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田舎の少年はいかにして沼にハマったか(まとめたマガジン)

【前回までのあらすじ】
港湾のアルバイトに戻るべく様々な計画を立てる貴志少年。老後の2000万円のために御徒町から徒歩でインドに向かうが上野アメ横の雑踏を見ているうちに「このあらすじ、必要あるか…？」という根源的な疑問にぶち当たってしまう。次回からのあらすじがどうなるか全く不透明のまま貴志少年は徒歩を諦めて電車に乗り込む。乗車前に戦ったモグラ星人との熾烈な闘いの疲れからウトウトとまどろんでしまった。束の間の休息のつもりが気がつくと6時間も経過していた。窓の外を見るとすっかり暗くなっている。再び遠のく意識の中でかすかに車内アナウンスが聞こえる。
「つぎは〜うえの〜うえの〜」

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不登校児童Nくんの家で見つけて「貸して！」と騒いだもの。
それは雑誌「明星」の付録「ヤンソン」だった。
ご存知ないヤングの皆様に説明すると「当時の流行歌の歌詞にコードがふられたものが掲載されている歌本(ヤングソングス)」だ。
久保田利伸さんや工藤静香さんの中に混ざってあったのだ。

THE BLUE HEARTS「リンダリンダ」。

オレはNくんとの話もそこそこに家に帰り、早速ヤンソンを開く。
そしてギターを取り出し、コード表とにらめっこ。

最初のコードはDか。
一弦の2フレット、二弦の3フレット。三弦の2フレットか。
よし。

じゃーん(ピチッ)

わー！リンダリンダの最初のギターのやつだ！
本物じゃん！(本物じゃないけど)

大いに感動し、それからその後のギターコードを追いかけ続ける。
バレーコードで音が出なくてもなんのその。
指先が痛くなったら絆創膏を貼って。
そこから少しの間は学校から帰ってくるとリンダリンダを弾くだけのマシーンと化した。
今思えばあの頃どれぐらい「リンダ」という言葉を発したのだろう。

リンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダリンダ…

さても世の中はバンドブーム。
深夜は「イカすバンド天国」、日曜の昼間は「HITS」、歌番組にもちょっとそこまでと毛色が違うバンドが台頭し始めた。
書店に行けば音楽雑誌があり、そこから様々な情報を得る。
次に興味を持ったのは、ドライブする8ビートに少年の葛藤を詰めこんだサウンドのJUN SKY WALKER(S)。
THE BLUE HEARTSやJ(S)Wの記事を見つけては読み漁る日々。
そうすると、ある共通のキーワードが浮かび上がってきた。

…SEX PISTOLS？
…RAMONES？
…THE CRASH？
…PUNK ROCK？

オレはすぐに沼津駅北口のレンタルCD屋「タイムストーン」に走った。
そしてそれらのCDを借りた。聴いた。しびれた。
中でも最初にガツーン！と来たのはSEX PISTOLSだ。
扇動的なボーカル、歪んだギター、ポップな楽曲。
オレの心は完全にPUNK ROCKの虜になった。

さても日本のバンドをあれこれチェックしていく中で出会ったのが大槻ケンヂさんだ。
こちらは雑誌の記事が先で「なんかおどろおどろしいけど面白い人がふざけてるぞ」と思い興味を持っていたが偶然行ったCD屋で発見してアルバムを買う。

童貞を拗らせ狂っている中2にはあまりにも刺激が多いジャケットだが、勇気を持ってレジへ行く。
沼津駅南口徒歩五分の所にあったCDショップ「カネサシ」のレジのきれいなお姉さんは優しく対応してくれた。
このお姉さんはその後仲良くなってとても良くしてくれて、このアルバムの店頭ポスターをくれた。
もちろん喜び勇んで部屋に貼ったが、オレの名誉のために書いておくとこれを本来の用途以外には使った事はない。本来の用途は販促だけど。

ドキドキしながらCDプレイヤーで再生を始めると、PUNKとまた違ったサウンドに驚いた。
耽美的なピアノあり、とことん疾走するギターソロあり、変拍子あり、大曲ありのここまで触れたことのないパラレルワールド。
そして異世界を彷徨うような猟奇的な歌詞。
インストと江戸川乱歩好きな少年の金玉を鷲掴みにするには十分過ぎるバンドだった。

こうして徐々に追って行くバンドが増えていく中で、とある大槻さんのインタビューが目に止まった。

…あぶらだこ？

続く

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