World Fragment's Vol.2

 2081年、マキシマの手によって起こされたドォルズの叛逆以降、その圧倒的な力の前にただ人類は逃げ惑うことしかできなかった。

 ―自律装甲機兵ドォルズ。新しい次世代の人型兵器としてとある研究機関から提示された彼らは、第三次世界大戦中の強国がひしめく紛争地の真っただ中に投入され、たった10機、わずか2時間足らずで各国の最新鋭の兵器を跳ね除け、制圧して見せたのである。

 そんな光景を目の当たりにした各国のお偉方は、我先にと国家予算なみの大金をつぎ込み、彼らを1機でも多く手中に収めようとしたことは言うまでもない。1機でも大国の軍隊に匹敵する働きをするドォルズ、彼らは今後の戦争の在り方を大きく変えてしまった。しかしながら、今となっては、これもマキシマが計画した人類への叛逆の水面下での準備、資金集めのためのPRに過ぎなかったのである。

 叛逆の幕上げとともにドォルズの1機、No.10 スピカがGPS、全地球測位システムをクラッキングし、システムを再構築した衛星コンステレーション“cradle”は全72基の衛星からなる。従来の全地球測位システムでは、高度約20,000kmの準同期軌道上、昇交点経度60度毎の6種類の軌道面にそれぞれ4基ずつ衛星が配置されていたが、cradleではそれらの衛星すべてに対し、多数の観測装置が搭載された地球観測衛星2基がそれぞれ2分の時間差をもって同軌道上を追従する。得られた高精度3次元観測データは直ちに解析され、リアルタイムで全地球上の地表や大気中の三次元マップを生成、瞬時に戦術データリンクによりドォルズ各機へ共有される。

 彼らは主要都市をはじめとした数多くの人間が、技術が、知見が存在する地域を優先的に襲撃、蹂躙した。その力を前に、国が、世界が、その機能を失うまでに多くの時間はかからなかった。

始まりの日から5年。ドォルズの手から生き延びた人類は、ある者たちは高層ビル群の跡地に身を潜め、ある者たちは地下へと潜った。空から世界を見下ろす72の機械の目。陽の当たるところに人間の居場所は無くなっていた。

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