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超慎重派の僕がスタートアップ起業に挑戦するまで | マイホムCEO 金箱遼

株式会社マイホムの代表取締役CEOを務めている金箱 遼(かねばこ・りょう)と申します。

この記事では、マイホムにご関心を持っていただいた多くの方に僕自身のことも知っていただけるよう、生い立ちから起業までの経緯をまとめています。


基本情報

名前
マイホム代表取締役CEO 金箱 遼 Ryo Kanebako

生年月日
1985年6月11日

プロフィール
1985年神奈川県横浜市生まれ。2009年に中央大学商学部を卒業後、TKCにSEとして新卒入社。2011年にアライドアーキテクツ、2015年にマネーフォワードへ移り、それぞれで東証マザーズ市場上場を経験。2021年2月にマイホムを設立し、代表取締役CEOに就任。

自己紹介

幼少期

生まれは横浜ですが、小学校に上がるタイミングで両親が一戸建てを購入し、以降は大学卒業まで厚木で過ごしました。

パソコンいじりが好きな小学生で、4年生の頃には自作のチャットサービスを提供していました。毎晩常連が集まる規模になり、そこで結婚に至ったカップルもいたほどです。

ただ、物事を進めるのに人より遠回りすることも多く、学校の先生など大人から見て扱いにくい子どもだったと思います。
幼少期から、世の中の仕組みや社会で起きたことの背景など疑問に思ったことは自分で調べてしっかり腹落ちするまで納得できないタイプだったので、図書館から借りてきた本を机に積んで、学校の授業そっちのけで読んでいるような子どもでした。

そして早くから「自分でお金を稼ぎたい」「いつか社長になりたい」という漠然とした夢があり、ビジネスや経済、起業には高い関心を持っていました。

株取引に費やした学生時代

高校一年生のときに株取引を始め、学生時代は株取引のアルゴリズム研究に熱中。
大学一年時には、カブロボ・プログラミング・コンテスト(早稲田大学の研究プロジェクトとして2004年にスタート。株の売買を自動運用するロボットを開発し、1ヶ月間の運用成績でその性能を競うコンテスト)の第1回大会に個人で応募し、参加した2405チームの中から5位入賞を果たして東証アローズで表彰していただきました。
(参考:優勝者は年利332%――カブロボ・コンテストが残したもの - ITmedia エンタープライズ

日経平均はもちろん、海外の長期金利など、ヒストリカルデータをたくさん集めてきました。時にはウェブスクレイピングという手法を用いてウェブページを解析するなどもして、地道に大量のデータを集めて分析していく作業が楽しく、得意でした。

ですが、こうした専門的な経済分析の話し相手が身近におらず、必然的に一人でPCに向かう時間が増えて、大学生活はほとんど自宅に引きこもっていました。サークルにもゼミにも参加せず、キャンパスライフとは縁遠い5年間でした。

できるだけ出席不要でテストやレポート中心の授業を選択して単位を取得していたのですが、2006年1月のライブドアショックが原因で一年留年しています。不動産流動化が華やかな頃、信用取引で大きなポジションを持っていたところ、株価が大幅に下がったことで追証がかかったのです。それがちょうど大学のテスト期間中だったため、ポジション整理に追われて後期のテストを丸々受けられませんでした。

二度の上場

このように、僕はもともと内向的で、常にリスク回避を重視して生きる安全志向のISTJタイプの性格です。

この性格を自覚しているので、20歳のときに、自分の人生において「最低ラインを確保することでリスク許容度を広げる」という、ファイナンシャルプランナーが行うような本格的なライフプランを設定しました。
その上で、まずは専門職であるエンジニアとしてキャリアをスタートさせること、そして自分の会社を興して上場企業にする前に、まずはスタートアップで上場を体験することを目標としました。

やや大きな話になりますが、人類史の最初は広大な土地に小さな人口の狩猟民族から始まり、農耕の開始に伴い、狭い面積でより多くの人口が抱えられるようになりました。こうした「生産性」が今日までずっと上がり続けているから、人類はより豊かになって地球の人口も増え続けています。

なので、世の中全体の生産性に貢献することができるかどうか、それが僕の働くことの意義であり成果だと考えています。

これを叶えやすいのが、数百から数千、数万単位の企業に使っていただけるSaaS(当時はASP)であると考え、1社目のTKCを選びました。TKCは当時も今もかなり優良な隠れたSaaS企業で、海外のビジネススクールのケースとして取り上げられているような企業です。
TKCの社是の「自利利他」の考えは、今も自分の中心的な考えです。

TKCを経てアライドアーキテクツへ転職し、2013年に無事1回目の上場を経験させていただくことができました。

前述の通りリスクを避けたい性格なので、アライドの経験に再現性があるかどうか確かめるべく、今度は、当時まだ30人規模のマネーフォワードへ転職しました。
2017年にマネーフォワードの上場が成功した際、組織拡大するとき突き当たる課題やその打開策など、一度目のアライドと多くの共通項があることが分かりました。
そのときようやく、自分も起業に挑戦できそうだという自信が持てました。

また、アライド、マネフォを経て、スタートアップのように基本的に世の中をより良い方へと変えていこうとする集団は、多くの尊敬すべき方々に支えていただける機会があることに気づきました。
その経験が「世の中をより良くするチャレンジをすれば必ず応援してもらえる」という確信に繋がり、創業というチャレンジのきっかけになりました。

実際、当社も起業前から前澤さん(元ZOZOで当社株主)をはじめ、たくさんの方に支えていただきました。
本気で挑戦し続けることでリスクは軽減できるというのは大きな発見でした。

共同経営を行うことになる乃村さんとの出会い

マイホムは、代表取締役 乃村 一政と共同経営体制で運営しています。ここでは普段通り、乃村さんと呼びますが、出会いは前職時代です。

乃村さんが東京出張に来るたび、月1くらいのペースで情報交換を重ねて、マイホム設立の一年ほど前から、前身となるサービス作りに参加していたのです。

プレゼンテーションの上手さや、人として信用できるという点で、乃村さんには当初から好印象を抱いていました。
ですがそれ以上に、乃村さんの、本気で住宅業界とお客様の家づくり体験を良くしたい強い気持ちと、住宅業界は市場規模が莫大に大きくITやUXで生産性に貢献できる余地が十分あると感じたことが、一緒にチャレンジを決意した背景にあります。

住宅業界は、不動産仲介やリフォームなど派生して関連する業界まで含めると、約30兆円の巨大マーケットになります。そしてこのマーケットに対して、乃村さんの描くビジネスには、1兆円やそれ以上の付加価値を提供できるポテンシャルがあると感じました。

2度の上場を経験し、僕自身のタイミングとしてもいけると判断できたので、2021年3月、マイホム設立に至りました。

住宅業界の課題

僕は長年エンジニアであると同時にプロジェクトマネージャーのキャリアを築いてきました。
また、前述の通りデータ分析とリスク回避を重視する性格で、自分の人生設計は元より、マネーフォワード時代にもライフプランシミレーションプログラムの開発に携わってきました。「プロジェクトマネジメント」と「ライフプランシミレーション」、この2つは自信を持っている領域です。

家づくりは、自分と家族の今後の暮らしを見据えた上で、信頼できる業者を見つけてチームを組み、予算管理をしながら各所とのコミュニケーションを重ねて最高の形を目指す作業です。新築やリノベーションに関わらず、住宅を作るという作業は「プロジェクトマネジメント」そのものと言えます。
そして、家は定期的に修繕や交換が必要になります。これも子どもの成長に伴うライフイベント等と同じと捉えると「ライフプランシミュレーション」によって管理可能です。

つまり、2つとも僕の得意分野です。

住宅業界の問題は、この複雑で高額なプロジェクトを、プロジェクトマネジメントの経験がない一般の方が、いきなり全て背負わなければいけないということです。その上、プロでも不可欠な専用のツールというものがそもそも存在しない。これでは施主側に苦労や後悔が起きて当然だと思います。

また、住宅を一軒作るには、大工、左官、鳶、外装工、建具工......等々、全体で30種類以上の専門職人が必要でありながら、共通の専用コミュニケーションツールが存在せず、すべてのやり取りを1on1の口頭で行っているので、職人さん同士の日程調整や作業の順番、資材の変更等において「言った・言わない」ミスが頻発してしまうのです。

例えば、よくあるのが「タイルの貼り方が希望と違う」というトラブル。当然付け直しになるわけですが、こうした1つの施行ミスで約10〜30万円の損害が生じます。
住宅の契約は、作業と合計金額をあらかじめ確定させた上で行う「請負契約」であるため、ミスや原価高騰を理由に施工主へ追加請求がしにくくなっています。ミスによる損害はそのまま業者が被らなくてはいけなくなる。
この点を鑑みても、施工主と業者の綿密なコミュニケーションが非常に重要なのです。

マイホムアプリは、プロジェクトマネージャーの視点が入ったコミュニケーションツールになっているので、こうした全体的な問題をクリアにしつつ、未経験の方にも使いやすい仕様になっていると思います。

マイホムで目指している未来

マイホムは今、世の中に新しいカテゴリーを生み出すフェーズにいると思っています。
「家をつくるアプリ=マイホームアプリ」という概念を浸透させ、「家を持つならマイホムアプリ」という感覚を当たり前にしたい。

そして、住宅業界という大きな慣性力が働くフィールドにいるからこそ「自分たちも畏れず変化していくことが業界への提供価値につながる」という意識を全員が共有できている会社でありたいと思っています。弊社のメンバーには、誰一人、単純作業者になってほしくない。

またまた生産性の話になりますが、基本的に、社会の生産性が上がるとともに、そこで暮らす人々の生活水準も上がります。例えば、昔は殿様しか食べられなかった尾頭付きの鯛も、現代ではちょっと奮発すればスーパーで一般消費者も買うことができる。

こうした衣・食が大きく変化してきたのに対して、住宅は、生活水準を計る上でかなり大きい部分を占めているのに、あまり大きな進化をしてこなかったように感じるんです。特に「性能」の部分では、耐震性や設計構造の部分で「より良いもの」を広めようと思ってるプレーヤーが少ないように思います。

家づくりの作業の煩雑さとミスが許されない環境から、長年、提供者の視点が優先されてきてしまい、「これからの住まいはこうあるべき」という真顔の議論がしづらくなってしまっていますが、ここを変えていくのが僕たちマイホムの役目だと考えています。

2023年12月現在のマイホムは、従業員数約30名、平均年齢は34歳前後の小さな会社です。
ここにいる全員が高い目線を持ち、議論しながら成長していけるチームでいられるように心がけていきたいです。
(実際、新たにリリースするPlusMeの柱である「天井高2.9m」のアイディアも、度重なるディスカッションからチームで探り当てたものです。)
この点だけは一人でシミレーションできるものではないので、コツコツと地道に努力していく所存です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
これからどうぞよろしくお願いいたします。


マイホムコーポレートサイト/アプリサイト



編集:眞板響子
撮影:曽川拓哉


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