!さあ、ビール片手に週末の夜に観よう!なお話。
え?今までに比べて紹介が雑?でも、他に語ることがないのだから。楽しく明るくふざけて殺してあー楽しかったな丁度いい規模のちょっと懐かしい感じのアクション映画って、結構みんな好きでしょ。気楽に観てね。

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人間とエルフやオークが共存するLAが舞台の警官バディムービー。グラフィティを次々見せることだけで、このファンタジー世界の各種族の対立や差別構造を伝えきるオープニングが素晴らしい。バディになるまでの定番に種族の問題を絡めつつ、景気よくふざけて人が死んでく。悪役のノオミ・ラパスの存在感は圧巻。


5.ハノーバー高校落書き事件簿

休日に集まった教師達の車にペニスの落書きが。その事件の犯人と決めつけられたのは厄介者の生徒。だが、彼の犯行とは思えないある男子生徒が事件の真相を追いかけながら、一部始終をドキュメンタリーとして残そうとする。という過程をさらに映したモキュメンタリー(ああややこしい)。
実際に観た人はこれドラマでは?映画だろ?と思うかもしれないけど、これは30分×8のドラマではなく4時間の一本の作品として一気に観て欲しいので強引にねじ込み。日常の謎系ミステリーとしての面白さと共に生徒にも教師にもある負の感情を炙り出すのが面白い。ドキュメンタリーはどれだけ人の人生を踏みにじる権利があるのか、人間が撮影する以上客観に徹することはできないのではないか、人間はどれだけ被写体になることに耐えられるのか。そんな答えのない問いかけを高校生の青春と共に描き出していた傑作。

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高級ワインオークション界に颯爽と現れシーンの落札水準を高騰させた謎のアジア人の正体をめぐるドキュメンタリー。事実を積み上げ過去と照らし合わせることが真相に繋がる丁寧な調査の過程と同時に、話がどんどん大きくなっていってこんなとこに着地するの?という展開もスリリング。


4.ザ・ベビーシッター

オタクでバカにされてる僕だけど、両親がいないときに来てくれるベビーシッターのビーは超絶美人な上にオタクトークも完璧。朝まで彼女が家にいることになったある日、妄想を膨らませてると階下から人の声が。覗いてみるとビーが悪魔崇拝者の仲間と共にヤバい儀式を始めてた……。僕、殺される!!!!という楽しい楽しいホラーコメディ。
人間の命が軽いというか如何に面白く殺すかという底抜けにバカなとこもあれば、ちょっぴりほろ苦い初恋も。丁寧な伏線回収も忘れないし最初から最後まできっちり楽しませてくれる。そして「We Are The Champion」流れるとこには爆笑。という最高のパーティームービー。監督がマックGのホラーという、楽しくならないわけがないという期待に120%応えてくれてる一作。男版チャーリーズ・エンジェル、待ってるよマックG。

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素敵な美人と結婚したのはいいのだけど、その連れ子が懐いてくれないどころかダミアン的な子だったというホラーコメディ。基本ラインはふざけてるのだけど「親と子」の真っ当な関係性を描き出すという現代性を保持してるところは今のコメディだなと思う。


まだまだ他にも(去年配信の超オススメ)

ザ・ワン・アイ・ラブ:離婚寸前の夫婦がカウンセラーに薦められた別荘。そこは、夫/妻がひとりで中に居ると、外にいるはずの妻/夫が別の人物として屋内に現れる不思議な場所だった。そして、もうひとりの配偶者の方が本来の配偶者より魅力的で……。という世界の謎の解明と夫婦の愛情の在り処を巡る物語が、ふたりしかいないミニマムな場所で同じ強度で語られる。カップルで観ると鑑賞後に居心地が悪い気分になるけど、でも話さずにはいられない。そんな作品。
ブルージェイ:母の死をきっかけに地元に戻ってきた男。彼は高校時代の交際相手と偶然再会する。そこで始まるのは「付き合っていたときに楽しかったこと」の再現。やっても辛いに決まってる。でも大人になった今には無邪気に恋をしていた気持ちを思い出すことは楽しい。という「辛い甘い辛い甘いでも……辛い……」な時間を過ごす中で明らかになる破局の理由。たった一晩の物語に凝縮された人生の苦味をご賞味あれ。
ちなみに両作に出演するマーク・デュプラスの遠慮してるんだか図々しいんだか分からない存在感は、Netflixで観られる『クリープ』『クリープ2』でも堪能できるので、上記2作が楽しかった方は是非。


3.10年越しの約束

ロマンス第一のマイルズとセックス第一のブロディ、親友のふたりは10年後も独身だったら結婚すると約束して残り1ヶ月。マイルズはなんとかいい人に巡り会いたいとネットで出会いを探すが上手くいかないし、ブロディは楽しいはずのセックスが楽しめない。そんな定番をゲイにした多幸感溢れるロマコメ。
ゲイであることで生じる差別を描くことを一切排しているし、主人公ふたりそれぞれの同僚がゲイであることを当然のこととして「お前らくっつけよ」をけしかける。もちろん現実には未だに差別やそれに起因する哀しい事件はあるのだけど、男女でやきもきする様だけを見せるロマコメがあるのなら、当然ゲイ同士だってそれがあってもいいはず。現実の問題を掬い上げる作品も大事だけど、普通のロマコメでゲイを描くことが当たり前になることもまた差別を無効化する一助になるのでは。そんな射程の遠いことも考えたり。

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マチズモ寄宿学校でド文化系の僕とルームメイトになったスター選手。違うカーストのふたりを繋いだ音楽の力。ゲイであることをカムアウトできるかどうかというセクシャリティの問題を、若者だけではなく大人の悩みでもあるとした視座の確かさが光る。


2.イカロス

アマチュアの自転車選手である監督が、ドーピングの蔓延するロードレースの世界で「いかにして薬物検査をすり抜けるか」を身をもって証明しようとする。そこで知り合ったロシアドーピング界の大物との交流から、テーマは国家ぐるみのドーピングを行うロシアの闇を映し取っていく方向へシフトすることになる傑作ドキュメンタリー。
ドキュメンタリーを観る際に「よう撮れたなこれ」って瞬間が映し出されているのに遭遇するとなんとも言えない興奮があるのだけど、この作品の後半はほぼそれだけで構成されてると言っても過言ではない。ロシア政府≒プーチンの本当にヤバい暗部を突きつけられたときの、ドーピング界の大物の動揺を目の前で捉えているのには唸る。同時に最初は気軽な気持ちで撮り始めた監督が、ドーピングを告発することが天命であることを決意した瞬間さえも残されている。そして、ふたりの間に結ばれる友誼はロシアの闇とのコントラストで余計に光って見える。時期的なことも含め、来年のアカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門でノミネートするのではないかと思うくらい必見。

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殺人事件の容疑者として逮捕された青年の容疑が晴れるまでの過程を追ったドキュメンタリー。法廷ミステリーのいいシーンのだけを観てるような40分全編クライマックス感。創作なら「そんな都合のいい展開は却下」と言われるような冤罪の証明のきっかけとなる証拠が、余りにも出来過ぎていて思わず笑うしかなかった。


1.ギャンブラー

定職には就かず稼いだ金は賭けで失うけど「まあそれが俺の人生さ」と嘯く男が、ある日いい女と出会ってしまう。このままでは彼女に相応しい男にはなれないと一念発起して真っ当に働こうとするが、家にはヤバい奴から預かった大金が。ギャンブル依存といい彼氏になりたい決意の狭間で揺れる男のダメ人生、果たしてどうなる。
大金の行方というある種の定形に進みそうな話だけど、そこにはいかずにあくまで「どう大人になるのか」という善い生き方を巡る話になっていたのがとてもよかった。素敵な女性と出会って恋してセックスしてという段階の描かれ方に地に足の着いた現実感があるからこそ、余計に普通の幸せほど一度手が届きかけると手放したくない切実さに説得力があった。
精神的生活的にネオテニー化してるアラサーやアラフォーがどう「大人」になるかという物語(ソフトだけでなくNetflixでも配信されてる『恋するふたりの文学講座』はオススメ)は増えていると思うし、この作品の落とし所の「人生ってこんなものかもね」という後味はとても印象的。同じくNetflixで配信だけどこちらはドラマの『easy』も本作の監督のジョー・スワンバーグが製作で、「人生って決定的には変わらず続いてくよねえ」を描いてるので是非。

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気の弱いアラサー女性が隣人のナードな男と一緒に自分の家に空き巣に入った犯人を追いかける話。だけど、そこには娯楽性もスリルも余りなく色々な場面で「映画のヒロインのように上手くいかない」というままならぬ現実がスルリと入りこんできて、最後になんとも言えない後味が残る。


おわりに

こんな長い記事を最後まで読んでくださった奇特な方、本当にありがとうございます。ちょっと気になる一本、見つかりましたか?
そして、他にもこんな作品だって良かったよ!という方もいると思います。そんな時、twitterなどで布教しましょう。その一声がもしかしたら加入者をひとり生むかもしれないのですから。
東京から鹿児島に引っ越して、今までよりも劇場で映画を観られなくなった友達がいます。その友達と「Netflixがあればまだまだ知らない映画に出会える」と話をしたことがありました。
劇場で観たい映画は沢山あるけど、色々な事情で頻繁に通えなくなることは誰にでも起きると思います。そんな時にNetflixがあれば「劇場でかかってない作品でもこれだけ面白いものがあるんだ」と思えるかもしれないし、映画好きにとって精神的なセーフティネットになるかもしれない。そんな気持ちも含めてこの記事を書きました。

とにかく、このサービスがずっと続くようにみんなネトフリに加入してくれよな!!!

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